根来秀行,アンチエイジング,ハーバード
現代日本の食生活の+と−細胞の元になっている食事。現代の日本の食生活で気がかりなことは?「ファストフード、コンビニのお弁当を取り入れる機会が増えていることですね。便利ですし完全には否定しませんが、加工された食品の比率を増やすと、酸化したものを多く摂ることに繋がります。

そういうものほど、品質も保持しやすい。品質保持しやすくしてある物とは、壊れやすい栄養素を始めから壊してある、つまり栄養は取り払っていてカロリー部分だけが残っている状態なんです。栄養素が壊れると、ものは腐ります。そもそも、壊れやすい栄養素を、壊れる前にいかに新鮮な状態で摂り入れるかというのも食の重要なポイント。加工食品では、不足しがちな必要なビタミン、ミネラルも摂りづらくなり、栄養のバランスが負の方向に偏りやすくなるんですね」

欧米化し、乱れがちな現代日本の食生活。それでも根来先生は、日本とアメリカの食生活には大きな違いを感じているという。 「日本の食生活が乱れがちとはいえ、やはり健康な和食のベースがある。アメリカのマクガバン報告というものに、元禄時代の日本の粗食が最も理想的だという記述がありますが、日本では現代でもそういった食文化を家庭料理などで継承していたりします。ところが、アメリカは昔からそういう食文化がありません。格差社会でもありますから、豊かな人は新鮮なものを食べられるけれど、貧しい人は手軽で安く、腹持ちの良い加工食品ばかり食べていたりします。ですから、体型も明らかに違いますね。生活スタイルの違いが影響してしまうんです。日本の方、特に若い人々のなかにもファストフードばかりという方が増えていますから、その方々が歳を経てきた頃、長寿国家日本はどうなっているか気になりますね」 偏った食生活のせいで、アメリカの方が食への意識がむしろ高くなり、研究も進んでいるのだろうか。カロリーリストリクションのような新しい食事法もアメリカから入ってきたものだ。 「日本の健康的な食事は、研究してそうなったものではなく、歴史的、地理的背景があって文化として根付いたというだけ。そういう文化がないぶん、アメリカは科学で補っているんです。良いものを取り入れたり、食に関してのマイナスの歴史を科学的に考えたりすることは得意。ですから、アメリカ発のメソッドがどんどん出てきています」

いかに質の高いサプリを選べるか?

そういった社会背景の中で、登場したもののひとつがサプリメントだ。 「自分たちの食事には足りないものがあるということが科学的に実証されてきた結果、それをどう補うかという発想から生まれたのがサプリメント。先日、アメリカでも医療保険改革法案が可決され、国民皆保険制度導入されることになりましたが、これまでは莫大な医療費を避けるため、いかに病気にならないようにするかという予防医学的発想もとても進んできました。サプリを摂ることが直接的に病気を防ぐことになるとは言えませんが、何か自分でできることをやろうという意識は一般的に高い。そういう中で、サプリを摂るということが当たり前になってきたんですね。あくまでも、名前にもある通り“補う”という発想でスタートしているものなんです。日本で心配なのは、アメリカで科学的に実証されたものだからと言って、全幅の信頼を置き、サプリメント中心の生活をするようになる人がいるということです。あくまでも、基本的な栄養素は食事で摂り、いかに不足したものを補うかというところではじめて出てくるものがサプリメントです」

昔の野菜と今の野菜を比べると、今の野菜が含有する栄養素は非常に低くなっているとか。 「土が痩せてきていて、50年前に比べると栄養素、ビタミン、ミネラル分が大幅に減少しています。50年前と比べると、10分の1になったものもあると聞きます。単純に食事からといっても、補いにくくなっているのは事実。そもそも推奨されている量をとる機会が減っていますし、野菜自体に含まれる栄養素も減ってきている。それならば、実際に効果が実証されているサプリメントでビタミン、ミネラルを補うというスタンスを持っても良いのではないかと思いますね」

他に現代人に不足しがちなもので、積極的に補ったほうが良い栄養素は? 「運動するなら、タンパク質も必要です。筋肉をつけるときに不足しがちですので。動物性タンパク質がマイナス要因になると考えるなら、豆類や海草など植物性のものや魚から摂る。一緒にビタミン、ミネラルも一緒にとることが可能です。そうして筋トレをすると筋肉がつき、基礎代謝が上がり、自然にカロリーを消費しやすくなる身体になります。抗酸化物質も積極的にとるといいですね。ビタミンB,Cなどです。エネルギーを創るとき、運動など何かを積極的に行うとき、身体は酸化します。これが老化の原因のひとつとされるフリーラジカルです。ですから、いかに酸化物質を出ないようにし、排除していくかが大切。抗酸化物質を摂ることが若さを保つことにも繋がるんです。食品なら、野菜、果物、ポリフェノールなどに高い抗酸化作用が含まれています」

根来秀行,アンチエイジング,ハーバード

食事で摂り切れない栄養を補うものだとすると、サプリメントは食事同様、質も重要になってくる。安全な食材を求める意識は年々高くなっているが、サプリはまだそこまで意識されていないようだ。 「最近では、日本でも馴染んできて、需要も高まっているサプリですが、有効成分が十分入っているのか、品質はどうなのかなどを考えたところ、実際に問題があるものも出てきています。それに対する規制も十分ではありません。そうなると、『身体革命』にも書きましたが、消費者側でいかに質の高いサプリを選べるかどうかが重要になってきます。良いものを届けようとしているかどうか、製造会社のスタンスも知る必要もあります。栄養素を錠剤にする際に有害物質を使う会社もあるし、品質保持に問題がある会社もある。使っている材料が天然由来なのか人工的なものなのかなど、見極める大事ないろいろポイントがあるので、それを知って、ぜひ有効で質の高いものを取り入れていってください」

食と健康、食とアンチエイジング。体内に取り入れる栄養素の重要性と、アンチエイジングとの関連について、最先端の研究結果に基づいたお話をしてくださった根来先生。“読むアンチエイジング・サプリメント”『身体革命 世界最先端のアンチエイジングの法則』をバイブルに、ぜひライフスタイル改革に取り組んでみては。

(text / june makiguchi, photo / toru hiraiwa)

根来秀行,アンチエイジング,ハーバード

食からのアンチエイジングについてより理解を深めるには

世界最先端のアンチエイジングと健康の法則をわかりやすく解説した“読むアンチエイジング・サプリメント”。食から、睡眠、運動など今すぐにでも実践できる、若さを保つための充実した内容が懇切丁寧に紹介されている。
数多の健康情報が巷にあふれているけれど、ハーバード大学での研究に裏打ちされた本書の方法なら信頼性も高い。意識、そして身体が変わっていくのを楽しんで。

『身体革命』(角川SSコミュニケーションズ)
根来秀行(著)