クローサー
『クローサー』は4人の男女の出会いと別れを描いた作品だ。そこにはアリスとアンナという二人の女が登場するのだが、アンナに近づく二人の男は「君は大人の女性だけど、アリスは子供だ」と連発する。演じているのがジュリア・ロバーツとナタリー・ポートマンなので外見的なことのように思えるが、そればかりではない。

「女」にあって「子供」にないもの、それは“憂鬱” である。

そもそも子供は、誰がどう見ても白は白だし黒は黒でしょという明確な二元論で生き、自分の欲望のために簡単に悪になれる強さがある。これに対して大人は、白に見えるけど見ようによってはグレイかもとか、欲望のままに生きて後ろ指さされるのはちょっととか、自分が傷つくのは怖いとか、曖昧でプライオリティもはっきりしない。大恋愛の2年後の泥沼離婚なんてものも時には見てるので、どうせ色褪せる恋のために世界を敵に回すのか?なんて現実的な計算も働いてしまう。 世の中を知れば知るほどいろんな事を考えすぎ、手も足も出ずモンモンとする――これが“憂鬱”の思考回路で、ほぼ大人の女の生活習慣病と言っていい。

クローサー

だが実はこれを克服するための簡単な方法がある。 それは“憂鬱”の思考回路を一回りした最後に「でも私ってこういう“憂鬱”が大好き」と口に出してみることである。その瞬間に“憂鬱な自分”を“見つめる自分”が誕生する。 バカバカしくなり憂鬱から抜け出せればハッピーだが、やだホントその通りと自覚してもそれはそれでハッピーだと私は思う。“憂鬱”が大人の女の生活習慣病なら、“自覚”は大人の女の専売特許なんだから。

幸せと不幸の急転直下から逃げ出して、無自覚にヌルい不幸を選ぶアンナのような生き方は、いくら「大人の女」なんて持ち上げられたって私はまっぴらである。 (text / Shiho Atsumi)

クローサー

『クローサー』

製作・監督:マイク・ニコルズ
出演:ジュリア・ロバーツ、ジュード・ロウ、ナタリー・ポートマン、クライヴ・オーウェンほか
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
劇場情報:5月21日より丸の内プラゼールほか全国松竹・東急系にてロードショー