FD_main
ニューノーマルなライフスタイルが進められる中、生の舞台を観劇する体験はより一層貴重になったと感じる方も多いはず。一方で舞台に立つ役者たちの舞台へ込める想いも、いつにも増して強い。 舞台フリークもそうでない方も、リアルな感動を肌で感じられる観劇の機会を見つけてその魅力に触れてみてはいかがだろう。

1983年に公開され、世界中で1億ドル以上の大ヒットを記録した伝説的アメリカ青春映画『フラッシュダンス』。その映画版を受け継ぎながら、「What A Feeling」、「Maniac」、「Gloria」等の1980年代を代表する ヒットソング にのせた大迫力のダンスによって描き、よりダンスと音楽をフィーチャーして蘇ったのが、ミュージカル『フラッシュダンス』だ。さまざまな舞台人の想いを込めて、今秋待望の日本初公演となる。

FD_01© 愛希れいか 廣瀬友祐 桜井玲香 福田悠太(ふぉ~ゆ~)植原卓也 Dream Shizuka 石田ニコル/春風ひとみ 他

今回は、「地球ゴージャス」公演をはじめ、近年は「ラディアント・ベイビー~キース・ヘリングの生涯~」や「キンキーブーツ」等、翻訳作品の演出での評価も高い岸谷五朗が演出を担当する。プロダンサーを夢見る主役のアレックス役は、宝塚歌劇団の在団中よりダイナミックなダンスに定評があり、本作が退団後初の単独主演作となる愛希(まなき)れいかが演じる。数々の話題の舞台作品で活躍中であり、共演者でメインキャストの廣瀬友祐(ひろせ・ゆうすけ)、植原卓也(うえはら・たくや)にWインタビューし、本公演の意気込みを語ってもらった。



『フラッシュダンス』、ダンスと歌が最大の魅力。

Q: ニック・ハーレイ役の廣瀬さんは、主人公アレックスの働く製鉄工場の親会社ハーレイスティール社のハンサムでおしゃれな次期社長、とありますね。

FD_02 (写真)ニック・ハーレイ役の廣瀬友祐さん。
A 廣瀬友祐 : 主人公でダンサーのアレックスは、昼間は男性と一緒に仕事をしていて、ニックはまさかの出会いで一目惚れをしてしまう。恋に落ちて、彼からアプローチをします。映画『フラッシュダンス』を観た時は、ど真ん中の青春映画だな、と。友情や恋が描かれるなかで、僕の役は主人公に影響を与えるというよりも、むしろ影響を与えられる側ではないか、と思っています。(宣伝資料の説明を見ながら)御曹司で次期社長。ハンサムで、お洒落はどうかな、と思いますが(笑)。

細やかなキャラクター設定はお稽古に入ってからですが、ニックがどのような人間か探っていきたいですね。主人公アレックスを演じる愛希さんの演技によっても変わってくると思っています。お坊ちゃまで甘やかされて育ってきた人間なのか、もしくは与えられた環境にストレスを感じて生きてきたのか。変わりたい、と思っている自分がいて、それまでの人生で彼が決して持ち得なかったものをアレックスとの関係性で見出したのではないか、と感じます。アレックスを輝かせ、彼女の心の動きをより見せられるか、を念頭に置きながら演じたいと思っています。

映画版では、ジェニファー・ビールス演じる主人公がとても可愛くて、若さゆえの気の強さもあって、一生懸命さが魅力でした。今回はその役を愛希さんが演じますが、素晴らしいアレックス役を創り上げてくるのは、きっと間違いありません。そこを邪魔しないようにしつつ(笑)、お互いに稽古場で言葉を交わしながら、どういう関係性がしっくりくるのかを探っていきたいと思います。舞台でもダンスと歌は最大の見どころになるでしょう。

Q: 植原さんは、クラブ“カメレオン”の経営者のC.C.(シー・シー)役。植原さんといえば、近年のミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』で見せてくれた、妖しい魅力の役も印象的です。今回はどのような役柄でしょう。

