和ペリティーヴォな赤色,中国
中国の雨。悪くない。どこか水墨画をイメージさせるようなモノクロの美しさを感じる。かと思えば、雨を吸収する苔が美しい緑へと変身していく。緑という色は心安らぐ色である。しかし、僕にとって絵画や映画などを思い出させる色としては今一つ弱い色となる。

ふと村上春樹氏の「ノルウェイの森」の下巻の表紙の緑が上巻の表紙の赤と共に頭に浮かんだ。僕にとっては赤の方が、いろいろ浮かびそうである。

(写真上)スモッグの影響か、少し霞んだ夕焼けは街を優しい赤で包んでくれます。

和ペリティーヴォな赤色,中国赤が鮮やかで、料理の名前の由来にもなったイタリアの画家ヴィットーレ・カルパッチョの絵画、ところどころのシーンに登場する赤が印象的なサスペンススリラー映画「赤い影」、フランスの作家スタンダールの「赤と黒」…いろいろ出てきそうである。とはいえ、ぱっと頭に浮かぶのはヨーロッパばかりである。
これが国のイメージの色で考えると、ロシアや中国の方が赤のイメージが強い。ロシアはソ連時代の真っ赤な国旗から今の白と青と赤の三本線の国旗になってから赤というイメージが少々、薄れた気はする。となると消去法で中国が残る。結局のところ共産主義思想のイメージカラーである赤が強烈に頭に残っているだけなのだ。そこまで考えているとちょうど雨が上がった。街を歩き始めた僕は自然に街の赤に目がいくようになった。

(写真左)杏飴の艶やかな赤もいいものです。


中国の赤は「見て見て!赤だぜ!」というイタリアの赤というよりは、「赤も入っているんですが…」という奥ゆかしさのある赤を感じることが多い。「赤富士」のような朱色に近い赤がDNAに刻まれている日本人の僕には中国の赤色は、どこか落ち着かせてくれる。もちろん国旗やスローガンの文字のようにドキッとさせられる赤もあるのだけれど。 今、この原稿を書きながら、赤色をイメージさせるバンドの曲をと思いながら安易にレッド・ホット・チリペッパーズを流していた。さて、次はクラシックを流そうと思う。赤色のイメージがする作曲家で、僕はベートーヴェンを選んだ。これは人によって違いそうである。あなたなら誰を選ぶだろうか。

イシコ

イシコ

1968年生まれ。ホワイトマン代表
大学卒業後、女性ファッション誌編集長、Webマガジン編集長を経て、期間限定のホワイトマンプロジェクトでは白塗りで様々なコンテンツを生み出す。現在は「セカイサンポ」と称し、文字通り世界を散歩中。散歩の達人の連載コラムなどコラムニストやブロガーとしても活躍している。

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