アフター・ウェディング
孤児院への出資を取り付けるため、大富豪ヨルゲンに会いにインドからデンマークに帰国したヤコブ。翌日に控えた彼の娘アナの結婚式に出席するハメになるが、そこで20年前の恋人ヘレネと再会する。彼女はヨルゲンの妻で、なんとアナはヤコブの娘だった。

真実を知ったアナは、母にヤコブとなぜ別れたのかを問いただす。今でこそボランティアの活動家だが、当時のヤコブは飲んだくれのヤク中で、どんな女とも寝るしょうもない男だったから、「愛していたけど、幸せじゃなかったの」とヘレネは答える。

そもそも「愛している=幸せ」はパラドックス的である。たとえば恋愛が始まってずーっと幸せなら、それは日常になる。そうすると以前は“最高に幸せ!”と思えていたことが幸せと思えなくなってくるに違いない。逆にどん底を味わうような恋愛関係の場合、例えばヤコブはヘレネの友達とさえ平気で寝る男だったのだが、こういうどん底があればこそ、小さな幸せさえも絶頂になりうる。この急転直下のワンセットを「幸せ」と呼ぶ人もいるだろう。唯一断言できることは、“けど”じゃなく“から”ということじゃないだろうか。要するに、「愛している“から”不幸」で「愛している“から”幸せ」なのだ。すきでもなんでもない男が浮気しようが何しようが、どうぞご勝手にっつーことなんだから。

アフター・ウェディング

さてヨルゲンとの穏やかで幸せな生活の中、ヘレネはヤコブのことを忘れたと思っているのだが、激しい恋愛は幸せも不幸も激しかっただけにいまだ胸に突き刺さっている。彼女はいまだ彼のことを愛しているから、おいそれと昔のことを水に流せない。そりゃそうだ、愛しているからすべてを許し、受け入れるなんてできやしないね――と思っていた見ていた映画の後半、そんなちっぽけな気持ちは思いもよらぬ、ものすごいでかい愛情に飲み込まれてしまう。はらほろひれはら。参りました。愛の何たるかなんて、私はわかっちゃいなかったと思い知らされる一本である。 (text / Shiho Atsumi )

アフター・ウェディング

『アフター・ウェディング』

監督:スサンネ・ビア
脚本:アナス・トーマス・イェンセン
出演:マッツ・ミケルセン、ロルフ・ラッセゴー ド、シセ・バベッド・クヌッセン、スティーネ・フィッシャー・クリステンセンほか
配給:シネカノン
劇場情報:2007年10月27日、シネカノン有楽町1丁目ほかにて全国順次公開!