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実は、甘党の私にとって、スイーツを摘まむ時間は毎日欠かせない。2月は、巷にショコラがあふれかえる。このシーズンを心待ちにしている方も多いことだろう。しかし、スイーツの中でもショコラに限っては、すっかり大人の嗜好品といった様相だ。高級メゾンのショコラなどをお酒と合わせる愉しみも、いまや立派なショコラ文化となっている。 そこで今回は、ショコラ×お酒の愉しみを、焼き物×グラスを取り合わせて演出してみたいと思う。

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豆皿 瀬戸焼 明治時代
ロックグラス 日本製 大正時代
藍染の布 ラオス


選んだショコラは、フランス・パリ郊外フォンテーヌブローのショコラティエ・パティシエ フレデリック・カッセルの新作「コフレ・ミルフイユ 2018」だ。このコフレには、6個のショコラが詰められていて、それぞれのショコラに、1日の時間の中で味わいたいシーンと、フレデリック・カッセル氏自身がおすすめするドリンクとのペアリングが提案されている。アペリティフには、香ばしいブロンドチョコレートのミルフイユショコラを、とろりとした梅酒とペアリングするのがおすすめだそう。ショコラと梅酒という、和と洋の組み合わせが面白い。

utsuwa201802_2まず、ショコラのためのうつわには小さな明治の豆皿を選んだ。たとえば洋服のコーディネートでも、配色は2色までに抑えた方がうまくいくという話がある。実は、うつわも同じで、食卓などで複数のうつわを取り合わせる時は、2色までにすると心地よく収まってくれることが多い。この豆皿は瀬戸製で、一見して釉薬が掛分けのようにも見えるが、素地の半分だけ鉄の釉薬をかけ、半分は無釉である。このツートーンの配色が、モダンなショコラを乗せてみると生きてくる。豆皿をよくよく見てみると、何かのアクシデントなのか、はたまた狙ったものなのかは不明だが、釉薬の掛かっていないところに、鉄釉が一筋すっと掛かっているのである。これがまるで、白い空と黒い海の上に光る不可思議な三日月のようにも見えて、どこか心に明るい夜を感じさせてくれる。そんな繊細な個性が宿る小皿として日々愛用しているものだ。アペリティフを愉しむ夕暮れ時の心境にもふさわしい品だ。

梅酒はロックグラスでいただくことに。これは大正時代の日本製。幅のある、側面の面取りが美しく、高台が付いているところがロックグラスとしては珍しい。高台は、うつわの底部に台になって付いている部分のことだが、茶道の世界では茶碗の高台を拝見することが約束で、鑑賞の重要なパーツのひとつである。古美術コレクターの大久保裕司氏(私は直接はお会いしたことはないが)が書かれた『古玩唯心』(文芸社刊、2009/12/1、単行本、上下巻)という本にも、同手のグラスが紹介されてutsuwa201802_3いるのだが、グラスを裏に返して見てみると、高台が始まる部分から腰(うつわの下のあたり)の部分へ向かって、たどたどしい風情のカットが施され、そこから生まれる透明な明かりの揺らぎがとても美しい。

2つのうつわを乗せた布は、ラオスの山岳地帯に住む部族の藍染め。表面の無作為に出来た布の凹凸に人の手のぬくもりがあって、それぞれのうつわを引き立たせると同時に、双方に少々の緊張感をもたせながら、うまく間を取り持って調和させている。

ショコラも、うつわも、布も、背景や作られた国はまったく異なる物同士だが、デザインのテンションとトーン(色味)を合わせることで不思議と心地よいバランスを保っている。卓上に思いつきの空間が仕上がったところで実食。ショコラの甘さは、梅酒の酸味と相まって、より豊かで奥行きのある香りと味わいが口の中に広がる。耽美な余韻に気をとられ、刹那的に夢見心地。その後で、ふと卓上のうつわに目をやった時に、「なんだか、贅沢だなぁ」と、思わずひとりごちてしまうのである。

(写真左)ショコラ × ワインのペアリング。ショコラに合わせて小ぶりのアンティークのワイングラスをセレクト。ワイングラス フランス製


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「コフレ・ミルフイユ 2018」(6個入)
フレデリック・カッセルのスペシャリテ「ミルフイユ・ヴァニーユ」をショコラで表現した「ショコラ・ミルフイユ」を6つのフレーバーで詰め合わせたコフレ。朝8時 朝食時の紅茶、昼12時 ランチ後のカフェ、午後3時 アフタヌーンティータイムのほうじ茶、夕方6時 アペリティフの梅酒、夜9時 夕食後の赤ワイン、夜11時 くつろぎのラムと、それぞれの刻に合わせたペアリングが愉しめる。(2,916円(税込)、販売期間:2月14日まで、販売店舗:フレデリック・カッセル三越銀座店、オンラインショップ、百貨店催事場など)

fc<フレデリック・カッセル>
パリ郊外フォンテーヌブローのショコラティエ・パティシエ。ピエール・エルメ氏に師事し、1988年から「FAUCHON」にて修行。1994年、自身の名を冠した店をオープン。2002年には、ショコラティエとサロン・ド・テも展開する。また、2003年よりルレ・デセール会長を務め、2013年のクープ・デュ・モンドでは代表監督としてフランスチームの優勝に貢献。2016年にはE.P.V.(無形文化財企業)を授与される。ロゴマークのエンジェルは、「僕はお菓子の天使だから」と自らが描いたもの。こだわり抜いた素材と伝統が紡ぎ出す繊細なパティスリーやショコラは、世界中で多くの人々を魅了している。

■お問い合わせ:フレデリック・カッセル 三越銀座店 http://www.frederic-cassel.jp/
Tel:03-3562-1111(大代表)




≪ NAVIGATOR プロフィール:坂本大 ≫
1987年生、佐賀県唐津市出身。大学在学中にロンドンへ留学。大学卒業後、現代アートのギャラリー勤務を経て、現在、唐津焼の専門店「一番館」の東京支店にて、好きな焼き物に囲まれながら、GALERIE AZURマネージャーとして勤務している。


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Galerie AZUR

所在地:東京都渋谷区桜丘町 26-1 セルリアンタワー東急ホテル1F
Tel:03-6427-0029
営業時間:11:00~18:00
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