ターナー展
今日の現代美術で最も重要な賞のひとつであり、英国美術界のみならず国際的な影響力を持つターナー賞。その歴代の受賞者全ての作品が一堂に会し、「英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展」が開催されている。(写真上)デミアン・ハースト《母と子、分断されて》1993 / 2007年 190×322.5×109cm (×2), 102.5×169×62.5cm (×2)/スチール、ガラス強化プラスティック、ガラス、シリコン、牛、子牛、ホルムアルデヒド溶液/Tate. Presented by the Artist, 2008/Photo© S Drake & J Fernandes *「Turner Prize Retrospective」展示風景

ターナー展

ターナー賞――その歴史は1984年より始まる。

イギリスの著名アーティスト、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの名を冠したこの賞は、テート・ブリテンがパトロン団体「The Patrons of New Art(新しい美術のパトロン)」のもと、50歳未満の英国人または英国で活躍するアーティストを対象に毎年4人の候補者を選出、最終的に一人の受賞者を決定するものである。当初は、第1回目の受賞者であるマルコム・モーリーの受賞式欠席や展示スペースの確保不足、スポンサー企業の倒産などの問題が発生。前途多難の様相を呈していたが、90年代に入りテレビ局チャンネル4とのタイアップを獲得したことからその注目は一層高まり、軌道に乗った。

(写真左)グレイソン・ペリー《ゴールデン・ゴースト》2001年 67 x Φ35.5cm/陶/サーチ・ギャラリー、ロンドン蔵

授賞式の模様はテレビで生中継され、翌日の新聞はその話題で持ちきり。毎年秋になると「今年のターナー賞は誰が獲る?」と英国の世間の話題をさらうほど、今では国民的行事と言える人気ぶりだ。

ターナー展

“見たことのないものを見る”。未知のものを間近で見ることもまた、食べたことのない食材を食べるときと同じように、わくわくするもの。特に、デミアン・ハーストの《母と子、分断されて》には、誰もが目を奪われることだろう。牛の親子がケースにより分断されており、それぞれの体も分断されているという“二重の分断”に、あなたはどのような印象を受けるだろうか。

ターナー展

レイチェル・ホワイトリードの《ハウス》、アントニー・ゴームリーの人体像は、内側から型を取ることで、存在するもの本来の“かたち”を問う新鮮な作品だ。また、象の糞を用いて黒人文化の美を表現するクリス・オフィリの絵画や、映画『ジキル博士とハイド氏』を巧みに編集し、博士が善と悪の間で苦悩するさまを二面プロジェクションで見せるヴィデオアート、一見古典的に見える“壷”に戦争や政治、性、暴力などの近代的な問題が画として刻まれた作品など、多様な変化を遂げる英国アートの数々があなたの好奇心を満たしてくれるはず。パワー溢れるその胎動を探ってみてはいかがだろう?

(写真右)ダグラス・ゴードン《正当化された罪人の告白》*日本語未定/1995年 300x400cm(x2) ヴィデオ・インスタレーション/カルティエ現代美術財団、パリ蔵/From Dr. Jekyll and Mr. Hyde, 1931, dir. Rouben Mamoulian, Paramount Pictures/© Metro Goldwyn Mayer/United Artists. Courtesy: Gagosian Gallery.

ターナー展

英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展

会期:2008年4月25日(金)〜2008年7月13日(日) ※会期中無休
会場: 森美術館 六本木ヒルズ森タワー53階
開館時間: 10:00〜22:00(月・水-日)、10:00〜17:00
※いずれも入館は閉館時間の30分前まで
入館料: 一般¥1,500、学生(高校・大学生)¥1,000、子供(4歳以上−中学生)¥500 ※税込
※本展のチケットで「MAMプロジェクト007:サスキア・オルドウォーバース」展、
展望台 東京シティビューにも入館可能(ご利用当日のみ有効)