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アンリ・カルティエ・ブレッソン(HCB)財団は、毎年、一名の写真家の功績を称えてHCB賞を授与する。2010年の受賞者は、南アフリカ出身の ダヴィッド・ゴールドブラット(1930年生まれ)。パリのFondation Henri Cartier-Bresson(HCB写真美術館)では2011年4月17日まで、展示会「TJ 1948-2010」が開催されている。

TJは、Transvaal Johannesburgの略で、コンピュータで統一される以前の車のプレートの称号であり、ヨハネスブルグ中心と近郊の意味を示す。地元に密着した課題を撮影するゴールドブラッドにとっては、さらに深い意味を持つ。
1948年にはじまったアパルトヘイト政策の法制化と推進が1994年に撤廃するまでの歴史を歩んできたヨハネスブルグには、現在でも傷跡が残る。

ゴールドブラットは、アフリカーナーと黒人の生活する双方のエリアを記録した。凡そ60枚の作品は、隔離された人種の生活模様を語る。
さらに、アパルトヘイト撤廃後、犯罪者を犯罪現場でインタビューしてポートレートにおさめた“ex-offenders”は、最新作品だ。20名の男女が、モノクロ写真を媒体に、犯罪動機と社会復帰をした証言を語るコメントも追記されている。犯罪動機は、日常生活をしのぐための窃盗や万引き、薬物売買や敵討のための殺人など、複雑な社会の側面をさらけだす。「彼らたちが根本的に悪人であるとは思えない。なぜなら、犯罪の裏には理由があるからだ」とゴールドブラットはコメントする。犯罪者を英雄扱いするつもりもない。

アパルトヘイトが撤廃した昨今でありながら、自由が平等とはいえない。人々の隔たりを横断できる日は、果たしてあるのだろうか。考えさせられる。

写真:Khaululwa Pali, Kayelitsha,Cape Town, 2010
“ex-offenders”シリーズより
(c)David Goldblatt Courtesy Marian Goodman Gallery, Paris


Fondation Henri Cartier-Bresson(HCB写真美術館)

(取材・文 Kaoru URATA from Paris)