ルシアン・フロイド,Lucian Freud,ポンピドゥー・センター,英国の画家,Large Interior, Notting Hill
「Large Interior, Notting Hill」1998 Photo John Riddy ©Lucian Freud今年88歳を迎える英国の画家ルシアン・フロイドの個展が、パリのポンピドゥーセンターで開催されている。

1987年以来のフランスでの大展示会となり、150点ほどの作品が4つのテーマのもとに集結された。

60年代に家族や友人など身近な人々の裸体を描いたシリーズ、アトリエから見下ろす庭園や都市風景を写実的に表現した静物、現代の絵画が伝統と歴史の中でどのような位置づけにあるのか提起する姿勢もうかがえる。さらに、90年代以降の裸体像では、お気に入りのモデル、故Leigh Bowery(リー・バウリ―)とSue Tilley(スー・ティレー)が寝転んだり、ポーズを組んでいる。等身大以上の裸体のスケールに囲まれる空間では、生々しさを肌で感じる。

「Large Interior, Notting Hill」(写真)の構図は、遠近法も不可思議だ。乳飲み子を抱いているのは母親ではなく、裸体の男性。そして、手前にはソファーで読書をする男性。2人の大人と乳飲み子と犬という生命が、所詮同居できないような状況で、無理矢理にも存在させられる。 この何とも言えない劇的なシチュエーションは、ルシアン・フロイドの独創的な観察から誕生する。自分自身や自身の生活環境に集中し、モデルと相対した実験的かつ演出された瞬間を感じる。

■Lucian Freud L‘Atelier 展 ポンピドゥー・センター 会期:開催中〜2010年7月19日

(取材・文 Kaoru URATA)