サイレント・ポエツ
「最初から “太陽” をつけようと思っていた。 例えて言うならば、製作中ずっと暗闇みたいな状況に自分がいたから、そこから早く抜け出したい。 太陽の光を受けたいという気持ちが強かった。

 太陽っていうのは、誰にとっても同じで何万年もたっても変わらない絶対的な存在。  普遍的でいつの時代でも輝きを失わない音楽を作りたかった」

パリコレの音楽を手掛け、グラフィック・デザイナーとしても活躍しているSILENT POETSの下田法晴氏。前作から6年ぶりとなる待望のニューアルバム『SUN』をリリースすると聞き、11月のとある昼下がりに太陽の光が降り注ぐテラスで話を聞いてきました。翌日から香港に出かけるという多忙なスケジュールにもかかわらず、リラックスした様子で語ってくれました。

サイレント・ポエツ

〜追い込まれた状態から生まれたもの〜

4年という長い長い期間をかけて出来上がった新作。さて、できあがった感想を教えてください。 「とにかく長かったです。前のアルバムから6年、作ろうと思ってから4年経っていましたから。もし4年前に出していたらまた全然違ったものができただろうって感じですね。その間いろいろありましたが(苦笑)。まあ、その過程があったからこうなったんだなという感じです。でもあまりにも長い制作期間中に何度もアクシデントが続いたから、本当にリリースできるんだろうか?という不安が最後の最後までありました。ジャケットの最終チェックをした後に、「やっとみんなに届けられる!」って実感できて安心しました。」

『SUN』の印象として “音の引き締まり” と “オリエンタル” ということを感じました。制作中はどんな感じでした? 「追い込まれて、自分のこれしか出ないというところまで出し切ったから、そういう音になったんじゃないかと思う。何がキツかったって、制作がうまく進まないことが自分の力ではどうにもならないことが一番嫌だった(笑)。みんなに会うたびにいつ出る?って言われて。最後の方は人に会いたくない…みたいな状態だったときもありました。オリエンタルさっていうのは、「NEXT EPISODE」という曲で取り入れた琴かな?最初はそんなに入ってなかったんだけど、プロデューサーのアランのアイディアで多く入れたんです。現場にいたみんなが「オリエンタルだ!」ってすごく喜んだのを憶えています。これは今までになかったですね。」

本作中の数曲に入っている “子供の声”、そしてジャケットにも使われている子どもの顔写真。“子ども” というモチーフを使うことはどういう意味があるのでしょう? 「子どもを選ぶということについては…うーん、なんででしょう? 写真については、毎回何100枚もある候補の中から、いいなっていうやつを選んでいったら、なぜか子どもが入っている写真を選んでしまっていたんです。今回も時間が無い中、無意識にバーッと選んだらまた子どもだった…っていう感じ。子どもの声を曲に取り入れるのは、ギターやピアノの楽器を入れるのと同じ感覚で、この曲にはピアノが欲しいなと感じるように子供の声が欲しいなと感じたからです。」

サイレント・ポエツ

〜SILENT POETSのこれから〜

今後やりたいことのひとつに「サントラ制作」をあげた、根っからの映画好きの下田さんですが、好きな映画、一緒にやってみたい監督は? 「好きな映画は簡単に答えられないくらいたくさんあります。監督も同じです。とにかく映像から音を作るという作業は是非やってみたいことです。」

verita世代の女性について、一男性としてもっとこうしたらいいのでは?というアドバイスを。 「音楽や映画を、たくさん観て聴いて欲しい。流行っているからとかではなくて、自分がいいと思うものを自分なりに見つけてほしいと思います。きっとそこにいろんな発見やヒントがあると思います。 SILENT POETS の音楽は一般的にはまだまだマイナーかもしれないけど、なんとか辿りついてほしい。ぜひ聴いてみてください。」

さて今回のアルバム『SUN』、どういうシチュエーションで聴いてほしい? 「いや、もう聴いてもらえるだけでいいですね(笑)。シチュエーションというよりはむしろ感覚的な部分で、例えば僕が喜びや悲しみを込めた曲で聴く人が同じように喜びや悲しみを感じてくれたり、ある風景をイメージして作った曲で同じ様な風景を思い浮かべてくれたりとか、僕とリスナーが感覚的に共感できる部分がたくさんあればいいですね。」

サイレント・ポエツ

今までメディアへの露出もきわめて少なくまさに “沈黙の詩人” だった時代は終わり、第2章へと突入したSILENT POETS。ただそこには、太陽と同じようにずっと変わらない揺るぎ無い美学がありました。下田氏は「自分が苦しんだ分、いろんなところで優しくなれた。こんなに長い間待ってくれたのにもかかわらず「聴きたい」っていってくれる人がいてくれるのが本当に嬉しい。逆に最後はそれに助けられた気がします。待ってくれたファンの期待に応えるものを届けたい。」とメッセージをくれました。

東京、パリ、ロンドンの才能を集結させ世界へと放つ SILENT POETS の第2章! 2005.11.30 発売

Shimoda

下田法晴/ Michiharu Shimoda

1967 年生まれ。 SILENT POETS /サイレント・ポエツ、グラフィック・デザイナー
1991 年に美大で出会ったメンバーと SILENT POETS を結成。 今までに通算 6 枚のオリジナル・アルバムと 7 枚のリミックス・アルバムなどをリリースし、海外からも高い評価を受ける。現在は DJ Yellow を共同プロデューサーに迎えた次回作を制作中。
その他、 ISSEY MIYAKE のパリ・コレクションの音楽やUA のプロデュースや平井堅のリミックス、またグラフィック・デザイナーとしても活躍している。

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