手
雑誌を創っていた頃の女性編集者達と何年かに一度、同窓会のようにして飲むことがある。当時、20代前半だった彼女達も30歳を超えた。「石原さん(僕の本名)が40歳超えたら、当たり前でしょ? 相変わらず失礼だよね!」

デリカシーのない僕は年齢のことを言っていつも怒られる。

(上写真)黒人が鮮やかな野菜や果物をつかむ瞬間が好きです。(ブルキナファソ)

手 未だ彼女達には素敵な男性が現れず、婚活に勤しんでいるようである。会う度に
「誰か紹介してよ〜」
と言う。昔はその言葉もかわいらしかったが、最近はだんだん声にドスが効いて怖くなってきた。
以前は顔がカッコよくなくちゃダメだの、料理ができる人じゃなきゃダメだの男性の条件がうるさかった。挙句には毎年、浴衣を着て花火に行ってくれる人じゃなきゃダメなどと言った。それって条件なのかなぁとつぶやくと「そうなの!」と一喝された。

それが、この数年で彼女達の条件の数がどんどん減ってきた。それでも手がきれいな人という条件だけは、はずせないらしい。そう言われ続けたせいか黒人の手の美しさや像の手の美しさなど、旅先でも「手」に目が行くようになった。手のつなぎ方に文化もあることを知った。

(写真 align="left")言葉がわからなくても「お金ちょうだい」の手のポーズは世界共通なんですよね。(インド)

例えば韓国に行くと仲のいい女性同士が手をつないで歩く姿を見かけることがある。インドやネパールのように男性同士が手をつないで歩いている場合もある。最初、ヒンズー教は同性愛に関して緩やかだと聞いたこともあったのでゲイカップルが多いのだろうと思っていた。しかし、そうではなく、彼らは仲がよくなった友達の証として手をつなぐことを知って驚かされた。インド駐在の知人がインド人と仲良くなって手を握られたとき、咄嗟に手を放して相手に悲しい顔をされたという話も聞いた。

手そろそろ彼女達とまた飲む時期である。どこかに手のきれない人はいないだろうか。そう言えば彼女達は手を語る際、爪に関してもうるさく注文をつけた。僕の爪を見て、
「ギリギリだね。これ以上、爪が伸びている人はアウトだよ! 帰ったら切った方がいいよ」
と言った。しかし、僕はその日、爪を切ったばかりだった。もちろん、その場では言えなかったけど。どこかに深爪の男性がいたら紹介してください。

(右写真)働く手というのは美しいものです。影絵になる羊の皮にノミを入れていくところ。(マレーシア)
イシコ

イシコ

1968年生まれ。ホワイトマン代表
大学卒業後、女性ファッション誌編集長、Webマガジン編集長を経て、期間限定のホワイトマンプロジェクトでは白塗りで様々なコンテンツを生み出す。現在は「セカイサンポ」と称し、文字通り世界を散歩中。散歩の達人の連載コラムなどコラムニストやブロガーとしても活躍している。

イシコのセカイサンポ
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