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写真上:着物の裏地を剥いで作った藍染めの浴衣と絞りの帯。

FASHION-modeにて不定期連載中の「journal by林央子」。以前掲載の『水戸芸術館「拡張するファッション」展で行われたパスカル・ガテンのワークショップ報告』に引き続き、林央子の著作『拡張するファション』(スペースシャワーネットワーク)を元に企画された「拡張するファッション」展が巡回中 (会期:6月14日~9月23日)の四国・香川県 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)で、展示や作家との交流から林央子が捉えた“新たな視点”を数回にわたって紹介していく。

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お盆の前日の8月12日、Cosmic Wonderからメールが届いた。現在は新たな活動の為に休館しているCenter for COSMIC WONDERが8月24日に開館するという。「ひかりのあわ」と題された告知メールには「COSMIC WONDERの新たな概念による製品の発表が始まります。手つむぎ手織りの自然布をはじめ、オーガニックコットン、オーガニックリネン、オーガニックウール、色彩豊かな天然草木染め。 伝統的な素材をはじめ、天然の桑の葉だけで育てられた蚕の貴重な日本の絹など。今をつむぐさまざまな光をここに。」というメッセージが添えられていた。

その前日に、彼らの新作コレクションの印刷物が届いていた。吸い込まれるように美しい湖面のような水色のワンピースは、古い着物を剥いでパッチワークされたもの。麻に似た軽やかな雰囲気だが、また別の植物の繊維からとられた、ふんわりとかるく羽織れるベストは、それとなく伝統的な衣服(民族は特定できないが)を連想させるシェイプをしていたが、同時に東京の都市にいてそれを羽織ってみても違和感のない、高いデザイン性を保ってもいた。
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左:苧麻の手縫いベスト。イラクサ科の植物苧麻から手作業により繊維をとりだし手紡ぎした糸を手織りした自然布で作られている。右:アバカの手縫いベスト。バショウ科のアバカの葉から手作業により繊維をとりだし手紡ぎした糸を手織りした自然布で作られている。

これらの服は、彼らのいわゆる「秋冬シーズンの新作」である。しかし、「拡張するファッション」展のため、この約一年間度々連絡をとりあい、彼らの強い変化への希求と、それが現実とどう折り合いをつけていくかの過程を見守ってきた私には、改めて大きな意味をもつ新たな第一歩である、と捉えている。今ここにある彼らの活動は、現在のファッションシステムと並行して歩きながらも、自分たちなりの服づくりを継続していくため、新たなる変革を展開しようとする確固たる意思のもと、組織の編成や働き方の刷新をも含む、ラディカルな活動の一端であることを知っているのだ。

水戸芸術館、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館の2館における「拡張するファッション」展の発表も、その彼らの変革のプロセスを反映させていた。その経緯を振り返りながら、彼らの「これからにむかういま」を眺めていくことは、彼らの思考の跡を知る上でも興味深い。今ここにある展示の経緯と、彼らの思想の流れを辿ってみたい。

re145現在、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)で開催中の「拡張するファッション」展。さまざまなインスタレーションのなかでも異彩を放っているのは、古い農機具や食器、焼き物や石、鏡などとともに、何枚もの円形の布が空間に配置されているCOSMIC WONDERの空間だ。草木染めによる独特の柔らかな色彩、ベージュからピンクやグレーまでの布がつなげられ、刺し子が施された丸い布。それはスタッフの一人がすむ宮崎で、伝統的な工芸をたしなむ女性たちのサークルの手で縫われたものだと設営の時に聞いた。「おばちゃんたちに私が服作りを教えたりして、その代わりに縫ってもらったりして作ったものなんです」。

右:古代レムリア時代の記憶が蓄積されていると伝えられるレムリア水晶。束ねた大麻を紐にした水晶の首飾り。

今からちょうど一年前の夏、前田征紀からこの展覧会へのアイデアが提示されたとき、それは「COSMIC WONDER RESTAURANTという新しい概念の、一日かぎりのパフォーマンス(であり、ファッションショーでもある)とそのための空間」という斬新なものであった。その基盤にあるのは「贈与経済」という概念によるものだったが、いつも通りそれ以上の詳しい説明はなく、ニューヨークで一度彼らが実施したパフォーマンスの映像や写真が提示された。美しく、自然で、新しい感覚の風が流れていた。完成形が見えないまま、私たち、水戸芸術館ならびに猪熊弦一郎現代美術館の学芸員と私は、それを「実現させましょう」という方向で動き出していた。

mitogei2014年2 月下旬に始まった水戸芸術館での展示は、ニューヨークで行われたパフォーマンスのように、円形の布を空間に敷くことが出発点であったが、展示する部屋に合わせて再度敷物が作られた。また日本での発表を意識して、古い農耕具が添えられていた。展覧会の最終日には、待望のパフォーマンス「COSMIC WONDER RESTAURANT」が行われた。それはマジカルな一日だった。晴れた日、青々とした5月の芝生の上で、来館者たちが持ち寄った「贈り物」とひきかえに「ランチ」が渡された。その美しく美味な料理は吟味された材料と京都の職人によるものだった。笙や弦楽器、肉声によるチャンス・オペレーションの音楽と、パフォーマンスと食事。そして、布や円形の鏡などの彫刻。音楽やダンスの演奏者も、そして前田征紀らのスタッフが身につけていたのも、ここで始めて着用された「秋冬」の新作であった。つまりこれは、美術館の展示最終日に館内の庭で大々的に開催された、新作発表の場(いわゆる、ファッションショーということもできる)でもあったのだ。

写真左:撮影:ホンマタカシ
水戸芸術館の展示風景(部分)


(text / nakako hayashi


Cosmic Wonderのあたらしいかたち②」へ続く。



拡張するファッション
期間:2014年6月14日(土)~2014年9月23日(火・祝)10時~18時(入館は17時30分まで)
会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(香川県丸亀市浜町80-1)
URL:本展詳細はこちら

1988年、ICU卒業後資生堂に入社。宣伝部花椿編集室(後に企業文化部)に所属し、『花椿』誌の編集に13年間携わる。2001年よりフリーランスとして国内外の雑誌に寄稿、2002年にインディペンデント出版のプロジェクト『here and there』(AD・服部一成)を立ち上げ、2014年までに11冊を刊行。著書に『パリ・コレクション・インディヴィジュアルズ』『同2』、編著に『ベイビー・ジェネレーション』(すべてリトルモア)、共著に『わたしを変える”アートとファッション” クリエイティブの課外授業』(PARCO出版)。展覧会の原案となった著書『拡張するファッション』(スペースシャワーネットワーク)に続いて2014年には、展覧会の空気や作家と林央子の対話を伝える公式図録『拡張するファッション ドキュメント』(DU BOOKS)が発売された。

contents

水戸芸術館「拡張するファッション」展で行われたパスカル・ガテンのワークショップ報告 journal by林央子

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館「拡張するファッション」展 ホンマタカシとPUGMENT

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