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現在休業中の 「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」エグゼクティブ・シェフ、ルカ・ファンティンにインタビューした際「いま進めているプロジェクトがあるので、もう少ししたら公表できると思う。楽しみに待っていてほしい。」というメッセージを託された。 緊急事態宣言下の東京もそれから早2週間が過ぎ、予告通りルカ・シェフはスタッフフたちを率いて動き出したのだ。それは新型コロナウイルス最前線で闘う医療従事者たちに無償でランチボックスを届けるボランティア活動「ブルガリ お弁当プロジェクト」だった。



忙しい医療活動の合間に。星付きレストランからのサプライズ。

bvlgari_obento1前回のインタビューの際にルカ・シェフは「テレワーク中の現在も若いスタッフには毎日料理を作ってもらい、それを写真で見ています。いま伸び盛りだし1か月も料理しないのはもったいないから」と言っていたのだが、そうしたスタッフたちとともにルカ・シェフは再びレストランの厨房に戻った。ブルガリのパッケージングを施したランチボック用に用意したのはラザニア、生ハムを使った温野菜、サラダ、ドルチェ。忙しい医療活動の合間に食べられるようにとライトかつヘルシーに、なによりも星付きレストランからのプレゼントという嬉しいサプライズはどれほど医療従事者たちを元気付けたことだろう。4月22日にはまず都立駒込病院に180食が。翌23日には新宿の 国立国際医療研究センター病院と、2か所の感染症指定医療機関にランチボックスが届けられた。厨房ではルカ・シェフ以下全スタッフがマスクに手袋と、感染予防に最新の注意を払い、大量のランチを自らバンに積み込んで病院へと届ける。母国イタリアも今非常に困難な時期にあり、いつ帰国できるかも分からないというのに日本のために少しでも力になろうとしれくれる、そうした活動には日本人として胸が熱くなる。

世界の社会問題に向けて、ルカ・シェフの料理を通じたボランティア活動
bvlgari_obento4実はルカ・シェフが料理を通じたボランティア活動に取り組むのはこれが初めてではない。2015年ミラノ万博が行われた際、困難者に無償で食事を提供する食堂「レフェットリオ」が開設され、ルカ・シェフも日本からボランティアで参加したことがあったのだ。企画したのはモデナの3つ星レストラン「オステリア・フランチェスカーナ」のマッシモ・ボットゥーラ。ボットゥーラ・シェフはミラノのスーパーマーケットから廃棄対象食材を無償で譲り受け、世界中の友人シェフたちにボランティア参加してくれるよう呼びかけた。会場を提供してくれたのはミラノ市内にあった教会付属施設。「レフェットリオ」は貧困、フードロス、地域再開発という3つの問題を同時に解決するモデルケースとして世界中から注目され、以後リオ・デ・ジャネイロやロンドン、パリなど現在世界の各主要都市にその活動は広がりつつある。兄と慕うボットゥーラ・シェフを手伝うため、日本からいち早くかけつけたのがルカ・シェフだったのだ。この活動にはわたしも同行したのだが、スーパーからどんな食材が届くのかは当日になってみないと分からないし、必ずしも満足いくものではない。でもそうした食材に取り組み、料理を作ってもてなすことは料理人にとって必要なことだ、と語ってくれのがとても印象に残っている。

ブルガリの社会貢献活動。シェフ自ら病院に配達へ。
bvlgari_obento2 今回病院への配達にはブルガリ・ジャパン社長ウォルター・ボロニーノ氏も同行、自らルカ・シェフとともにバンから荷物を運ぶなど、直接病院にランチボックスを届けた。つまりこの活動はブルガリがつねに模索する社会貢献活動の一環でもある。ブルガリはこれまでにもさまざまなCSR(企業の社会的責任)活動を展開しており、世界の子どもたちを支援する活動セーブ・ザ・チルドレンにはこれまで97億円の寄付を行なっている。また、今回の新型コロナウイルス関連では、イタリアのイタリア国立感染症研究所へ最先端の3D顕微鏡を提供する支援を行っている他、消毒用にハンドジェルを数10万本生産。イタリア全土の医療施設に配布した後、スイスの医療施設へも提供した。イタリアではこうして官民力をあわせて未曾有の国難と戦っているのだが、おそらくはルカ・シェフも第二の母国と自らいう日本の危機に居ても立ってもいられなくなったのだろう。
bvlgari_obento3 「仕事の枠を超え、生命を守る最前線で戦う医療現場の方々に敬意を表します。このプロジェクトはシンプルなイタリアンの メニューですが、私たちが常に大切にしている『季節』を感じていただけるよう、栄養価が高い旬の食材を中心にメニューを構成しました。医療現場の忙しいひとときに、少しでも、見た目と味で春という季節を感じ、心和んでいただけることを願っています」とコメントした。

第二回の料理支援は4月27、28日の両日同じ病院にランチボックスが届けられたがその場にはルカ・シェフの姿はなかった。これは刻々と変化する事態を考慮し、極力病院を訪問するのも避けたためだ。自らが表に立たなくてもこうしたバックアップはきっと医療従事者たちを今日も力づけてくれるものと思う。「イタリア料理は世界で最も愛されている料理」とルカ・シェフは日々口にするが、その料理の力で少しでも新型コロナ対策の一助となれるのならば、これほど素晴らしい活動はないと思う。

取材・画像/池田匡克

restaurant information


bvlgari_restaurantブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン

住所:東京都中央区銀座2-7-12 ブルガリ銀座タワー9F
Tel:03-6362-0555
営業時間:ランチ 12:00~13:30(ラストオーダー)、ディナー 18:00~20:00(ラストオーダー)
定休日:日曜日、月曜日


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池田匡克 ジャーナリスト、イタリア料理愛好家

1967年東京生まれ。1998年よりイタリア、フィレンツェ在住。イタリア国立ジャーナリスト協会会員。イタリア料理文化に造詣が深く、イタリア語を駆使してシェフ・インタビュー、料理撮影、執筆活動を行う。著書に『伝説のイタリアン、ガルガのクチーナ・エスプレッサ』『シチリア美食の王国へ』『イタリアの老舗料理店』『世界一のレストラン オステリア・フランチェスカーナ』など多数。2014年イタリアで行われた国際料理コンテスト「ジロトンノ」「クスクス・フェスタ」などに唯一の日本人審査員として参加。2017年イタリア料理文化の普及に貢献したジャーナリストに贈られる「レポーター・デル・グスト」受賞。WebマガジンSAPORITA主宰。
イタリアを味わうWebマガジン「サポリタ」
http://saporitaweb.com//
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