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古代ローマ帝国の代表的な衣服のひとつで、“聖なる衣”という意味も持つトーガ。現代の服の原型となっているとも言われる、この白いドレープの衣に由来した名前を持つのが、日本を代表するブランド、TOGA(トーガ)だ。デザイナーは古田泰子。 幼い頃から新聞紙を使ってワンピースを作り、小学校1年生ですでにデザイナーになる決意を固めていたという彼女が、エスモードパリ、CMの衣装制作などを経て、1997年に26歳の若さで立ち上げた。

TOGA, トーガ1999年の春夏より、展示会形式でコレクションを発表。長年温めてきた服作りへの想いが溢れたアイテムが、感度の高い服飾関係者の目に留まり評判となる。2001-2002の秋冬からは東京コレクションに参加。2006年春夏からは、パリコレクションへの参加も果たした。独特のパターン、オリジナルで作り続ける生地、異素材の組み合わせ、意外なコーディネートなどが国内外で高い評価を獲得。ファッション関係者、アーティストにも信望者が多い。他にはない独創的な作風も魅力だが、華やかなドレスからアンダーウエア、ひいてはショップのある都市ならではの“ご当地マッチ”までという幅広い商品ラインナップもユニークだ。 「TOGAを形成する軸はコレクションラインだけではない。だから、パリコレクションだけでなく、TOGAを構成する世界をできるだけ具体的に様々な方法で見せていきたいんです」と古田さんは話す。こういった考えのもと、スタート時から、多くのラインに分けてアイテム作りを発想。メインのコレクションラインとなる「TOGA」、より多くの人に提案しサイズも色も豊富に揃っている「TOGA PULLA」、定番アンダーウエアを中心に限定やコラボレーションアイテムが多くラインナップされた「TOGA ELASTIC」、重厚感・高級感のあるアクセサリーライン「TOGA ORNAMENT」、一点ものが見つかる「TOGA PICTA」と、多角的に独特の世界観が楽しめる。

(左写真)デザイナーの古田泰子さん

「毎シーズン、コレクションを発表していますが、それだけじゃなく、イメージを覆すことがしたいんです。ドレスアップもしたいし、ドレスダウンもしたい。ファッションって感情的なものだと思うんです。Tシャツから、ハイエンドなファッションまで、女性のワードローブを形成するものを提案していきたい。当然、ショップでの品揃えもそうでありたい。ショップに足を運んでもらうからには、楽しんでいただける環境づくりがしたいです」 最近は、原宿店地下に多目的スペース「THE GALAXY-銀河系」も登場。2007年には、古田さん本人も大好きでアイディアソースとしても重要な位置を占めているという古着の専門店である「TOGA XTC」を同店の駐車スペースにオープンさせた。 「古着は、もともと大好きで国内・海外でも必ず見に行きます。私自身、古着をTOGAの服とミックスして着てきたので、店舗展開は自然発生的なものでした」

TOGA, トーガ国際的に活躍するアーティスト、五木田智央氏やソニックユースなど、さまざまなアーティストとのコラボレーションにも積極的だ。TOGAの世界は、枝葉が広がっていくように伸び伸びと展開しているが、決して自己満足で終わりたくないと古田さんは話す。いつも持ち続けているのは、“分かりやすさ”への想いだ。 「オープンに、分かりやすく人に伝えること大切さを常に心にとめています。袖を通してもらわなければ意味がない。そのためにも、興味を持ってもらい、きっかけを持ってもらうことを常に考えています」 そのために彼女が大切にしているのが、パタンナーを始めとするスタッフ。古田さんの頭の中にあることを形にしてくれる心強いチームメイトがいてこそ、TOGAは現実のものとなる。 「服作りで心しているのは、決めた通りに行かないようにすること。最終的なイメージは持っていても、あまりにそれにこだわりすぎると、途中で起きる偶然の美しさを見逃してしまう。ピン1本を外したときにできる美しいドレープも見逃さないこと。テーマに沿っていれば、方法は何でもいいと思うんです。人間は記憶を持っていて、すでに見たもの=記憶を積み上げている。知らないうちに、記憶に依存しているんです。でも、そうすると新しい提案ができない。だから、“どこかで見たような”という安心感を壊す。物を作る途中で起きる想定外のことを楽しむ余裕、偶然の産物を自分のものにできる余裕を大切にしています」 そうすることで、失敗すら無駄にならず、TOGAの血や骨、肉となっていく。こうして自分なりの経験を積み上げられてきたからこそ、TOGA独自の世界観は、どんなにテーマの違うコレクションでも崩れることがない。シグネチャー、ブランドのロゴといった具体的なモチーフに頼らずとも、TOGAらしさが表現できるのだ。さらに、一貫してブレないもうひとつの理由は目指す女性像。 「好きな女性のひとつとして映画監督のデヴィッド・リンチの描く女性もあげられます。色っぽいけれど、ちょっと神経質でエキセントリック、そしてミステリアス。頭の中に広がるイメージを旅して服作りをしています」

(右写真)2009年の春夏コレクション“SPACE O'TEDDY。かっちりとしたメンズライクなマニッシュさと、オーガンジー、ヌードカラーなどに代表されるフェミニンなセクシーさが融合

TOGA, トーガ最新の2009-2010秋冬コレクションは“METAL MACHINE DRESS”。 「いろいろなメタル、硬質なものを表現しています。ただ制作では硬い芯などを省き、パターンのみで立体的なシルエットを構築。触ってみると硬くないという意外性も表現しました。ギャップはミステリアス。だから、素材、パターン、生地、ボリューム×スリムの意外なコーディネートといった、真逆なものの組み合わせが好きなんです。2004-2005秋冬で“METAL CORE FANTASY”を発表しましたが、もうちょっと進化させたいモチーフだと、それを何年か後に取り出して、発展させるというのも好きですね」 すでに作ったものもオリジナルのデザインベースとして、自分の引き出しにしまっておき、再び取り出してさらに発展させていく。これが、ブランドの成長、独自の連続性となり、TOGAらしさをさらに色濃いものにしていくのだろう。

365日、デザインのことをどこかで気にしていると語る彼女は、好きなものはもちろん、嫌いなものすら自分を新しい場所へ誘う糧として取り込みながら、日々、イマジネーションとクリエイティビティ、そしてTOGAの世界を膨らませ続けている。

(左写真)古着店「TOGA XTC」と多目的スペース「THE GALAXY-銀河系」を併設する原宿店

text / june makiguchi

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