和ぺリティーヴォな文字
世界の一都市一週間を滞在して散歩する企画「セカイサンポ」の旅が来月から始まる。この連載の中でも何度か書いてきた“旅の散歩目線”をもって世界を何周かしてみることにしたのである。

和ぺリティーヴォな文字

そう決めてから、何故か日本語の文字表記が気になり始めた。

自宅を出て、しばらく歩くと一旦停止が義務付けられた標識が立てられた路面に「止まれ」の文字が書かれている。今まで何も思わなかったその文字を見ながら改めて日本語という文字の面白さを感じ始めたのだ。

そう言えば、「セカイサンポ」と何故、カタカナにしたのかと聞かれたことがある。「世界散歩」という漢字の方が、日本人の僕らからすれば、すぐにイメージがつきやすい。「せかいさんぽ」というひらがなだと「せかいいさん(世界遺産)」をもじって遊んでいるように見えなくもなくて面白い。

和ぺリティーヴォな文字

しかし、あえてカタカナの「セカイサンポ」という表記を選んだ。どこかサムライが海外に飛び出していくようなカッコよさが、このカタカナの文字にあるような気がしたのだ。旅する当の本人が、サムライとは、ほど遠く、バックパッカーのような男らしい旅でもなく、飛行機で移動し、ホテルに泊まる軟弱な旅人である。せめて文字だけでもサムライ気分にしたいという願いの表れだったのかもしれない。

そして、カタカナという文字は改めて見ると面白い文字である。少し前まで、カタカナのタイポグラフィは世界中で人気があったという話にも納得がいく。僕もカタカナの文字が書かれたデザインTシャツを旅先でよく見かけた。

和ぺリティーヴォな文字

一種類の文字しか持たない国からすると日本という漢字、かな、カタカナの表記を持つ日本語という文化は不思議に映るかもしれない。「セカイサンポ」の間、日本のことを知らない外国人と会うこともあるだろう。その際、日本ってどんな国かと聞かれたら、僕はこの三種類の文字を持つ国だよということから説明を始めたいと思う。1年になるのか、2年になるのかは分からないが、「セカイサンポ」を終えて、戻ってきたときに改めて東京の街に散らばる日本語の文字が僕の目にどう映るのかが今から楽しみである。と同時に少しはサムライのようにたくましくなって戻ってきたいものである。

イシコ

イシコ

1968年生まれ。ホワイトマン代表
大学卒業後、女性ファッション誌編集長、Webマガジン編集長を経て、期間限定のホワイトマンプロジェクトでは白塗りで様々なコンテンツを生み出す。現在は「セカイサンポ」と称し、文字通り世界を散歩中。散歩の達人の連載コラムなどコラムニストやブロガーとしても活躍している。

イシコのセカイサンポ
ホワイトマン公式Webサイト