

(右写真)デザイナーのアン(右)とフィリップ(左)
そんな二人が、大躍進するきっかけとなったのは、NYでオペラ『Alice in Bed』の衣装を手掛け、US VOGUEの編集長アナ・ウィンターからも絶賛されたため。その後もオペラの衣装デザインだけでなく、メトロポリタン美術館で作品展を行ったり、NYのFITでプレゼンテーションを行ったり、美術館のキュレーターを務めたりと、ジャンルやフィールド、形式にとらわれない活躍を見せている。

(右写真)プレコレクションライン「Blackboard」2010SSより
大成功を収めたこのコレクション以外にも、AFには注目すべき点があまりに多い。二人が持つ冒険心と、溢れんばかりのクリエイティビティが、様々な形で実っているのだ。2003年にはシューズコレクション「Fetish(フェティッシュ)」を、2006年にはランジェリーコレクション「Nightfall(ナイトフォール)」、「Fetish」のメンズラインを立ち上げるなど、その活動はとどまるところを知らない。

また、メインのコレクションと平行して、プレコレクションライン「Blackboard(ブラックボード)」と、よりリアルでより購入しやすいディフュージョンライン「A.FRIEND(エー・フレンド)」も2010年SSからスタート。「Blackboard」は、AFの世界観をさらに広げるために展開したもの。ブランドのミューズであるアーティストのボイスが、自身の作品に黒板と白いチョークを多用していたところから生まれた。2010-11AWでは、実際にテーマを“黒板”とし、黒板から連想される学校→実験のイメージを最大限に反映。実際に、チョークを入れるくぼみがいくつもついたジャケットやシャツを作ったり、黒板の色を思わせるダークカラーをグラデーションで表現したりと、実験的な側面を持たせた。
一方、「A.FRIEND」は、友人たちからインスパイアされた、友人たちに似合うコレクション。以前から友人が欲しがっていたもの、これからワードローブに加えたいものなど、友人関係の中で生まれたものでよりリアル。価格もより気軽なものとなっている。いずれも、ジャージー素材やニットウエアで構成されたコレクション。メインラインと変わらないエネルギーとクリエイティビティが注ぎこまれているので、AF初心者はぜひこちらを手にとってみて。
(左写真)ディフュージョンライン「A.FRIEND」2010SSより
また、新ラインとともに、やりたいことを自由に行うというブランド精神を象徴するプロジェクトとして登場したのが、2009年12月にアントワープでオープンした「GUERILLA STORE AKITON 1」。AFの世界観、ファッションはもちろん、ファッション以外のプロジェクトも体感できる空間作りを目指したもの。
「この限定期間ギャラリーショップはいろいろな街に移転していきます」とフィリップ。アントワープでは、2010年3月31日まで。
創作のスケールが、年々拡がっているAF。それでもベルギー・アントワープを拠点としてこだわり続ける理由とは?
「アントワープは私達のプライベートライフから社会的ライフまである街です。この街にはたくさんの友達がいるので幸せです。その幸せがクリエーションに繋がっているんです」
最後に、フィリップに最も心がけていることを聞くと。
「二人の関係を大事にすること。二人が良い関係を築き、思いが強くなるほどに、それが一つのクリエーション、モノづくりに繋がりますから」
text / june makiguchi, photo / top visual : Ann Vallé, portrait : Ronald Stoops, 2010SS runway : Etienne Tordoir