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古き良きスウィンギン・ロンドンを象徴する伝説の英国ブランド、BIBA。1964年にバーバラ・フラニッキと夫のステファン・フィッツ=サイモンによって設立されたこのブランドは、ふんわりとしたパフスリーブ、大きな襟のジャケットやブラウスを最初にファッションに取り入れたことでも、業界史に名を残している。

グラマラスでデカダン、ロマンティックでエレガントというBIBAに内在する独特の美意識が、一大ブームを巻き起こし世界を席巻したのは1960年代半ばから1970年代前半にかけてのこと。英国王室のアン王女からツイッギーに代表される当時のファッション・アイコンたち、そしてもちろんおしゃれ好きな一般の人々までをことごとく熱狂させた。1973年にはデパートだったビルを買取り、巨大なブティックをオープン。化粧品、インテリア小物、子供服、食料品に至るまで、トータルで揃うBIBAの殿堂に多くの人々が足を運んだ。だが1975年、巨大化しすぎたブランドは倒産。その後、そのドラマティックな短命さや、もはや手が届かなくなった世界への憧憬から、BIBAは伝説となっていった。

BIBA (TOP写真左):当時のスタイルをそのまま現代に蘇らせたようなBIBAらしいホワイトドレス。たっぷりとゴージャスなまでのパフスリーブと、衿、袖口にあしらわれたリボンが特徴。レトロにしてモダンな大人のエレガンスを目指す女性に。\\105,000 (税込) (写真左):ブルー×ホワイト×ブラックのレトロなプリントが目にも鮮やかなワンピース。良質のシルク素材は肌に吸い付くよう。フィット&フレアなシルエットは、チュニックとしても大活躍しそう。\\ 66,150(税込) (写真右):新生BIBAのコート。素材はうっとりするほどソフトな手触りのゴージャスなベルベット。Pコートのようなカジュアルなデザインなので日常使いにも。\\121,800(税込)

そして2006年。多くの人々にとって永遠の憧れでしかなかったBIBAの復活が、世界を騒然とさせている。その立役者はマイケル・ピアース。初のお目見えとなった先シーズンより、靴とバッグのデザインを担当しているのがトニー・カピエロ。今シーズンから登場する服やジュエリーはベラ・フロイトとフィオナ・ナップが担当している。新生BIBAを扱っている高島屋のバイヤー、福岡収さんは「一時代を築いたパワーがこのブランドの魅力」だと話す。地元イギリスで話題となっているのはもちろん、世界中のバイヤーたちが熱い視線を注いでいるのだという。すでにメディアで紹介された新作に予約注文が殺到中。「当時のBIBAを知らない人からの反響も大きい。クラシカルなスタイルが逆に新鮮なのでしょう」。

BIBA(写真左):ハイネックとボリュームのある袖が魅力的なブラックのミニ・ドレス。良質なウール素材が柔らかい。一枚でブーツと合わせても、パンツに重ね着しても、モダンでクラシカルなスタイルが完成。\\88,200 (税込) (写真中):絶大な支持を得た魅力的なロゴマークをモチーフにしたアクセサリー。このうねりのある模様は、ケルト民族の組みひもからヒントを得て、アールヌーボー調のBIBAの文字のそばにあしらわれた。ジョン・マッコネルにより1966年に誕生。 \\26,250 (税込) (写真右):スーツにも合わせたくなる美しいシルクのしなやかなブラウスは、売り切れ必至アイテムの筆頭。ミニスカートとあわせても、パンツ&ベストと合わせても、60年代のロンドン気分が堪能できそうな一枚。 \\55,650 (税込)

30年の歳月が流れてもなお、熱狂的に受け入れられたBIBA。だが、その熱狂は、ある人々の間では決して途切れたことはなかった。オリジナルのBIBAアイテムは、ヴィンテージ・コレクターたちの羨望の的であり、業界の華であり続けていたのだ。11年前の開店当時からBIBAの商品を扱ってきたヴィンテージ・ショップEMMAのオーナー木俣亜子さんも、BIBAをこよなく愛するファンの一人。「フォルムへのこだわり、ロマンティックな雰囲気、スモーキーでクラシカルなBIBAカラーと、全てのアイテムに一貫したスタイルがある」とその魅力を語る。復活した今年に入り、若い人の間でも認知度が高まり、人気が盛り上がりつつあるという。

「BIBAが広く知られるようになるのは嬉しい限り」と木俣さん。とはいえ、ブランドの創設者であるバーバラ・フラニッキとステファン・フィッツ=サイモンが一切関わっていない今回のBIBA復刻劇が、かつてのBIBAの精神をどのように受け継いでいるのかが、オリジナルのファンにとっては気になるところなのだとか。オリジナルBIBAと新生BIBA。あなたの目で、その魅力を見比べてみて。

photo / pawel jaszczuk text / june makiguchi

■お問い合わせ先:高島屋/スタイル&エディット Tel:03-6225-4680(高島屋東京店)
BIBAのwebサイトはこちら
本記事の参考文献


BIBA『BIBA スウィンギン・ロンドン 1965-1974』
長澤 均 著
¥2,500(税込)ブルース・インターアクションズ
BIBAの歴史と当時のストリート・ファッションを貴重な資料と多数の写真とともにを紐解いてくれる日本初のロンドン・ストリート・カルチャー史。BIBAに虜になった方だけでなく、この時代少しでも興味のある方にぜひお薦めしたい一冊。
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BIBAヴィンテージ・ショップ EMMA

60年代半ばから70年代のアイテムを中心に、オーナーのお眼鏡にかなったヴィンテージが所狭しと並ぶEMMA。ロンドンのファッション・カルチャーに魅了され、お店をオープンしたという11年前から、年2回の海外買い付けの際にこつこつと集められたBIBAの洋服、ハイヒール、ポスターそしてコスメなど(一部非売品も)は、貴重な資料として撮影協力の依頼も多い。