honmamain
撮影:ホンマタカシ


FASHION-modeにて不定期連載中の「journal by林央子」。前回掲載の『水戸芸術館「拡張するファッション」展で行われたパスカル・ガテンのワークショップ報告』に引き続き、林央子の著作『拡張するファション』(スペースシャワーネットワーク)を元に企画された「拡張するファッション」展が巡回中 (会期:6月14日~9月23日)の四国・香川県 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で、展示や作家との交流から林央子が捉えた“新たな視点”を数回にわたって紹介していく。

pugmentint2
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館はNYのMoMA新館をはじめとして著名な美術館建築を手がけてきた建築家、谷口吉生の設計によるものだ。3階の主展示室に至るまでにも様々に変化する空間。ここに巡回したことによって、参加作家たちものびのびと、水戸美術館に続く2度目の展示に新しさを添えた。
今回の記事では、そのなかでも写真家・ホンマタカシさんの展示について、その「拡張」ぶりを考察し、レポートしたいと思う。
honma
撮影:ホンマタカシ

3階の主展示室の長い壁をつかって「Almost Grown -fashion as documentary 1991-2014」を展示したホンマタカシさん。1990年代にホンマさんが撮影した、時代の風景としてのファッション写真を中心に据えながら、影響を受けた過去の写真集(ジョセフ・サボ「Almost Grown」 1978年刊)から今年の春に撮影したPUGMENT(=パグメント)という新人ユニットの等身大ポートレートまで、年代を示しながらの時系列での展示となった。
honma_sub2
撮影:ホンマタカシ

PUGMENTという名前は多くの人にとって耳慣れない名前のはず。彼らは1990年生まれのカップルが結成したユニットだ。2014年4月に NO.12 GALLERY で初めての展示会を行ったばかり。なぜPUGMENTは、今回ホンマさんの展示の最後に、等身大のポートレートとして登場することになったのだろうか?

彼らの存在を、共通の知人を介して耳にしていたというホンマさんだが、NO.12 GALLERYでの展示会を訪ね、作品を見て気に入ったことから、その場ですぐに二人を撮影したという。「『ちょっとそこで服着てみて』と言われて着ていたら、その途中で『あ、そこでちょっと止まって』と言われて(笑)。とても素早い撮影でした」、と彼らは、撮影体験を振り返る。

振り返って考えてみると「拡張するファッション」展におけるホンマさんの展示が示したのはこんなことだったのではないか。「90年代という時代の風景のなかの一つに“女の子たち”が存在していた。彼女たちが、日本人らしい体型の身体にぴったり沿うサイズのTシャツを着て、街に立っている風景そのものが新鮮だった。そんな装いの子たちであふれた街も、エキサイティングな感じにあふれていた。この時代に突出していたのは、こうした女の子たちの感性だったのだ」。そんな思いが私個人の記憶から呼び覚まされた気がしたのだが、展示を見た他の人との対話を振り返ってみても、そんな感慨を抱いた人は少なくないようだった。
pugment_sub
撮影:ホンマタカシ

今回、丸亀への巡回とともに再構成されたホンマさんの展示のなかで、PUGMENTの二人の写真が最後に来た意味を再考してみれば、「その時代の風景のなかの、服とファッション」というホンマさんの展示の意図が、より象徴的にくっきりと浮かび上がってくるのではないか。ホンマさんはPUGMENTの中にある種の“現代性”や“時代の空気”をも、見出だしたのだろう。それが一体どんなものなのかを探るべく、私はPUGMENTの二人の服づくりや、その活動に至る経緯を聞いてみることにした。

(text / nakako hayashi
※写真はすべて丸亀市猪熊弦一郎現代美術館での展示風景


>>(2)PUGMENT インタビューへ続く。




拡張するファッション
期間:2014年6月14日(土)~2014年9月23日(火・祝)10時~18時(入館は17時30分まで)
会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(香川県丸亀市浜町80-1)
URL:本展詳細はこちら

1988年、ICU卒業後資生堂に入社。宣伝部花椿編集室(後に企業文化部)に所属し、『花椿』誌の編集に13年間携わる。2001年よりフリーランスとして国内外の雑誌に寄稿、2002年にインディペンデント出版のプロジェクト『here and there』(AD・服部一成)を立ち上げ、2014年までに11冊を刊行。著書に『パリ・コレクション・インディヴィジュアルズ』『同2』、編著に『ベイビー・ジェネレーション』(すべてリトルモア)、共著に『わたしを変える”アートとファッション” クリエイティブの課外授業』(PARCO出版)。展覧会の原案となった著書『拡張するファッション』(スペースシャワーネットワーク)に続いて2014年には、展覧会の空気や作家と林央子の対話を伝える公式図録『拡張するファッション ドキュメント』(DU BOOKS)が発売された。

contents

水戸芸術館「拡張するファッション」展で行われたパスカル・ガテンのワークショップ報告 journal by林央子

丸亀市猪熊弦一郎現代美術館「拡張するファッション」展 ホンマタカシとPUGMENT