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朝、起き抜けに洗面所の鏡に顔を映す。きゃ〜、どうしたの、私?! たるみきったこのお肌、目の下の真っ黒なクマ! 足りないのはビタミン? コラーゲン? それとも女性ホルモン?……とサプリの瓶が並ぶキッチン(グチャグチャに散らかっている)に飛んでいって気づいた。

「足りないのは、生活への愛だ!」

日々の暮らしを大切にしているかどうかはてきめんに顔に出る。暮らしを大切にするとは、季節に応じて生活にめりはりをつけること。 まめに身体を動かすことをいとわないこと。そして何よりも、淡々と流れていく生活をいとおしむこと。ある意味「つまんない」そんな平凡な暮らしが、実は女性たちを輝かせるのだ。

2003 年 5 月号から 2005 年 4 月号まで雑誌『ダ・ヴィンチ』に連載された「すてきなくらしのレシピ」をまとめたこの本には、 23 人の「生活の達人」が登場する。 いずれも生活に密着した仕事をし、それに関する本を出した人たちばかりだ。 料理、裁縫、園芸、活花、雑貨……活躍している分野がどこであっても、共通しているのは「日々の暮らしを大切にする」という姿勢である。

しかし好きなことを一生懸命やっていて、気づくと仕事になっていました、というような甘い話は出てこない。みんなプロだし、仕事が大好きだ。ある種の決意を持って、これで食べていこうとがんばっている人たちなのだとわかるインタビューである。

『つくるひと―そのくらし』

だが、どれだけ仕事に情熱を傾けていても、彼女たちは「生活を楽しむ」ことを忘れていない。自分や家族が心地よい時間を過ごすことを第一に考えている。彼女たちの写真を見れば、サプリやエステやジム通い以上に生活を楽しむことが肌にいいってことがわかる。さて、今夜は旬の竹の子で、竹の子ご飯を炊きましょうか。

(text / motoko jitukawa)

『つくるひと―そのくらし』  赤澤かおり/編 ダ・ヴィンチブックス ¥1,680(税込)