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女性が社会で活躍する今、女性たちのライフスタイルもさまざま。自らのクリエイティヴな感性を軸に決断をし、行動を起こす女性たちは、生きいきと輝いている。それはどんな職業、どんな場所であっても、情熱を燃やして自分の願いを創造していくという自身のスタイルを持っている。各分野で活躍する女性たちへのインタビューを通して、そのスタイルとインスピレーションの源を探る。


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日本舞踊 舞踊家 有馬和歌子(坂東寛十胤)
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700年来の歴史を持つ「舞楽」「能楽」を礎に、現代では歌舞伎舞踊をはじめ、座敷舞の伝統を持つ上方舞や京舞、さらに現代的な舞踊解釈を込めた創作舞踊など、さまざまな顔を持つ日本舞踊。踊り手の表現、日本固有の音楽的感性や色彩感覚、衣裳文化、古典的物語性を秘めた演目、舞台演出に至るまで、総合芸術として古来より継承されている伝統芸能のひとつだ。今回、verita編集部が注目する有馬和歌子さんこと坂東寛十胤は、日本舞踊家 坂東寛二郎氏の娘で、現在20歳。国立劇場をはじめとする舞台公演のほか、各種イベント、TV、Webメディア、ラジオ出演など、多岐にわたって活躍する女性のひとりだ。

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(写真上)Lenovo Asia Pacific Kickoff 2017にて。世界各国を巡る同イベントの、日本会場にて父・坂東寛二郎氏と共に舞浜アンフィシアターにて連獅子を踊った。

「舞踊家という職業を志すにあたって、日本伝統文化の総合芸術として舞台の魅力を外に向けて広めていく活動を積極的に進めていきたいと思っています。」そう語る、和歌子さん。2017年・2018年に開催されたLenovo の「Lenovo Asia Pacific Kickoff」では、父である坂東寛二郎氏とともに連獅子を披露した。

「現在は古典舞踊の舞台をメインにしておりますが、それが国立劇場のような劇場以外にも、例えば異業種のイベントで舞踊のパフォーマンスを披露する機会も増えています。Lenovo の舞台は、わたくしが舞踊家としての方向性を考える大きな転機になりました。私は舞台に出ることが大好きなので、生の舞台の良さを多くの方々にご注目いただき、活用していただく場を創っていきたいと、このイベントをきっかけに、以前より強く意識するようになりました。」

2020年開催の東京オリンピックを前に、世界中からジャンルを問わず、日本文化に注目が集まっているのは確かだ。「日本の伝統文化の本質を探りたい、もっと日本について知りたいと興味をお持ちの方は、いま世界中にいらっしゃるはずで、日本舞踊には日本の伝統文化のエッセンスが詰まっているのではと思っています。」

60d6bcbbさらに舞踊家としては踊るだけではなく、日本文化の総合芸術として舞台を演出する視点から、古典舞踊と現代社会の新たな接点を生み出したいという和歌子さん。「舞踊家として私が目指しているのは、踊ることだけでなく、イベント全体の演出を考えたパフォーマンスとしての舞台を追求する姿勢です。古典舞踊の本質的な内容は変えずに、見せ方や演出の方法を工夫することで、普段舞台に馴染みのない方々にも楽しんでいただけるパフォーマンスにしていけると考えています。例えば、先ほどの"連獅子"という演目は、本来数十分の尺がありますが、イベントの7分間だったら、どこを見せると効果的か、背景をイベントの趣旨と連動したものにしてみようかなど、クライアントの要望やイベントのコンセプトに合わせて、こちらが技術として持っている日本舞踊の演出方法やターゲット層に合わせて最も相応しい演目選びなどをご提案し、舞台をはじめてご覧になる方々にも楽しんでもらえるような企画や場をこれからも考えていきたいと思います。」

日本舞踊のことはあまりご存じではないという読者の方もいるかもしれない。だが踊りを観劇する際に、何よりもまず舞台を直感的に感じてみることが大切だ。アカデミックな知識はあくまでも補足的な情報であって、音楽的な印象や、衣裳や舞台演出に感動する気持ちなど、聴覚的、視覚的な印象に対する自分の感性を拠り所に舞台を楽しむことは誰にでもできるはずだ。「観客が踊りをみて、何か一つでも印象に残る瞬間がある舞台をつくれるように、日々精進してまいりたいと思います。そして舞台が劇場という場所に限らず、イベントやパフォーマンスとして、あらゆるシーンでその非日常感を楽しみ、日本の伝統文化に親しむ方が増えてくだされば、これに勝る喜びはございません。」伝統芸能という古典的な世界に身を置きながら、現代社会との関わり方を自身の感性で切り拓いていく姿勢には情熱がみなぎっている。

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和歌子さんが舞踊家として国立劇場で初舞台を踏んだのは2歳の時。父親の坂東寛二郎氏の背中を見ながら、舞踊に親しむ心は自然に生まれていたという。また、幼い頃から音に関する感覚には敏感だったという和歌子さん。子どもの時に感じた舞台公演の記憶をこう振り返る。「まず、楽屋のあの空間ですね。緊張している時に見ることが多いために、やたら早く進んでいるように感じる古い時計。お囃子の方々の楽器の音。スタッフの皆様が忙しなく動いている音。踊る前に感じた楽屋の空気感を、子どもながらに音や景色として体で吸収していったように思います。それは単純に自分が舞台に立つということ以上に、舞台を裏側で支える方々の熱意や技術を知るという意味でも、表と裏が織りなす一期一会のドラマが、舞台という特別な時間と空間の上で実現するという芸術。そんな舞台のあり方、ある種の魔力に魅せられていました。」

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幼少の頃から、舞台を踏んできた彼女だが、大きな舞台とひとりの少女としての小さな自分、その大きなプレッシャーの中で、戦ってきたという。彼女は現在も、学生でありながら、舞台の上では華々しくスポットライトを浴びるアーティストという大役をこなしている。希望と不安の度合いが頂点に達すると、ひとり部屋にこもって絵を描くのだそうだ。舞踊家として舞台の仕事をいただけるようになった高校生の時期に、一枚の絵を描き上げたという。それは絵の具を使って指で描いた虎の絵(写真上右)だ。「この虎に乗って、いろんなところに行きたいんだ。」和歌子さんは、絵を見せながら母親にそう話していたという。大きなチャレンジを前にしながらも、自らのインスピレーションに従って、内に渦巻く葛藤を乗り越えていく。以後彼女は文字通り、虎の背中に乗っているかのように颯爽と外の世界へ飛び出していくことになる。

自分自身への期待とプレッシャーにさらされながらも、舞台という芸術の美しさに魅せられているひとりの女性は、その葛藤の中で凛としてしなやかであるという自身のスタイルを既に身につけている。

そして今、彼女が最も情熱を傾けるものへの想いを語った次項は”こちら”から。

写真提供/子供舞踊塾
profile

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有馬和歌子/舞踊家・子供舞踊塾代表

有馬和歌子公式Webサイト
有馬和歌子 Instagram
子供舞踊塾 公式Facebook
坂東寛二郎 公式Webサイト

子供舞踊塾 港区教室
e-mail:kanjiro.wakako.202@coda.ocn.ne.jp
Tel:03-5484-8290
教室見学や入会希望のお問い合わせは、Facebook 子供舞踊塾メッセンジャーにて随時、受付中。