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毎年10月はピンクリボン月間だ。ピンクリボンは、乳がん啓発活動を表す世界共通のシンボルマークで、日本でも2000年頃からスタートした。10月1日は、日本対がん協会ほかが主催する「ピンクリボンフェスティバル2019」のキャンペーンの一環で、 東京都庁やレインボーブリッジ、六本木ヒルズや表参道ヒルズなどがピンクライトアップされる。その他、乳がん検診の早期受診を呼びかける各種イベントが各地で展開される。

veritaでは、ピンクリボン月間に寄せて女性のココロとカラダにフォーカス。長年、産婦人科医として、女性の性、そして心と身体に向き合ってきた針間産婦人科院長の金子法子先生にインタビュー。女性が抱える特有の悩みや、性に関して起こりがちなトラブルについて教えてもらい、女性たちが自分らしく快適に日々を過ごすためのアドバイスをいただいた。
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(写真上)横浜・レインボーブリッジのピンクライトアップの様子。



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金子先生は、山口県宇部市で針間産婦人科院長として診察にあたっている他、思春期から高齢者向けまで、女性の性に関する啓発活動をライフワークとしている。穏やかながらも、明るく溌溂とした語り口で、多くの女性たちから信頼を集める女性ドクターのひとりだ。

年齢とともにホルモンバランスが変動する女性の身体。とりわけ子育てや仕事の両立でハードな毎日を過ごす子育て世代の女性たちには、ホルモンバランスによる体調のゆらぎが心身に大きく影響する。金子先生は、「性には、大きく3つの役割があります。一つ目は生殖のための性、二つ目はコミュニケーションのための性、そして三つ目は快楽のための性です。例えば、出産を終えた女性たちにとっては、生殖のための性を自らコントロールすることで性の別の側面を楽しみ、快適に過ごすことで心と身体の負担を減らすことができると思います」と話す。

ウェイトトレーニングや美容など、身体の外見に意識の高い女性は多いが、ライフスタイルに密接に関わる性にまつわる身体のことについては、後回しになりがちだ。早速、先生により具体的なアドバイスを伺った。

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女性の日常に一番大きな影響を与えているのは月経です。ご存知の通り、月経は女性が妊娠するために身体が準備をし、妊娠がなかった月はそのあらわれとして、子宮の内膜の一部が剥がれて、体外へ流出される女性ならではの身体機能です。妊娠を望んでいる女性にとっては、排卵のある月経は大事なものですが、一方で妊娠を望んでいない女性にとっては、排卵のある月経を起こす必要はないのです。現代のライフスタイルでは、昔に比べて月経回数が多いため、月経困難症や子宮内膜症、子宮筋腫など女性ホルモンによる病気が増えているのも事実です。そのために心と身体のコントロールが難しいとも言えます。

子育てや仕事でハードな生活をしている女性が、より安定したコンディションで生活を過ごしていくために私がおすすめしているのは、子宮内黄体ホルモン放出システム(IUS)です。通称”リング”と呼ばれるものの1つで、子宮内に入れる器具です。黄体ホルモンが付加されていることが特徴で、高い避妊効果と1度挿入すれば最長5年間という長期にわたる避妊効果が得られます。産婦人科に行き、わずか数分の処置で、子宮内にリングを装着することで、着床を防ぎます。日常生活において大きなリスクはなく、現在では世界約130カ国で、延べ約3,900万人の女性が使用しています。避妊効果だけでなく、IUSから放出される黄体ホルモンの効果で、子宮内膜の増殖を抑え、月経量を減らし、月経痛を和らげる効果もあります(その場合、保険適用あり)。ピルも避妊や月経困難症、過多月経の対策として非常に優れた薬ですが、「生殖の性」を終えた女性にとっては、IUSを第一選択にされるとよいかと思います。もっとIUSのメリットをより多くの成熟女性に知っていただけたら嬉しく思います。

