赤い風船, シネマ
幼い少年パスカルが見つけ、どこに行くにも一緒の大切な赤い風船。その気持ちにこたえるように、たとえ手を離しても風船はパスカルについてゆく。ところがそれを見たいじめっ子たちは、パスカルから不思議な風船を取り上げようと追い立てて……という場面では、ひやー、パスカル、逃げるのよっ! と思わず声を上げそうになった。

『赤い風船』は1956年に作られた、たった36分の短い映画だ。普通、公開から10年も経つと、映画はなんかしら古い感じがするものだ。「うわ、何その眉毛」とか「ぷっ、怪獣がぬいぐるみ!」とか、そーゆー楽しみがメインになってしまうのだが、稀に古さをまったく感じないものもある。『赤い風船』は驚異の“50年もの”だが、まさにそれ。名作である。

さて30代の女、やがて40代50代になっちゃう女として考えるところは、その“古さを感じさせない”秘訣である。若返りのクスリが発明でもされない限り、人間は必ず歳を取る。いまさら10代20代に張り合おうとは思わないが、「見た目も言動も、確かに45って感じ」とか言われるのはどーもいただけない。目指すのは「年齢不詳な女」。これを実現すべく独自抽出したのが、年齢を超越する『赤い風船』メソッドである。じゃーん。

赤い風船,シネマ

まずひとつめは“流行の拒絶”。ズルズルの寝巻きみたいなネズミ色の上下を来たパスカルをはじめ、画面にもセリフにも時代を意識させるものがぜんぜんない。ふたつめは“シンプルさ”。物語やテーマが単純で、特別な知識なんてまったく必要がない。さらにみっつめは“アイディア”。テーマは単純だが、見せ方はアイディア満点なのだ。そして最後は、“無邪気さ”。映画の中に「黒い感情」を発しているものがない。

流行を追わず、面倒なことを言わず、楽しいアイディア満点で、イライラしてない。はー、なんて素敵な『赤い風船』な女性。私もこんな風に生きようと思ってます。ちなみに今日はダメでしたけど。  (text / Shiho Atsumi ) 

赤い風船