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イシコさん初の紀行エッセイ『世界一周ひとりメシ』が幻冬舎から出版されたのは2012年7月のことだ。2008年にスタートした"セカイサンポ"は、ちょっと街をぶらりとしてみる散歩感覚そのままに、各国の滞在期間は一週間というルールのもとに世界中の街を渡り歩くプロジェクトだ。世界を巡って日本に帰国した後に旅中の体験をまとめたこの一冊は、じわりじわりと売れ行きを伸ばし、1年弱でなんと6刷重版2万5千部を突破した。そして待望の第二弾が、今年7月に刊行されることになった。 今回のエッセイは、タイトルにもあるように日本が舞台だ。

写真上:インドの煎餅「パパド」に、野菜などのスパイスを混ぜ込んだ「マサラ」を載せた「マサラパパド」。

shikonn1 背表紙にあるあらすじには「『世界一周に出掛けよう、日本でだけどね』日本に住む外国人は200万人超。国内にある異国を求め歩いた先は、高田馬場のミャンマー少数民族料理、名古屋のイラン料理、長野のカンボジア料理……など20カ国。店主に来日の経緯を聞き、彼らの祖国、その人生に思いを馳せる。ひとりメシは苦手でも、日本で味わう世界一周気分は格別。未踏のグルメ紀行。」とある。
日本国内で在日外国人が営むレストランでの体験談というのは、なるほど、世界各地を実際に見聞きしてきたイシコさんならではの視点がバックグラウンドにあるためか、前作と比べても別の意味で興味深い。今回、イシコさんが巡ったのは世界20か国(日本だけどね)の料理店。高田馬場のミャンマー少数民族料理や、タイ人街になりつつある錦糸町などなど、日本とは思えないディープな世界がそこには広がっている。そんな場所でひとりメシできるイシコさんもユニークなのだが、エッセイから漂うムードはどこか肩の力が抜けている。

写真右:インド、ドバイ、東京、名古屋のインド料理店を経て、佐賀県鳥栖市で自店を持ったカレー人生を送るインド人のカレー。

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左:トルコ人店主の毒舌とダンスショーが名物の谷中のトルコ料理店。ひとりメシには過酷な店です。 右:ロシアの名物「グリヴィ」。博多在住のロシア人夫婦は加藤登紀子の父親にロシアでスカウトされて来日して約二十年。

だからどんなに奇抜で、風変わりなお店でも、イシコさんというフィルターを通せば、するりと飲み込めて、ちゃんと消化できてしまう。読了後には、「ごちそうさま!」という時の幸福感にも似た心地よさを抱かせてくれる。「北海道に唯一住んでいるドミニカ人が揚げてくれたバナナ」とか、「『ぼったくり』、『残すと怒るドイツ人店主がいる』…など様々な噂がある六本木のドイツ料理店」とか、どうやってこういうお店を見つけてくるのかは謎だが、「行ってみたいような、みたくないような・・・。でもやっぱりちょっと覗いてみたいかも!」と、そんな気持ちにさせられてしまうザ・イシコさんのひとりメシワールドは、日本にいながらにして健在だ。本書を手に取って、あなたもイシコさんと一緒に、ディープなひとりメシの食散歩道へと足を踏み入れてみてはいかがだろう。

ishikosyaei世界一周ひとりメシ in JAPAN』(幻冬舎文庫)
イシコ (著)
626円、Kindle版 551円

イシコ

イシコ

1968年、岐阜県生まれ。静岡大学理工学部卒。女性ファッション誌、Webマガジン編集長を経て、2003年(有)ホワイトマンプロジェクト設立。50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動、環境教育などを行い話題となる。また、一カ月九十食寿司を食べ続けるブログや世界の美容室で髪の毛を切るエッセイなど独特な体験を元にした執筆活動多数。
イシコのセカイサンポ