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翻訳の仕事をしているから、毎日英語を読んだり書いたりしている。困るのは「それなら英会話はお手の物だね」と決めつけられることだ。ちょっと待ってほしい。翻訳と英会話はまったく別モノだ。私は英語圏に住んだことがないし、英会話はどちらかといえば苦手だ。

苦手を克服しようと英会話学校に行ったことが一回だけあるが、雰囲気にまったくなじめず、すぐやめてしまった。英語で取材や打ち合わせをするときには、念入りに準備をするからなんとかなる。だがパーティでの雑談となると、その場が白けるほど堅い文章をしゃべっている……ような気がする。

別にぺらぺらしゃべれなくてもいいや、外国人と雑談することはそんなにないし、と開き直っていたのだが、最近そんなことを言っていられなくなった。なぜなら英語でメールを書かなくてはならない時代になったから。たとえ仕事相手であっても、ある程度親しくなったら用件だけを並べた杓子定規な文章ではすまない。プライベートな話をおもしろく書こうとして、キーボドを打つ手がハタと止まる。「この言い方でいいのだろうか?」そこで私がこっそり読んでいるのが、小池直己氏と佐藤誠司氏のクイズ形式の英語本である。本書はレベル1からレベル5までの5段階で、英語の短いフレーズをチェックして覚える形式になっている。音声をダウンロードして耳から覚えることもできる。

日本語から英語への対訳になっているが、日本語的発想をふるい落として、英語的発想で英語の文章を考えられる訳と注釈がありがたい。 たとえば―― 「ジムは誰の言うことも聞かない」→Jim is his own boss. (注釈:ジムは自分の上司だ、が直訳) 「そう言っては身もふたもない」→You are too direct. (注釈:あなたは直接的すぎる、と表現すればOK) 日本語の文章と、英語からの直訳を比べれば、日本語と英語の発想のちがいが見えてくる。英語的発想のポイントがつかめると、英語脳に切り替えやすくなり、とっさのときに気の利いた英語も出てこようというもの。

クイズでマスター! 使える英会話750フレーズ

もう一冊、同じ著者たちが出している『知らないと恥をかく! ネイティブ英語の常識175』(ソフトバンク新書)も、一読して初めて、知らないで恥をかいていたことがいくつもあるとわかった。“Can”と“be able to”の使い分けや、時制や冠詞についての説明が的を射ていて、いまさらながら「語学は基本の理解がすべてなんだよ」と自分に言ってきかせた。通勤電車のなかで少しずつ読んで、夜眠る前に声に出して言ってみると、きっと英語力はぐんと上がるにちがいない。いや、現に私自身、自信をもって英語のメールが書けるようになった。英会話学校に行くのも面倒だなあ……と逡巡している人におすすめしたい。

(text / motoko jitukawa) 

『クイズでマスター! 使える英会話750フレーズ』 小池直己 佐藤誠司著 ソフトバンク新書/\\798(税込)