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ブルーノート東京で毎年夏に開催している『Roots MUSIC Festival2006』はいつも楽しみですが、今年のライン・アップでとても嬉しいのはオル・ダラという大好きなミュージシャンがしばらくぶりに来日することです。



名前を初めて聞く方はアフリカの人かと思うでしょうが、彼はアメリカ人で、このちょっと珍しい芸名をアフリカの占い師にもらったと言います。オル・ダラと言うと、80年代にニューヨークの「ロフト・ジャズ」シーンでコルネット奏者として名前がよくクレジットされ、彼が参加するのはいつも少し尖った感じのカッコいいレコードばかりでした。しかし、80年代後半以降はその名前のクレジットを見かけることがほとんどなくなり、1998年にオル・ダラ名義のアルバムが 初めて発表された時は実に驚きました。

一つには、彼が既に57歳だったからです。常にライヴの仕事をこなしながらも、無理して自分を前面に押し出そうという考えはなかったのですが、ラッパーとして売れっ子だった彼の息子Nasの説得でついにアルバムを作りました。

オル・ダラ,ピーター・バラカン

その音もまた新鮮でした。かつての尖ったイメージがなく、ジャズの雰囲気はありますが、彼が育ったミシシッピー州のディープなブルーズ・フィーリングも濃く、若い頃の兵役義務で入隊していた海軍で世界を回った関係で、アフリカやカリブ海の音楽もとても自然体で取り入れています。サウンドは明るく、しなやかで、色っぽくて、自由です。コルネットはもちろん、オル・ダラが実は魅力溢れる歌手でもあったことが大発見でした。

今は65歳の彼はもっと遥かに若い感じで、クールでカッコいい都会のブルーズマンです。夏にぴったりの彼の音楽を7月 18〜22日、ブルーノート東京で是非味わってください。(ピーター・バラカン)

OLU DARA『In the World: From Natchez to New York』

オル・ダラ,ピーター・バラカン

ピーター・バラカン

1951年8月20日、ロンドン生まれ。
1973年ロンドン大学日本語学科卒業後、74年に来日し、シンコー・ミュージック国際部入社。
80年に退社後、執筆活動、ラジオ番組への出演などを開始する。88年からTBS-TV で「CBSドキュメント」の司会を担当。
『ロックの英詞を読む』(集英社インターナショナル)など著書を6冊出版。
また『Soul Fingers...And Funky Feet』など多くのコンピレーションCDの企画・編集など も行う。