チャーリー・ウィルソンズ・ウォー
ある30代のOLが、結婚直前に最愛の婚約者に捨てられる。不幸のどん底の彼女を心配した周囲の人間は、彼女のために次々と合コンをセッティング。その気合の結果か、どの合コンも“こんな男が残っていたとは!”と思えるようないい男だらけである。

そして前の男より数段いい男に見初められ、ついに結婚する。友人たちに祝福され、絵に描いたようなハッピーエンドである。

『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』は、1979年のソ連のアフガニスタン侵攻の裏で、アフガン支援に動いたテキサス州の上院議員の活躍を描いた物語だ。なんだか小難しい話に聞こえるが、主人公を演じるのは好感度抜群のトム・ハンクスで、キャラクターは酒好きで女好きの、政治的功績とは無縁の人好きする南部男。アフガン難民の窮状を目の当たりにして「何とかしなければ!」と立ち上がる善意が、ソ連を撃退してゆくストーリーも爽快だ。だがこれがただのハッピーエンドと思えないのは、彼がソ連と戦うために武器を与え訓練した私兵たちが――アフガンの、そして同じイスラムとして協力したサウジアラビアの私兵たちが――やがてタリバンとなりアルカイダとなったことを、2008年の私たちが知っているからだ。

じゃあチャーリーは行動しないほうがよかったのか。そうとも言い切れない。アフガニスタンの戦いで疲弊したソ連は弱体化して冷戦が終わり、ゴルバチョフのペレストロイカを経て崩壊したのだ。チャーリーがいなければ東欧諸国はいまだに民主化しなかったかもしれない。「こんなことさえしなければ」は、その後を知っている人が言う結果論でしかない。アメリカには、戦後処理を考えもしない無邪気なヒーロー気取りの結果をもう少し考えて欲しいけれど、だからといって当時9.11テロを想像できた人なんて世界中に誰もいなかった。

チャーリー・ウィルソンズ・ウォー

さて冒頭の彼女。結婚生活の中で小さな失望を重ねるうち、思い浮かべるのは合コンで出会ったいい男たちだ。あの人と結婚していたら……この人と結婚していたら……あまりにいい男を見た彼女は、今の相手に飽き足らず、結局離婚してしまう。チャーリーの戦争も、彼女の人生も同じ。分かっているのは、終わりに見える区切りを過ぎても、世界も人生も動き続けること。その先に何があるか分からず、ある瞬間の幸せは、別の瞬間の不幸を引き起こす原因にだってなりかねない。でも悲観することはないのだ。ある瞬間の不幸が、また別の瞬間の幸福につながってもいるのだから。 (text / Shiho Atsumi )

チャーリー・ウィルソンズ・ウォー

『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』

監督:マイク・ニコルズ
出演:トム・ハンクス、ジュリア・ロバーツ、フィリップ・シーモア・ホフマン、エイミー・アダムス
配給:東宝東和
劇場情報:2008年5月17日より日劇1ほか全国にて公開
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