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アメリカで生まれ、今や世界で最も普遍的ファッションアイテムとなったデニム。このデニムというアイテムに、新しい生命、新しい創造性を吹き込み、“次世代のスタンダードデニム”を作り出しているブランドがある。大阪生まれのチェルシーガーブだ。

CHELSEAGARB, チェルシーガーブ, デニムデザイナーは、大手アパレルでのデザイナーを経て、TV番組の衣装制作やブランドのプランニング・コンサルタントとして活躍した小松昇平さん。伝統工芸の染色職人を父に持ち、母の実家は大阪を代表する創業100年を迎える老舗テーラーという、クリエイティブな環境に育った。 「学校を卒業して最初に務めた大手アパレルで、良いものを見て、触れて、知りなさいと教わりました。その時に出会った良質な生地、確かな縫製技術などが、手触りや匂いの記憶となって、五感に残り、今に繋がっていますね」と話す。

(写真左)小さめのドラムと特殊な溶剤を使って繊細な色落ち感を出すオリジナル加工“バイオストーンウォッシュ”のセルビッチデニムパンツ インディゴ ¥28,000(写真右)クチュールテクニックにより女性の脚を美しく見せるパターンを実現、裾にたるみをもたせた金糸デニムのスキニー ¥30,450

2002年にブランドを立ち上げる際は、実績や資金が十分ではないために、“最高級”ばかりを追求していられない現実にも直面。そんなもどかしさの中でひらめいたのが、デニム素材を用いるという発想だ。 「“これだ!”と思いました。そのときは、毎日のように触れている素材なのに、なぜ今まで気付かなかったかという感じでしたね」 実は、デニムと出会った小学生時代に、ファッションに目覚めたという小松さん。 「母の実家であるテーラーがあったのが、大阪のアメリカ村だったんです。小学校の4年ごろ、サーフカルチャーや古着などそこはトレンドの最先端をいくものが揃っていましたが、最も衝撃的だったのがユーズドのリーバイス501との出会いでした」 デニムはいわば、彼にとってファッションの原点。自らのブランドが成功する鍵となったのがデニムだったということも偶然ではないのだろう。 「本当に魅力的な素材です。洗う前の表情はどれもそれほど変わりない既成の生地なのに、5分、10分、20分とウォッシュをかける時間、使う石、加工の仕方次第で自分にしかできないオリジナルの生地ができあがる。しかも、価格は手頃ですからね」

CHELSEAGARB, チェルシーガーブ, デニム無限の可能性を秘めた素材であるだけに、制作過程は一筋縄ではいかない。 「デニムは無限の可能性を秘めた素材。実は、デニムの加工は理科の実験っぽいんです。いろいろやってみたらこうなった、予想外の結果だったなど、発見も多いです」。 共に試行錯誤してくれるのは、世界有数のデニム加工技術を誇る岡山の職人たち。こだわりを持つ彼らとのやりとりは、染色職人の父との触れあいを思い出させる作業だ。

(写真左)チェルシーガーブのアーカイブより。ミリタリーをベースにイタリア製のムートンやシルバーフォックスのファーを使うなど、グラマラスなウエアも展開している

「デニムは、研究熱心な工場の技術力、開発力なしには生まれない。デザイナーはあくまでもスタートラインにいて、ミシンで縫う人、加工職人とともに作っていかなければ決して出来上がりませんから。たいていの服作りは、失敗は失敗でしかなく、ダメなものはボツになるだけ。でも、デニムなら、“思ったものはできなかったけれど、これは次に繋がる”ということばかり。実は、別の商品の前身と後ろ身を縫い合わせてしまったことがあるんです。すると、縫い合わせた後に同じ加工をかけても、繊維が違うので色の落ち方が違う。加工では決して出せない微妙なトーンが好評で、通称“うらおもてデニム”としてロングセラーとなりました」 使わなくなった作業服用のミシンを試しに使い、0番という太い糸を用いて太いステッチで縫い上げたものも人気だ。 そんな試行錯誤を惜しまないのは、デニムが作り手の想い次第でいかようにも変化する素材だと信じているから。「納得のいく服を完成させたときは、自分の想いがカタチになった喜びがひとしおなんです」

CHELSEAGARB, チェルシーガーブ, デニム基本は、体に馴染む服。昼夜問わずはくことのできる、様になるシルエットを心がけ、オートクチュールを経験したパタンナーの奥さんとともに後ろの腰部分までもミリ単位で調整。そのこだわりが自信となっている。「うちのデニムは、履き心地で勝負しています」 アメリカで生まれたデニムが、さまざまな文化と混ざり合いながら育ち、今や時間にも国境にも縛られない自由なアイテムへと成長したように、既存の枠にとらわれず、さまざまな経験、思い、そして文化を取り込んで、デニムの魅力を象徴するブランドを目指す。「より人の記憶を大切にしたものづくりをしていきたい。視覚だけでなく、肌触りや匂いも大切にしたいんです。五感を刺激する服作りが理想ですね」

(写真右)デザイナーの小松昇平さん

2007年には、チェルシーガーブの成功を受けて、イタリアの良質素材を積極的に用い、エレガンスを強調した「ガーブ」も始動させ、より自分の世界観を広げた。だが、そんな順調な成長の中でも、決して守りに入らないのが小松流の創造性。常に流行の先を目指す。 「新しいデニムの生地を作る“実験”には半年ほど時間がかかるんです。秋にはおどろきの新作を発表できる予定です」

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