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「ピーター・パン」の産みの親、ジェームズ・バリは、 9 歳のとき兄を亡くした。お気に入りの兄が死んで大ショックの母親を慰めるためにいちいちアニキの真似をして、兄の死んだ 13 歳で成長すらやめてしまった……と、『ネバーランド』のプレスシート(マスコミ向けのパンフ)には書いてある。

んなバカなって気もするが、実際に華奢で蚊の鳴くような小さな声でしゃべる人だったらしい。

新作映画『ネバーランド』は、バリが「ピーター・パン」を産むきっかけとなったブラウン家の 4 兄弟(特に三男のピーター)との交流を描いているが、時代といいシチュエーションといい、リデル家の 4 姉妹(特に次女のアリス)との交流で「不思議の国のアリス」を生んだルイス・キャロルの話とそっくりだ。

お気に入りの子供相手に聞かせた物語を、その名を冠する童話にしたキャロルの話を、もちろんバリは知っていただろう。

映画『ネバーランド』自体は、主演のジョニー・デップもカッコイイし子役も泣かせるし、そりゃ素晴しい。 だが実際のバリはこんな“素朴ないい人”じゃなく、キャロルのアイディアをパクって一発当てた“スレた天才”だったんじゃないだろうか。

ネバーランド幼い少女が大好きで、様々な扮装(例えば乞食とか…)させて写真に撮りまくっていたキャロルは筋金入りの変人ロリコンだが、そういう話が聞こえてこないのもなんか計算臭い。ただ、ここまで超特大ホームランになるとは思ってもみなかっただろうけど。
とはいえヘンなヤツであることは確かだ。冒頭のエピソードも字面なら「悲しいお話」っぽいが、もしもビジュアルが残っていたら、かなりキてる気がする。
だって現代に生きる“唯一のネバーランドの住人”を想像すればわかる。誰って、蚊の鳴くような声で話す M ・ J のことだよ。天才って不気味だ。

text / Shiho Atsumi

information


ネバーランド『ネバーランド』
(J.M Barrie’s Neverland)

2004年 イギリス・アメリカ 100分
監督:マーク・フォースター
出演:ジョニー・デップ、ケイト・ウィンスレットほか
劇場情報:2005年1月15日より日比谷映画ほか全国東宝洋画系にて公開