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ニルヴァーナのカバー曲をひとつやってみよう、ということになった。話の流れで「日本語でやってみて!」とリクエストされたのだ。もちろん最初は、ええ〜! とびっくり。だけど、どの曲にするか思いつくのに全く時間はかからなかった。

頭のなかで鳴り始めたのが『オールアポロジーズ』。なぜだかはわからないけどこれしかない! とすぐに思った。

そしてレコーディングをしてるうちに曲を選んだ理由がよーくわかってきた。実はこれがニルヴァーナの中で唯一、完全メジャーコードの曲なんである。もう小学校の唱歌にしていいくらいのお日様のあたるようなあかるーい曲。歌詞のなかにも「In the Sun, In the Sun」と太陽がたくさんでてくる。

これをきっかけに、これまで女性アーティストによってカバーされたニルヴァーナの曲を聴いてみた。トリエモスやパティ・スミスによる『スメルズ・ライク・ティーン・スピリット』は憂鬱を浮き彫りにしていて美しかった。カバーっていうのは人の心のなかに入り込んで精神分析するような作業なのかもと改めて思った。オリジナルのほうも暗いけど、がさがさのシャウト声とか、ドラムの勢いとかがまるでお化けを追い払うようにふさぎこんだ気持ちと戦っている感じがする。

『オールアポロジーズ』はカートが死を予告した曲だといわれているらしいけど、私はぜんぜんそうは思わない。彼の曲のなかではいちばんポジティブで、あきらめ、ふてくされながらも、それでもこの日常を生きていく決心をしている曲だと感じる。僧の読経のように繰り返すギターのリフもなんだか達観している。結婚は墓場だとか、結局人間は一人ぼっちだとか、ネガティブな内容だけど、音楽はいたって太陽のほうを向いているのである。

ニルヴァーナ

などと、この曲を選んだ理由は後でだんだんわかってきたのだけれど、一番はたぶん、私は彼らの音楽を悲しいものと思いたくなかったから。だってお化けを追い払う音楽を作ってたバンドだよ? というわけで、私の『オールアポロジーズ』はおもいっきり楽しい曲にした。童心に返り、小学生用の縦笛まで吹いて、私なりにお化け払いしたつもりである。 (text / Momokomotion)

Nirvana『All Apologies』(アルバム『In Utero』より)

ニルヴァーナ

ニルヴァーナ
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ニルヴァーナ

モモコモーション/Momokomotion

サンフランシスコのアートスクールで遊んだ後、タイに住み始める。バンコク発のエレクトロ・パンクバンド、FUTONでボーカル、作曲を担当。2006年にバンドを辞めた後、Momokomotionとしてソロ活動、アルバム制作開始。現在タイ在住。2008年5月から帰国して10年ぶりの日本での活動をする予定。