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多くのスイーツを食べつくしている読者のみなさんは、見た目も瀟洒で生クリームたっぷりの生菓子と、素朴な美味しさの焼き菓子のどちらが好みだろうか? もし、生菓子はトレンド感があるけれど、焼き菓子は贈答品ぽいし、なんとなく野暮ったいなどという印象だけで、焼き菓子を避けているならば、そのイメージをくつがえす逸品たちをご紹介する甲斐があるというものだ。

(写真上)しっとりしたアマンドクリームの生地に渋皮付きのふっくらとしたイタリア産栗を丸ごと閉じ込めた「モンブラン(\\620)」は、トップにあしらったマロンクリームとのコンビネーションが絶妙。定番のモンブランとはひと味違った美味しさをぜひ。 

サロンドルボンパティシエとして20年以上の経験を持ち、国立の人気店『パティスリー・グリオット』のオーナーシェフである葛西由利さんが新しいチャレンジの場として麻布十番にオープンさせた『サロン ド ルボン』の焼き菓子たちは、単なる焼き菓子ではない。食べる人にとって心地よく、心と体にやさしい“コンフォートスイーツ”と名付けられた新感覚スイーツだ。

(写真左)秋の木の葉が降り積もった石畳をイメージした「パヴェ・ノワール(\\620)」は、さくさくのアーモンド生地、プラリネクリーム、ショコラを重ねたリッチな味わい。10月中旬以降、紅玉リンゴを使用した新作も登場予定。 (写真右)軽井沢の人気自家焙煎珈琲店『丸山珈琲』オーナー、丸山健太郎氏が葛西さんの焼き菓子に惚れ込み、『サロン ド ルボン』専用のコーヒーをブレンド。酸味が少なく、やや深煎りで落ち着いた味わいなので、1杯目はブラックで、2杯目は砂糖とミルクを加えるのがオススメ。「サロン ド ルボンブレンド(\\1,000)」 

まず、焼き菓子特有のモソモソした口あたりはまったくなく、しっとり、いきいきとしている。さらに、素朴でシンプルさが身上であろう焼き菓子たちが非常に美しくおめかしされている。ショーケースに鎮座まします姿に「これが焼き菓子なの?」と驚かされる。とはいえ無駄に華美ではなく、伝統を忘れずに品よく育った良家のお嬢さん的美しさだ。ヨーロッパの伝統製法を守りつつ、葛西さんの経験とセンスによって生み出された、良質な素材の特徴を活かした製法が、我々に新しい焼き菓子の世界を教えてくれる。素材本来の風味が際立った、シンプルでストレートな美味しさが心に響き、心地よく、潔さすら感じられる。

サロンドルボン固定概念にとらわれない葛西さんのチャレンジと夢は、まだまだふくらむ。『サロン ド ルボン』は単なるティーサロンに留まることなく、サロン ド テとして充実させていく予定だそう。本場フランスでのサロン ド テとは、喫茶はもちろん軽食も楽しめる存在。それゆえ、キッシュやラタトゥイユ、リエットなど食事のメニューも豊富だ。これから冬にかけては、ラザニアやタルティーヌなど温かいディッシュが続々と仲間入りする。「ケーキだけにこだわらず、訪れたお客さまがコンフォートなひとときを過ごせる場でありたいですね」とのこと。ヨーロッパを知り尽くした葛西さんならではのおもてなしの発想であり、葛西スタイルは完成するものではなく、変化していくものなのだろう。

(写真上)(手前より時計回りに)カスタード入りのシュー生地にリンゴのコンポートを詰め、ラズベリージャムをあしらった「ポンヌフ(\\620)」、チーズのコクにナッツの食感と香ばしさを組み合わせたやみつきになる一品「リコッタチーズと松の実のケーキ(\\620)」。一番人気の「カラメル・サル(\\620)」は塩味をきかせたほろ苦のカラメルソースを薄焼きにしたバター生地に重ねてミルフィーユ風に。サロンドルボン(写真右)広い窓からたっぷりと陽射しが注ぎ込む明るい店内は、まさにコンフォータブル! イマドキのカフェとは一線を画す上質な空気に包まれて、いつまでも滞在したくなる雰囲気。 

外国人、ビジネスマン、マダム、観光客…さまざまな人たちが交差する麻布十番ならではの、とっておきの一軒。ランチ、ティータイム、ディナー、お持たせの調達など、さまざまなシーンで使いこなしたい。

サロンドルボンtext/miho sasaki、photo/chikahito nagai

shop information


サロンドルボンサロン ド ルボン

東京都港区麻布十番2-8-10 パティオ麻布十番2F
Tel:03-6436-0980
営業時間:11:30〜23:00(22:00 L.O.)
定休日:火曜