CULTURE_cinema20041124
ライターの多くは特別な人間じゃなく、凡人だ。例えば私の場合、別に才能とか主張があるわけでもなく、どっちかというと毎朝同じ時間に会社に行く才能がなくてライターになってしまった。だが実はこの職業に絶対必要な、別のスゴい(スゴいか?)特殊能力があるのもまた事実だ。

たとえば原稿がぜんぜん書けず、あー、ど〜すんだ、締め切りは今日なのに今日はもう 45分で明日になっちゃうじゃ〜ん……っていう瞬間に、その才能がむくむくっと来る。

私が書けないのは、もしかしてこのパソコンのせい?キーボードのタッチが重いから?もしや割れちゃった爪のせい?それは乾燥しすぎてる空気のせい?低気圧のせい?地球のせい?頭が回らないのは、すべての血液が胃にいっちゃったせい?晩ゴハンで食べたホイコーローが旨すぎたせい?てことはあの中華屋の、料理の上手い出っ歯オヤジのせい?

……その能力とは「ザ・責任転嫁力」。これに関してはもー自信マンマンである。

映画『舞台よりすてきな生活』には“書けない劇作家”が登場する。この人ももちろん特殊能力者。原稿が進まないのを隣人が飼ってるうるさい犬のせいにしちゃったりして、かなりのバカタレ……っつーか、私とソックリ。友人知人の「オトナゲない」という言葉にプリプリ怒ってきた私だが、客観的に見ると確かに。

舞台よりすてきな生活だが「へー、劇作家って大変だね〜」と即座に“他人事回路”に入っちゃうあたり、私もかなりの天才である。こんな私になったのはこの仕事のせいだ。「いつもどおり笑えるヤツを」と促す編集者のせいかもしれない。「面白かった」「この間のコラム、笑った」とおだてるメールを送ってくる読者様のせい…?

とかなんとか言いながら、ライターの誰もが締切日という難局を乗り切っているのである。

text / Shiho Atsumi

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舞台よりすてきな生活『舞台よりすてきな生活』
(How to Kill Your Neighbor's Dog)

2000年 アメリカ 98分
監督・脚本:マイケル・カレスニコ 出演:ケネス・ブラナー、ロビン・ライト・ペンほか
劇場情報:12月11日より銀座テアトルシネマほか全国にて順次公開
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