サイドウェイ
ワインには詳しくないが、ワインがテーマの『サイドウェイ』を愉快に見た。主人公はカリフォルニアのワイナリー巡りをする二人のオヤジ。片方は人好きしない寂しがりの小説家志望で、もう一方は女なら手当たり次第の能天気な俳優崩れ。

映画ではこのキャラクターをワインの二大品種ピノとカベルネになぞらえている。繊細で育てるのが難しいが、上手くいけば複雑で味わい深いワインになるピノと、どんなところでもしぶとく育ち、分かりやすく華やかなワインになるカベルネ。小説家はピノの魅力をとうとうと語り、彼がけちょんけちょんにケナすカベルネを俳優崩れはガブガブ飲む。趣味嗜好って案外その人の本質があらわれるものなのだ。

私の場合、ワインじゃちょっと無理だが、初対面の映画好きに尋ねるのは「ヌーヴェルバーグなら、ゴダール派?トリュフォー派?」である。 私は断然トリュフォー派。笑いのバカバカしさと恋愛の情念の濃さ、ドラマを描こうとするマジメさ、映画を見ただけでそのダメ人間ぶりがバレバレになる正直さ……どれもこれもすごーく人間的だ。

サイドウェイ

一方ゴダールはなんかカッコいい。そもそも名前がカッコ良くてハッタリが効く。この説明できないカッコよさが、ゴダール派の胡散臭さに繋がっている。 意味不明な映画をケナせば、「まあ感覚の問題だから」の一言で他人の上に立つ。「ゴダール」は説明する努力を放棄している or 本当は分かってない“エセ感覚派”に、エクスキューズを与える「魔法の呪文」のような気がする。 どこがきなのか分かるように説明せえ。私にゴダールの良さを教えて。

ただ最も付き合いやすいのは「ヌーベルバーグ?それって食い物?」ぐらいの人ではあるが。(text / Shiho Atsumi)

サイドウェイ

『サイドウェイ』

監督:アレクサンダー・ペイン
出演:ポール・ジアマッティ、トーマス・へイデン・チャーチほか
配給:20世紀FOX映画
劇場情報:3月5日よりVIRGIN TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国にてロードショー!
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