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ベーシックなのに新しい。シンプルなのに遊び心がある。そんな“ニュースタンダード”を表現し続け、2009年で設立から11年を迎えた東京ブランド、sacai(サカイ)。

sacai, サカイ, 阿部千登勢デザイナーの阿部千登勢さんは、コム・デ・ギャルソンでパタンナー、ニットウエアの企画を担当後、ジュンヤ・ワタナベ・コム・デ・ギャルソンの立ち上げに参加。1997年、妊娠を機に退社し、1999年に子育てのかたわら、5型のコレクションで自らのブランドをスタートさせた。

基本コンセプトは「日常の上に成り立つデザイン」。スタンダードなものを大事にしながら、エレガンスとラグジュアリーを追求してきた。
「私にとってエレガンスやラグジュアリーとは、高級ブランドを着ることではなく、着心地がいいとか、気分が上がるとか、着ていて気持ちがよくなること」と話す阿部さん。服作りのベースにあるのは、“自分が着たい服”だ。事実、自らのクローゼットにはsacaiの服ばかり。全てのサンプルに自分で腕を通し、着心地、ラインを確認しているという。

(写真右)デザイナーの阿部千登勢さん。ブランド名は旧姓に由来するが、「k」を「c」に置き換えることで、記号的な意味合いを持たせた

「10年前、33歳で、結婚していて、子供が生まれたばかりで、何か物をつくりたい、自分が着たい服を作りたいと思ったんです。ファッションだけに偏るのではなく、日常や自分が身を置く環境を大切にしながら、生活をより楽しめる服を。パーティにも、公園にも、友達とディナーにも行く。そんな日常のすべてを大切にしていきたい。だから、さまざまなシチュエーションで着られる服を揃えています。出産、子育てを経験しているから、今の自分があり、こういった服づくりをしているのだと思いますね。私の経験のすべてが服という形となって現われているんです」。

sacai, サカイ, 阿部千登勢 毎シーズン、スタンダードな中に新しいテーマを盛り込んでいるが、それはあくまでも“味付け”だと話す。その味付けを決めるアイディアの源は、日常のちょっとした違和感だ。
「でも、すべてのデザインには必然性があります。ギャザーも切り替えも、なぜそこに存在するかの理由があるんです。チームのメンバーには、“綺麗なだけで意味がないことはしないで”といつも言っています。sacaiでは、コンセプチュアルなだけでもだめ。sacaiの服作りは理論的。可愛い中にも強さがあるのはそのせいで、そこがこのブランドらしさを作っていると思うんです」

(写真左)10周年を迎えた2008 A/Wは、得意とする素材の組み合わせとニットウエアの優れた技術でサカイの考えるニュースタンダードを再構築した集大成的コレクション

コンセプト、デザイン、美しさ、機能、着心地。そのすべてが美しいバランスを保つsacaiの“ニュースタンダード”。2006年には、その哲学を共有する新しい2つのラインが誕生している。
「コム・デ・ギャルソン エクスクルーシヴのカプセルコレクションであるサカイ・ジェム(sacai gem)と、ランジェリーラインのサカイ・ラック(sacai luck)は、メインのラインよりも、もっともっと自分の中のベーシックなものを表現していく場だと考えています。実はこの方向性は、最近、自分の中で固まってきたものなんですけれど(笑)」

2009年の春夏からは、メンズラインもスタート。阿部さんの世界観は着実に広がりを見せている。
「2008秋冬コレクションは、私の持っているテクニックを最大限利用しました。毎回常に一歩先へという思いでコレクションを発表していますが、11年目となった2009年の春夏では、今後の10年、20年、どうしていきたいか、どういうブランドであり続けていくかということをより意識しました」
ハワイアン、ロック、プリミティブをインスピレーションソースに、フリンジ、鮮やかな色使い、新素材、挑戦的なデザインなど、新鮮な要素もたっぷり取り込み、進化し続けるsacaiがより強調されていた。

これまでの10年の上に、積み上げられる新しい10年で、どんな驚きを見せてくれるのか。そんな期待がますます集まっている。

text / june makiguch

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sacai, サカイ

sacai/サカイ

取扱店舗(2009年1月現在)
>国内:新宿伊勢丹4F Re-Style、ユナイテッドアローズ、バーニーズジャパンほか
海外:10 corso como(Italy)、Dover Street Market(UK)、Colette、L'eclaireur(France)、Barneys New York (USA)、Joyce(Asia)ほか

お問い合わせ先
sacai/サカイ
Tel:03-5428-6254