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妊娠についてより現実的な話をすると、予期しない妊娠による人工中絶は10代や20代の女性の話だと思われがちですが、統計的にみれば、40代で妊娠をする女性も多く、その過半数は中絶を選択します。

妊娠のしやすさから言えば、20代よりも40代の女性の妊娠率は低くなりますが、それでも排卵と月経がある限りは妊娠しないわけではありません。中絶は女性の心と身体にとって大きな負担となりがちです。予期せぬ妊娠を繰り返さなために、自分自身で確実な避妊方法を選ぶことで、妊娠の心配をすることなくパートナーとの性生活を豊かに過ごせることにつながります。

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更年期は、40代半ばから体調に数々の変化を起こす、女性の身体にとっての大切な時期です。日本人の平均閉経年齢は約50歳ですが、個人差が大きく、40代前半で閉経を迎える人もいますので、40代の子育て世代も閉経に向けての心構えは必要です。日常生活で支障をきたすものについては更年期障害として治療されます。のぼせ、肩こり、動悸、性交痛、うつ症状、不眠など、女性ホルモン(エストロゲン)の低下によって、日常生活において不快な症状が続くものを更年期障害と呼んでいます。症状が軽くても、かかりつけの産婦人科を訪れ、生活習慣のアドバイスやホルモン補充療法をはじめ、症状改善の治療をしてもらうことで、更年期症状は軽減されます。これぐらいのことでと思わず、我慢することなく、婦人科医を味方につけて欲しいと思います。

女性の身体は、37歳を境に女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少します。さまざまな全身症状のひとつに膣の老化があります。膣壁がハリを失って薄くなると、膣内の乾燥による不快症状(性交痛)や尿漏れが起きることがあります。この不快感の結果としてセックスレスになる女性たちも多いのです。

そこで、不快症状の緩和ができる最新メソッドとして膣レーザー(保険適用外)が開発されました。顔のリフトアップやたるみ改善に使われているリジュビネーションの技術を女性器(膣壁)に応用したレーザー治療です。膣内に専用プローブを挿入し、特別に開発された炭酸ガスフラクショナルレーザーを数分間照射。レーザーにより、膣粘膜の繊維芽細胞が活性化され、新生コラーゲンが生成。「ふっくらとした厚み」や「ひだ」のある潤い豊かな膣に生まれ変わります。これは痛みはほとんどなく麻酔も不要で、出血等も無く、術後の特別なケアは必要ありません。はじめの治療から1か月後に再度、治療を行い、それ以降は1年に一度の治療で、膣内環境を維持していくことができます。パートナーとのセックスレス問題を諦めてしまう前に、膣のエイジングケアとして、検討してみても良いと思います。

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毎年10月はピンクリボン月間で、各地で乳がん検診の啓発活動が行われますが、乳がんや子宮の定期的なチェックはどの世代の女性にも大切で、欠かさないで欲しいと思います。一方で、月経困難症や月経前症候群、更年期症状のように、日常生活において悩みを抱えている女性たちに、気軽に産婦人科を受診してもらいたいと思います。冒頭でもお話しした通り、性はすべての女性にとって一生をかけてライフスタイルに影響するものです。性への意識をオープンにして、自分自身で体調をコントロールすることで、ひとりでも多くの女性に自分らしく溌溂とした生き方をしていただきたいと願ってやみません。

profile


金子法子/産婦人科医
1f30533c 山口県宇部市の針間産婦人科 院長。2男1女の母。「困りごとを抱える女性の味方」をモットーに、産婦人科診療以外にも避妊指導や性教育をはじめ、女性の健康に関する啓発活動をライフワークとしている。1989年、山口大学医学部産婦人科学教室入局。2001年より現職。2016年第5回西予市おイネ賞全国奨励賞受賞。2017年山口県医師会功労省受賞。

針間産婦人科
山口県宇部市常盤町2-1-44
Tel:0836-21-2373
http://www.noriko-cl.com/