A 植原卓也 : C.C.は、アレックスやニック、主人公のダンサー仲間のグロリアたちに対して、いろいろかき乱すポジションですね。自分がしっかりと徹底的にその役割を演じることによって、より皆さんが素敵に見えると思います。

C.C.が歌うメインナンバーがあるので、そこはお楽しみにしていただけたら、と。ダンサー達を自分の経営しているストリップクラブ、“カメレオン”に、言葉巧みにいざなう、とてもずる賢い嫌な奴です。ここまで演じても、どうか植原卓也を嫌いにならないでください、というくらいの勢いで頑張るつもりです(笑)。

演出を担当するのは、役者でもある岸谷五朗氏。

Q: いいですね。期待が膨らみます(笑)。植原さんは、何度か演出の岸谷五朗さんと舞台でご一緒していらっしゃいますね。

A 植原: はい。有難いことに初舞台『FROGS』は五朗さんの演出でしたし、「地球ゴージャス」の公演も含めて、今回でご一緒させていただくのは4回目となります。五朗さん自身が役者をされているので、本当に役者陣に沿って物事を考えてくださいます。例えば、過去のオリジナル作品では、そのキー歌いづらいでしょ、と見抜かれた翌日に合っているキーに変更されていました(笑)。それぞれの役者に合ったものを提供しようとしてくださいます。

芝居でも、演出においてしっかりと指導をして導いてくれます。最初の19歳の時には、全部お任せ、といった感じで甘え切っていました(笑)。ずっとご一緒させていただいている身としては、時が経つにつれ、五朗さんの演出を受けるからには、自分自身にもプレッシャーをかけながら土台をしっかりと作って、その場に向かっていきたいな、と感じるようになりました。

A 廣瀬: 僕は岸谷さんとは初めてで、ポスター撮りの時にご挨拶させていただきました。愛希さんとは、先日の共演の舞台「ファントム」からそれほど経っていないので、雰囲気もなごやかで。その様子を五朗さんがにこやかに見てくれていて、思いっきりやろうね、とだけ撮影中は言葉をかけていただきました。あ、いま勝手に五朗さんと呼んでしまいました(笑)。

ストーリーの背景を読み込む役作り。

Q: 廣瀬さんは、「ロミオ&ジュリエット」の敵役のティボルト役、「ファントム」の青年貴族のシャンドン伯爵といった、色濃い役から真っ白な役まで演じていらっしゃいます。

A 廣瀬: 役に対するアプローチは、まったく違いますね。ニヒルな役やダークヒーロー的な役の方が好きで闇の部分を掘り下げたくなります。真逆の役の場合は、真っ白なところからつけ加えていく、といった感じです。どちらの役をストレスに感じるかというと、圧倒的にキラキラした役(笑)。その中でも、今回のニック役は大変難しいだろうな、と思っています。

今回はいわゆる恋愛のメインのストーリーを任されているんですが、意外と僕はやったことがなくて。どちらかというとサイドストーリーを深め、台本に描かれていない部分や裏の背景を想像させる、といったところに、自分なりの演じる美学を凄く感じていました。しかし、今回のように本当に必要な部分を凝縮しているような作品だと、この役を軽率に演じようとすれば演じてしまえる。役の難しさに比べて、そういう面があります。立場的には御曹司や社長ですが、ニックという実際の人間の繊細な心の揺れ動く様子を決して間違えてはいけない、その肉付けがこの作品をより良いものにするのでは、と思っています。現在は、いろいろと悩んで考えている段階です。

Q: 植原さんの役作りは、いかがでしょう。

FD_02 (写真)C.C.役の植原卓也さん。
A 植原: その作品毎にもよりますが、今回は映画もありますし、そこからヒントを得ることはありますね。作品全体を捉えて、自分のポジションがどういうものなのかを考え、足を引っ張らないように演じたいと思っています。それは、どの舞台にも共通することです。

