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旧山手通りの、鑓ヶ崎の交差点から神泉の交差点までのわずか数キロメートル。カフェやレストランが多い代官山エリアの中でも、特にこの通りには、おしゃれなオープンカフェや有名レストランが軒を連ねている。 流行に敏感な人が多く、店の入れ替わりが激しい街で、この通りの店だけは、昔から変わらない表情を見せてくれるのがうれしい。代官山ヒルサイドテラスなど、この通りのランドマークは多々あるが、老舗の風格で佇んでいるのが『レストラン マダム・トキ』であろう。

(写真上)ミニョン(¥420)は、赤い果肉の桃を使ったムース。口にふくんだ途端、赤ワインの香りを残して、ふわっと溶けてしまう。アーモンドプードルをふんだんに使った軽さが特長。中からスグリのジュレがとろけ出し、桃のムースとは異なる甘酸っぱさが口いっぱいに広がる。もっちりとしたラズベリーのマカロンが、とろけるムースにアクセントを添えている。砂糖ではなくトレハロースを使用しているため、低カロリーなのもうれしい。

マダム・トキ今でこそ、定着した感のある一軒屋レストランであるが、マダム・トキがオープンした1978年当時には画期的なことであった。代官山にヨーロッパの雰囲気をもたらしたフレンチレストランは、ファッション界をはじめとする時代の寵児たちに愛され、ファッション誌の撮影やTVドラマの舞台としても使用されてきた。その決して流行にまどわされない空気感と最高級のフレンチは、21世紀になっても変わることなく、「代官山でフレンチ=マダム・トキ」といっても過言ではないほどの不動の地位を得ている。一度は必ず行くべき、フレンチレストランといえるだろう。また、その優雅で落ち着いた雰囲気は、レストランウエディングの会場としても人気だ。

オープン以来、このレストランのデザート部門を支えているのが、今回ご紹介する『パティスリー マダム・トキ』。伝統的なフランス菓子から現代風のデザートまで、そのラインナップは幅広い。また、クロワッサンをはじめとするパンのバリエーションの豊富さが、フランスの息吹をよりいっそう感じさせてくれる。エントランスをくぐった途端、ふんわりと漂ってくる焼き立てのパンとお菓子の香りに幸せを感じ、お店の雰囲気と相まって、まるでフランスの街角のパティスリーに舞込んでしまったかのような錯覚に陥ってしまうほど。小じんまりとした店内に、商品がところ狭しと無造作にディスプレイされているのもフランス的。ショーケースの中には、シュークリームやモンブランなどの定番から斬新な雰囲気のものまでバラエティに富んでいるため、迷う楽しさが味わえる。レストラン用のパンとデザートもすべて、当日にこちらで手作りしているという。とはいえ、レストランで出されるものと店頭に並んでいるものは種類が異なるので、それもまた楽しかったりする。まずは、気軽にテイクアウトで楽しみ、次回はレストランでのディナー後のデザートを楽しんでみてはいかが?

マダム・トキ (写真左):ヨーロッパの伝統的な味わいが楽しめる焼き菓子たち。(手前より)ナッツやドライフルーツがごろごろと入り、濃厚でしっかりとした噛みごたえのパンフォルテ(¥210)。定番のセシル(¥137)は、ココナッツとドライアプリコットの風味がやさしい味わい。フリアン・ショコラ(¥137)はしっとりとした舌ざわりの中にチョコレートの粒感を感じられる。その他、マドレーヌやダッグワーズなど常時7種類。ブライダルの引き菓子としても人気。(写真右):シェフ・ド・パティシエ 山本浩泰さん。神戸での修行後、渡仏。2002年、ヨーロッパで最も権威のある『ガストロノミックアルパジョン』の総合部門で優勝。フランス滞在の4年間で、その他多くのコンテストでの受賞歴を持つ。帰国後、『パティスリー マダム・トキ』でその腕をふるっている。「食べて、素材がわかるものを作る」をモットーとし、今後の活躍が期待される若手パティシエのひとり。

text/miho sasaki、photo/chikahito nagai

shop information


マダム・トキパティスリー マダム・トキ

東京都渋谷区鉢山町14-7
Tel:03-3461-2298
営業時間:12:00〜20:00
定休日:月曜(但し、月曜が祭日の場合は営業、火曜が振替休日)

東急東横線代官山駅下車。八幡通りから旧山手通りに出る。国道246号線を目指して直進。パブティスト教会を越えてすぐの、レンガ造りのコロニアル風洋館。敷地の奥には、高級フレンチ『マダム・トキ』がある。