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ここ数年、京都には続々とホテルがオープンしている。12月7日には、「日本の伝統美を意識しながら新しいホスピタリティの形を提案する、“装い”を愉しむホテル」を標榜し、京都市中京区に「MOGANA(モガナ)」が開業する。

どこのホテルチェーンにも属さない、個人資本のホテルだ。いったいどんなホテルになるのだろうか。 機会を得てほかのどこにも似ていない「MOGANA」を、開業前にのぞき見させてもらうことができたので、その様子を紹介したい。一言で言えば、予想を遥かに超える「個性派」ホテルだ。

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monagaph1「MOGANA」は二条城から徒歩10分ほど“下がった”あたりに位置する。リブランドではなく、一からの新築だ。タクシーでたどりついた時、ほんの少し通り過ぎてしまった。東西に長い京都特有の敷地を生かした、奥に長いつくり(38 メートル!)なのでつい見逃してしまう。その「うなぎの寝床」の廊下には壁や天井に格子が効果的に使用されている。ステンレスを畳織にし、敷き詰めた床も特長的だ。建物のデザインは、京都出身の建築家・山口隆。京町家の要素を新しい解釈で現代に蘇らせたデザインはミニマムなものだが、随所に「こだわり」が詰まっているのだ。

客室は全23室、4タイプで、もっとも小さい部屋で30平方メートル。言わずもがな、京都中心部ではかなり大きい方だ。壁や床、家具の素材や組み合わせが部屋ごとに異なり、バリエーション豊かな造りも楽しい。ほかの部屋も覗いてみたくなる。山口氏が得意とする、木、アルミ、石などの素材感を際立たせる構成で、漆喰をイメージした珪藻土塗装の壁に木材の床を合わせて異素材を愉しむ空間や、大理石の床に職人による真っ白な鏡面塗装を施した家具を配して白で統一した空間、いぶし銀色に塗装して日本瓦色に仕上げたアルミ素材を使ったグレーの空間などなど。壁面緑化を採用した部屋もある。

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館内や客室で使うアイテムも日本製、そして、日本人アーティストとコラボレーションにこだわった。ロビー・ライブラリーでは、巨大な壁面モニターで日本の四季を映像で流している。

また、着物のエッセンスを生かして現代的に提案している日本のファッションブランド「matohu(マトウ)」とコラボ。部屋履きサンダルには「matohu」のオリジナルファブリックを鼻緒に使用して大阪の老舗草履屋が製作したものだ。歯科医師監修による歯ブラシも「matohu」のオリジナルデザインとなっている。実際に「長着」を着て京都を散策する特別プランも用意しているとか。もちろん気に入ったら購入することもできる。

moganaph3南部鉄器のティーセット、福井発のライフスタイルブランド「モヘイム(MOHEIM)」のマグカップやティッシュボックス、着心地抜群のパジャマなど、ハードにもソフトにもぬかりはない。アメニティは「SHIGETA」を採用。「SHIGETA」はパリで活躍していたカリスマセラピスト・Chicoが立ちあげた、パリ発のオーガニックスキンケアブランドだ。アメニティがホテルに登場するのは今回が初。「MOGANA」のオーナーが口説き落としたのだという。アフリカ南部の黒御影石「ジンバブエ」を用いたバスタブは深く、広く、とにかく快適。「SHIGETA」の香りに包まれながら至福の時間が過ごせる。テレビやオーディオは敢えて置いておらず、心地いい静寂ののなか、自分とまっすぐ対峙する時間を提案するのもこだわりのポイントだ。

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ホテル内にレストランはない。しかし、2階にはバー「BAR MOGANA」があり、こちらは宿泊客以外も利用できる。1 階の吹き抜けに突き出している一枚石のバーカウンター、天井一面に張られた24金の金箔など、職人の技とモダンなテイストが見事に同居しており、とにかくほかでは見たことのないものなど、うれしい驚きの宝庫だ。
レストランはないが、朝食は部屋出しで供される。「ふきよせ」をテーマにさまざまな色が彩られた朝食は、インスタ女子でなくてもつい写真を撮りたくなる美しさ。淡路島産をはじめとする新鮮な野菜を使った料理やトマトと玉ネギをスパイスで煮込んで温泉卵と合わせたシャクシュカ、「吉田パン工房」のパンの盛り合わせなど、見た目だけでなく内容も大満足の料理は、淡路島の「Awabi ware」と「樂久登窯」(らくとがま)で焼かれた「MOGANA」オリジナルの器で供される。

moganaph5館内の計算され尽くしたデザイン、アイテムに包まれた滞在は、新しい発見にあふれ、ゲストの感性を大いに刺激する。個性派ホテルが続々登場する京都のなかでも、「MOGANA」はひときわ個性を放っているのだ。聞けば、「MOGANA」というホテル名は、「〜であったらいいな」という気持ちを意味する日本の古語の終助詞、「もがな」に由来しているのだとか。

(写真右)ミニマルなデザインで統一されつつも、光の柔らかさを感じさせるデザインがくつろぎをもたらすバスルーム。

じつは当初、11月下旬に予定されていたオープンは、12月7日に変更になった。10月末にはもう泊まれる状態だったというのに。オーナーや建築家はどんな点に、さらなるこだわりを見せたのか、気になるところだ。

intterpsaka

MOGANA(モガナ)


所在地:京都府京都市中京区小川通御池下る壺屋町450
予約・問い合わせ Tel:075-606-5281