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ぽってりと柔らかそうな円形から、にょっきりと伸びた筒状のものが三本。 「これは何?」と思わず興味を覚えてしまうそのフォルム。見る角度により豊かに表情を変える愛嬌の持ち主は、今にも動き出しそうだ。実はこれ、スピーカー。 薄くカットしたフィンランドバーチを幾重にも積み上げていくことで生まれたこの商品、これまでのもののように機械的な印象が全くない。それはまるで有機体。だからオーガニックスピーカー。

オーガニックスピーカー,フィンランドバーチ,南澤孝見,株式会社タグチデザイナーの南澤孝見氏と、確かな音響&木工技術を持つ株式会社タグチとの楽しい楽しいコラボレーション作品だ。「スピーカーは四角いものが多いけれど、なんで四角じゃなくちゃいけないの」という発想と、リスナーが聞く位置を自分で選ぶことで、音とともに変化するヴィジュアルも楽しんで欲しいとの願いから生まれた。「気を引くことがデザインの基本」と話す南澤さんは、東京芸術大学美術学部を卒業後、ミラノのドムスアカデミーでマスターコースを修了した注目のクリエイター。イタリアを代表する巨匠デザイナーが教鞭をとるドムスアカデミーでは、「新しいライフスタイルを提案していくのがデザイナーだという教えに、自分が目指していたものと同じだと強く共感した」と、いう。

オーガニックスピーカー,フィンランドバーチ,南澤孝見,株式会社タグチデザインはもちろん、コンセプトから商品を生み出すチャンスは、日本ではデザイナーになかなか与えられない。そんな中で、良き理解者であるタグチとの出会いは幸運だったと話す。そんな彼のインスピレーションの源は、意外にも本。直接、デザインに関係の無いものだが、小説や心理学、人類学の書籍から得た知識が、深層心理に蓄積され、あるとき豊かなひらめきとなって表れるのだ。そんな生い立ちのせいか、彼が生み出すデザインはどこか哲学的。そしていずれにも、共通する精神が貫かれている。それは、「買って来たものをポンと置いて終わりというより、使う人がどう使おうか考え、好きなように使ってくれるインタラクティブなものの方が楽しい」ということ。作り手が想像もしなかったような新しい楽しみ方を、オーナーが発見してくれるのも楽しみのひとつとか。「機能することで、作り手側である僕があらためて“これって凄い”と思うこともある(笑)」。

オーガニックスピーカー,フィンランドバーチ,南澤孝見,株式会社タグチ自由な発想が生み出すのは、プロダクトデザインにとどまらず、空間演出やイベント企画などと幅広い。年内に、原宿にオープン予定のベジタリアン向けレストランでは、コンセプトから内装、メニューに至るすべてに携わる。「物であろうと、空間であろうと、これまで交わらなかった人たちが、僕が作ったものをきっかけに交わってくる。それが喜び」 想像力を刺激する南澤さんの商品たち。まずは、オーガニックスピーカーでその魅力を確かめてみては。

CAFE LIBERTE (写真右) : CAFFデザインプロジェクトも手がける南澤氏。屋上ガーデンテラスがある原宿のCAFE LIBERTEもそのひとつ。 ここに置かれた家具や備品もデザインした。観葉植物が多く、街の喧騒から離れたいときにぜひ。

text / june makiguchi

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