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歴史と伝統を持つブランドにとって、移り行く時代といかに共存していくかということは、ひとつの大きな課題であり、挑戦でもあるだろう。ひとつの成功例を思い浮かべたとき、その筆頭に挙げられるのがバーバリーだ。英国の老舗ブランドとして、自分たちの原点を大切にしながらも、先進的な現代性をも味方につけてしまう。 特に、1997年にコレクションラインの「バーバリー プローサム(BURBERRY PROSUM)」を発表してからは新生バーバリーを強く印象付けており、クリストファー・ベイリーを迎えてからの躍進ぶりには、さらに目を見張るものがある。

BURBERRY PROSUM,バーバリー・プローサム,クリストファー・ベイリー,トレンチコート英国を代表するブランド、バーバリーが産声をあげたのは1856年のこと。生地屋の見習い職人だった21歳のトーマス・バーバリーが、英国ニューハンプシャー州ベイジングストークに小さな紳士用洋品店を開いたのが始まりだ。スキー、乗馬、釣り、狩猟に最適なアウターウエアの品揃えが多いこと、機能性が高い服が多いことなどから、店には男女問わず熱心な顧客が集まるようになり、1870年には“大商店”に成長。その20年後には、ロンドンのウエストエンドに店をオープンするまでになった。1895年になると、トレンチコートの前身である「タイロッケン」を発表。エジプト綿をきめ細かく織り上げ、防水にして丈夫、オールシーズン着用可能な高機能生地「ギャバジン」をすでに開発していたトーマスは、この素材をタイロッケンに使用。これを着用したノルウェーの探検家ロアルド・アムンゼンが史上初の南極点到達を成功させたことで、ブランドの名が世界に知られるようになった。1914年になると、英国陸軍省に依頼され、新しい戦闘スタイルに対応する将校向けの外套で、後にブランドのアイコン的アイテムとなる「トレンチコート」を発表。1920年代になると、トレンチコートの裏地にバーバリー・チェックが採用されるように。1964年の東京オリンピックの際、英国代表の女子選手たちが飛行機から降り立つときに、畳んで腕にかけていたコートからチラチラと見え隠れしたチェックの裏地が話題となり、さらに世界に浸透。ジェンダーレスかつ、ボーダーレスなファッションアイテムとしての地位を確立していった。

(左写真)クリストファー・ベイリー。昨年の12月には、バーバリーのチーフ・クリエイティブ・オフィサーとして大英帝国勲章を授与された。

以後、時代の流れを読み取りながら、進化し続けてきたバーバリー。そんなブランドの奥深さと柔軟性、英国の伝統とエレガンスをひときわ強く感じさせているのが、1997年に誕生したコレクションライン、バーバリー プローサムだ。プローサムとは、“前進”という意味を持つラテン語。1901年からレーベルデザインとして使用されている騎士が掲げる旗に記されており、常に進化し続けるブランドを象徴する言葉といえるだろう。

BURBERRY PROSUM,バーバリー・プローサム,クリストファー・ベイリー,トレンチコートそんなプローサムのクリエイティブ・ディレクターとして、2002年に迎えられたのがクリストファー・ベイリーだった。彼の大胆な創造性が、歴史と伝統、先進性を併せ持つブランドに、さらなる魅力を添えたのだ。2009年からはチーフ・クリエイティブ・オフィサーとして手腕をふるうクリストファーは、現在、全ライン、広告、コレクション、コミュニケーション戦略など、すべてのクリエーションを統括している。

(右写真)2010年秋冬のバーバリー プローサム・ウィメンズは、ロンドンで行われたコレクションの模様が東京、パリ、ニューヨーク、ドバイへと3Dによりライブ配信され、ファッション関係者のみならず、デジタル業界の関係者からも注目を集めた。

「バーバリーは過去を消すことなく、大きな飛躍を果たしてきました。今日、私たちは、その歴史、理念、そして英国的な特徴を基盤に、新しいタイプの現代性を表現しています」とクリストファー。彼の心意気は、デジタル技術を積極的に使うことでもよくわかる。2010FWウィメンズコレクションは、ロンドンでのショーの模様を、東京、パリ、ニューヨーク、ドバイの4都市同時に、3D映像により臨場感溢れるライブで生中継を実施。公式サイトではショー直後から3日間限定で厳選アイテムを特別販売するという試みも好評だった。また、時代とともにバリエーションを増やしながら、愛用者をも増やし続けているトレンチコートについては、この伝統的なアウターと人々とのエモーショナルな結びつきを深めるために、ポートレイトの投稿、コメントの書き込みなどができる「ARTOFTHETRENCH.COM」をWeb上に開設。ブランドからの一方通行な情報提供、提案ばかりでなく、消費者と双方向のコミュニケーションを行うことで、よりブランドとしての存在意義を深めていこうという姿勢の表れでもある。

また、アウターとチェック柄という原点を忘れず、それらを進化させることはあっても、決して無くしはしないというデザインに関する意識は、商品ラインナップ、コレクションに反映されている。特にそれを感じさせたのが、バーバリー プローサムの2010年春夏コレクションだ。原点回帰をテーマに、トレンチコート、英国ベースというブランドの特徴を意識したコレクションとなり、全ルックがトレンチコートから発想されたものとなっている。引き続き秋冬のコレクションでも、ミリタリーテイストを基調に、トレンチ、アビエイター・ブルゾンなどを使って伝統とモダンを表現して、伝統への敬意と、その新しい解釈に注目が集まった。

BURBERRY PROSUM,バーバリー・プローサム,クリストファー・ベイリー,トレンチコートさらに、紳士・淑女の国のブランドらしく、次世代の育成にも積極的だ。バーバリー・ファンデーションを通して、若者たちの夢実現を応援。クリストファー自身、無名のアーティストをコレクションの音楽や広告ビジュアルに起用するなど、若き才能の発掘にも定評がある。そんなブランドの姿勢には、若くして自らの夢を実現した創設者の精神が大いに関係しているのかもしれない。 店を開いた頃の若きトーマスは、野心的な青年で、自分を単なる衣服の提供者だとは考えていなかったという。自らを「衣服の改革者」と呼び、常に自分がデザインした衣類の着心地や機能性を改善していくことに心を砕いた。この精神こそ、150年以上にもわたり、決して立ち止まることのなかったバーバリーのブランド精神そのもの。ファッションと機能、その両方で革新を追及する精神こそ、バーバリーを、時を超える憧れのブランドとして、その地位を不動のものとしている理由なのだろう。

(左写真)バーバリーのトレンチコートと、人々との結びつきにフォーカスしたデジタルプラットフォーム「ARTOFTHETRENCH.COM」。著名なアーティストとのコラボによるイメージほか、一般からの投稿写真も掲載。お気に入りのマーキング、コメント書き込み、SNS機能も充実。

text / june makiguchi

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