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2011年2月はじめ、BLESSから新たな知らせが届いた。「BLESS SHOP イン・ベルリン 予約制 木曜午後4時~8時オープン コンタクト先:シリル・デュバル (ドイツの電話番号とメールアドレス)」。小さなフォントで<うれしい、例外の時間帯もあるかも。そしていつかは、ベッド&ブレックファーストになるかもしれません>との但し書きがあった。

BLESSから、相変わらずの唐突さで届いたこの知らせに、これは取材してみたいと思って、連絡を取った。メールで質問を送ると「これは特別なプロジェクトだから、質問はシリル・デュバルに転送して彼から答えてもらうことにするから」と即座に返事がきた。一体、どういうことなんだろう? 私はふと、気がついた。「BLESS SHOP」はそもそも、BLESSのアートプロジェクトのひとつだった。各地の画廊やギャラリーで頻繁に扱われるようになったBLESSが2000年ごろから始めたプロジェクトで、ギャラリーをゲリラ的に期間中だけショップとしてBLESSの限定プロダクツをディスプレイする、というアイデアのもとに始まったものだ。しかし、そのうちBLESSがパリやベルリンに直営ブティックを構えるようになったので、今回のニュースは「アートプロジェクトではなくて、ふつうに店ができたということのお知らせかな。それにしても、何かちょっと変だな?」と思った次第である。

BLESSから指名をうけたシリルは、今回のスペースの管理人のような役目を担っているらしい。彼とのQ&Aを経て「なるほどこれは、新たなアートプロジェクトなんだ」と今、私は納得している。彼との会話を辿りながら、この新規なプロジェクトをひもといていこう。

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 まず、デザイナーから届いた資料に「BLESS SHOP BERLINはBLESSコレクターの家です」と説明されています。ということは、ここにあるものはあなたのプライベートコレクションということ? 来た人はそこにあるものを買えるのですか?

シリル これは実は「BLESS HOME」というプロジェクトなんです。僕はまず、彼女たちの14年間の作品群から服もプロダクトも、好きなものを選ぶことができました。具体的にはおもに服の最新コレクションと、インテリアやプロダクツ、過去のレアなアーカイヴ・ピースを、僕の趣味でミックスしたのです。僕は、ここに2カ月間住みます。この場所はBLESSのスピリットを見せ、このレーベルが何を体現しているかのショーケースになるんです。僕自身も、BLESS環境のなかで呼吸しながら、日常のあらゆる瞬間にBLESSを感じることになります。つねに誰かが住むことになるので、その時々の住人のパーソナルコレクション(服や所有物など)も、自然と混在することになります。来た人は、すごくレアで在庫のない商品と、住人のプライベートコレクション以外のBLESSプロダクツはすべて、購入することができます。

 ここを訪れたい人は、または一度訪れたら、どのようにふるまえばいいのでしょうか。

シリル 今は、アパート全体を公開することにしているから、木曜の夕方に公開時間を限定しています。でも、僕と時間調整ができれば、それ以外の時間でも可能です。訪れたら自由に過ごしてください。家に人が来て、すぐ帰っちゃうことってあまりないでしょう。僕が滞在する2カ月が過ぎたら、きっと誰か他の、BLESSの哲学をよく理解しているアーティストが来て、その人が住むことになると思う。その人のやり方によっては、B&Bにもなり得るはず。それって、素晴らしいプロジェクトだと思いますよ。僕はたまたま、以前インタビューを通してBLESSと知り合って、そのあと展覧会の企画を一緒にやったんですが、今はオペラのアートディレクターをやっていて、その制作で2カ月ベルリンにいることになったんです。そうしたらちょうど、BLESSが「BLESS HOME」アイデアを温めていたところだったというわけ。だから、最初の住人になれてすごくラッキーなんです! とてもエキサイティングな体験で、全然ホームシックになりませんよ。
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BLESS HOMEが可能になったのは、彼女たちの活動も14年目になって、家一軒を構成するくらいバリエーション豊かなアイテムがそろってきたことが大きい。最初から「リラックスした生活環境をつくりたい」と言い、「そのなかの一要素として服がある」というスタンスを貫いていたBLESS。幸運にもベルリンへ行く機会がある人は、是非「BLESS的な家環境兼ショップ」をじっくり体験してみてはいかがだろうか。

文/林 央子
写真/Ludger Paffrath

BLESS SHOP HOME BERLIN
Contact → Cyril Duval shop@blessberlin.com

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