舞台がもたらす希望。そこに込める想い。

Q: お二人とも舞台の活動をメインにされていますが、いま舞台に対しての思いは。

A 植原: 舞台の生(なま)の強みを、自分も楽しんでこれまでやってきました。舞台を観て元気になった、という感想を聞くと本当に良かったな、と思います。お客様がダイレクトに喜んでくださるのが嬉しいです。現在のような状況下で舞台が希望を与えられることができたら、それは凄いことだと、今回もやはり感じると思います。

A 廣瀬: 僕も本当にそう思います。そして、あの空間は特別なんだな、と。自分がこの仕事をいかに愛して、自分自身というものの大半を作っている場所が舞台だった、と今回の状況下で痛感させられました。

なぜ、あの空間が特別なのか。それは、手を伸ばせば届きそうな距離なのに、出演者以外はそこには上がれない。その決して触れない、上がれないという特別感が神聖であり、その距離や空間を生み出すあの奇跡のような場所が何とも魅力的だな、と改めて思いました。舞台をメインに活動している者としては、この爆発しそうに表現したい、という思いがマグマのようにふつふつと自分のなかで湧き立っているのを感じています。

―お二人とも、想像以上に素晴らしい役になると思います! 本日はありがとうございました。

text by Tomoka Yasuhara

profile


廣瀬友祐 (ニック・ハーレイ役)
1985年10月14日生まれ。東京都出身、山梨県小渕沢育ち。2008年ミュージカル『テニスの王子様』でデビュー。2011年舞台『戦国BASARA3』『ROMEO&JULIET~legend of painful heart~』では主演を務める。2015年ミュージカル『黒執事-地に燃えるリコリス2015』ではチャールズ・フィップス役を演じた。主な出演作は、ミュージカル『グレート・ギャツビー』『屋根の上のヴァイオリン弾き『エリザベート』『ロミオ&ジュリエット』『ファントム』。最新作はミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』Season 2。最新リリースはCD『cherisH』。

植原卓也(C.C.役)
1988年6月22日生まれ。大阪府出身。2005年に俳優活動を開始し、映画やドラマ『サイン』(MBS)『Fallen Angel』(BSA)などに出演。現在は舞台を中心に活躍し、話題の人気作に数多く出演している。主な出演舞台に、ミュージカル『黒執事』シリーズ、『スカーレット・ピンパーネル』、『キューティ・ブロンド』(初演、再演)、地球ゴージャスプロデュース公演 Vol.15『ZEROTOPIA』、浪漫活劇『るろうに剣心』、『エリザベート』、『ダンス オブ ヴァンパイア』などがある。 2021年2月には、日生劇場にてミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』への出演が控える。
information


FD_info2ミュージカル『フラッシュダンス』

CAST&STAFF
日本版脚本・訳詞・演出 岸谷 五朗
原作:トム・へドリー&ジョー・エスターハス作 パラマウント・ピクチャーズ映画
『FLASHDANCE』
脚本:トム・へドリー(映画『FLASHDANCE』)&ロバート・ケイリー
音楽:ロビー・ロス
作詞:ロバート・ケイリー&ロビー・ロス

アレックス・オーウェンズ…愛希れいか
ニック・ハーレイ…廣瀬友祐
グロリア…桜井玲香
ジミー…福田悠太(ふぉ~ゆ~)
C.C.…植原卓也

[東京公演]日本青年館ホール  2020年9月12日(土)~9月26日(土) 【一般発売】 2020年8月8日(土)午前10:00から受付開始
東京ほか、名古屋、大阪にて上演。公演日程、新型コロナウイルス感染予防対策に伴う、チケット再販売についての詳細は、公式サイトをご覧ください。

公式サイトURL:http://flashdancethemusical-jp.com/
公式Twitter:@FLASHDANCEJP
<関連記事>
Stage Fever 劇場に行こう!verita的 舞台のある生活 Vol.1 THEATER OF MAGIC 劇場で生まれる"魔法の瞬間"
Stage Fever 劇場に行こう!verita的 舞台のある生活 Vol.2 SPECAL INTERVIEW 舞台芸術の裏事情 又平亨さん