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ワインの産地として知られるアメリカ、カルフォルニア州のナパ・ヴァレー。ここにワイン通を唸らせる粋なシャトー、ルビコン・エステートがある。持ち主の名は、フランシス・フォード・コッポラ。『ゴッドファーザー』シリーズ、『ワン・フロム・ザ・ハート』などで世界中にファンを持つ、いわずと知れた名映画監督である。 >かつてニーバム・エステートと呼ばれた歴史ある土地の一部を、コッポラが購入したのは1975年のこと。ちょうど、『ゴッドファーザー PART II』を発表した翌年だ。だからといって、本業での世界的成功のかたわらに、趣味としてワイン作りを始めたと思うのは間違いだ。

コッポラ,ワイン,ソフィアコッポラはもともと、風光明媚なこの土地を週末を過ごす場として購入。だが、そこはグスタフ・ニーバムという人物が、世界の偉大なワインと肩を並べるワイン造りを目指し、それに成功した場所。19世紀末より“イングルヌック”と称されてきたワイナリーは、ナパ・ヴァレー、そしてカルフォルニアワインの歴史に欠かせぬ伝説的な土地だったのだ。 カリフォルニアで最も古いワイナリーのひとつであり、カリフォルニアワインに大きな意味を持つ土地に住むという縁をひとつの運命として捉えたコッポラは、その歴史に敬意を払い、伝統を引き継ぐことを決意。ニーバム・コッポラ・エステートとして、伝説のワイナリーを再び蘇らせたのだった。2002年には全ての畑が有機栽培の承認を受け(CCOF)、2006年には、ワイナリーをルビコン・エステートと改名。「ルビコン川を渡る」という運命をかけて、後には引き返せない重大な決断と行動を意味する言葉を名前に選んだあたりにも、ワイン造りにかける意気込みが感じられる。実際に彼は、カルフォルニアワインを代表する逸品を次々に世に送り出してきた。

グスタフがボルドーから持ち込んだクローン29のカベルネを中心にナパ・ラザフォードの最高級ワインを目指して造られた「ルビコン」。ワイナリーの輝かしい歴史とワイン造りの伝統を表現し、カベルネ100%をアメリカン・オークのパンチョン樽で熟成するという昔ながらの製法にこだわった「カスク・カベルネ」。これは、ラベルもオーク材でできており、一枚一枚手張りというこだわりようだ。

コッポラ,ワイン,ソフィアさらに、コッポラのワイン造りには、ファミリーの伝統も息づく。彼の祖父アゴスティーノは、ニューヨークの家の地下で自家製のワインを造っており、家族で日常用のテーブルワインを楽しんでいたという。2006年にはソノマ・カウンティに新しいワイナリーを購入。ロッソ&ビアンコと名づけられたそのワイナリーで造られるのは、比較的手頃な日常的ワインばかり。ここで造られているコッポラお気に入りのテーブルワイン、ロッソとビアンコ ピノ・グリージョは、かつて家族で飲んでいたアゴスティーノのワインのような存在なのだという。

そんなコッポラ監督の家族愛から生まれた象徴的存在のワインが、愛娘ソフィア・コッポラに贈られた2種のワインだろう。ソフィアの結婚祝いとして造れただけに、味、パッケージに至るまで徹底的に彼女好みだ。

ブラン・ド・ブラン フランシス・コッポラ ソフィア  最愛の娘への深い愛情を具現化したかのような、見目麗しく美味しいワイン。彼が考える娘を形容する言葉が並んだラベル、パッケージにもご注目。 価格¥3,654(税込) 購入はこちら

「ソフィア ブラン・ド・ブラン」は、ピノ・ブラン、ソーヴィニョン・ブラン、マスカットと白いブドウだけで作られたスパークリング・ワイン。アルコール度低めで軽やか、フルーティな味わいの、夏にもぴったりのスパークリング。口に含む前から、マスカットの瑞々しい香りが鼻をくすぐる。舌に乗せるとさらにアプリコット、みかん、洋ナシ、メロン、レモンなどの爽やかな香りがふわりと広がる。フレッシュな味と口当たりは、アペリティフにも、ランチにもぴったり。ソフィアの望みに応えて甘すぎないでないので、料理にもぴったりだ。ソフィアの好むピンク色を取り入れたパッケージも、思わず手に取りたくなる可愛さだ。

コッポラ,ワイン,ソフィア「ソフィア ロゼ モントレー・カウンティ」は、きりっと辛口のロゼワイン。摘みたてのイチゴ、バラの花びらのような華やかな香り、ピンク色にもこだわった、気持ちを盛り上げてくれる1本だ。

妥協を許さず、頑ななまでに理想を貫くことでも知られるコッポラの映画作り。多くのスタッフを率い、ひとつの作品を成功に導くという映画監督としての本領をワイナリー・オーナーとしても存分に発揮。ワインにも、映画作りと同様の情熱を注ぎ込んでいることがおわかりだろう。今や、ワイナリーはコッポラにとってのもうひとつの真剣勝負の“現場”なのだ。味はもちろん、色、香り、ボトルやラベルのデザインに至るまで、コッポラのものづくり精神が総合芸術さながらに味わえるワインたち。まずは、この季節に良く似合うソフィアから試してみては。

ロゼ  フランシス・コッポラ ソフィア  女性らしいたおやかなラインを持つボトルが印象的。味はもちろん、香り、色、デザインにも父親としての愛情と、アーティストとしてのこだわりが凝縮。 価格¥3,444(税込)

text / june makiguchi