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時計を愛する者ならば、誰もが憧れるブランド、フランク・ミュラー。老舗メーカー、高級宝飾店らが凌ぎを削る業界で、ひときわ異彩を放つ存在だ。すでに確立されたステイタス、名声から考えると、ブランドの歴史は驚くほど若い。 1958年、時計産業で名高いスイスのラ・ショード・フォンに生まれたミュラー氏は、幼い頃から時計づくりに興味を示し、ジュネーブ時計学校在学中から、数々の賞を受賞するなど、才能を開花。卒業後は、希少な時計の修理などを行っていた。そんな彼が時計師としてその名を世界に知らしめたのは1983年のこと。

フランク・ミュラーそれまでポケットウォッチだけにしかなかった複雑機能を腕時計に搭載し、世界を驚かせたのだった。1992年には、自らの会社を設立。時計業界のカリスマとなった現在でも、ジュネーブ市街地にほど近い、wモンブランとレマン湖を臨む工房“FRANCK MULLER WATCHLAND”で、絶大な信頼を置く職人たちとともに、最高級の時計を静かに生み出し続けている。

そんな彼が世に送り出す全ての時計の裏蓋に刻まれているのは“Master of Complication”(複雑時計の名匠)という言葉。そこには、職人としての誇りが込められている。フランク・ミュラー若くして“時計の魔術師”の名をほしいままにしているフランク・ミュラー。彼の生み出す作品が多くの人を魅力する理由は、伝統的な技術を継承しながらも、独創的な時に対する解釈と類まれなる美意識を融合させているからだろう。1から12までの数字がランダムに配置されているクレイジー・アワーズや、大まかな時間しか示さないオフ用のシングル・ミステリーやダブル・ミステリー。時に対する既存の概念を覆す斬新な哲学が、腕時計という実用的なアートフォームに見事反映されている。

彼の哲学とそれを体現する革新的技術は、時という冷たい概念にロマンティシズムを与え、時計という無機的な機械に愛しさを生み出す。時間に縛られずに生きる楽しさや、人それぞれにかけがえのない時間があることを思い出させ、日々の生活にちょっとした遊び心を添えてくれるのである。

そんなフランク・ミュラーから発表された新作も魅力的だ。veritaのおすすめは、アールデコ調の優雅なデザイン、四角いフォルムが美しいマスタースクエア。そして、日本を意識したサクラとさくらんぼがキュートな最新作SAKURA。いずれも、斬新さと息をのむほどの美しさを湛えている。

いつも驚きと刺激に満ちているフランク・ミュラーの腕時計。いつかはきっと。そう思わせる作品が今年も、また。

text / jun makiguchi

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