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新型コロナウイルスの影響で開業が遅れていた原宿の新名所「ウィズ原宿」8Fに「資生堂パーラー ザ・ハラジュク」がオープン。自粛解禁後の新名所として注目を集めているが、料理はもちろん何よりも素晴らしいのは、明治神宮の広大な敷地を見下ろす大パノラマだ。 プレオープン期間も終了し、6月16日から全面的に営業開始となった。100年近いの歳月をかけ銀座の地で培ってきた「資生堂パーラー」の伝統的西洋料理が、新しいスタイルとともに提供されると噂の最新メニューを、プレオープン期間中、早速試してみた。

階下の喧騒を忘れて、神宮の杜の借景にたゆたう贅沢

近年再開発が進んでいたJR原宿駅周辺だが、そのハイライトといえる「ウィズ原宿」が6月5日にようやく開業した。本来ならば4月25日に全面オープン予定だったのだが新型コロナウイルスに伴う営業自粛で開業も延期。開業後も華々しいオープニング・セレモニーはなしで、緊急事態宣言解除後の東京の様子を見極めながらの営業開始となった。この「ウィズ原宿」は賃貸レジデンスやレストラン、ショップなどからなる9階建ての複合施設で、これまでは若者の街というイメージが強かった原宿に誕生した大人の空間である。特に眺めの良い8階に誕生した「資生堂パーラー ザ・ハラジュク」はドレスアップして出かけたい注目のレストランだ。
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FOOD_restaurant_shiseidopara2006_7「資生堂パーラー ザ・ハラジュク」は正式には6月5日にオープンしたものの、14日まではランチ営業のみでディナーは自粛というプレオープン状態だった。しかし6月16日からはようやくディナー、ラウンジを含むフルオープンとなった。ショップがある1階周辺は多くの人出で賑わっていたが高層階にある「資生堂パーラー ザ・ハラジュク」へのアクセスは専用エレベーターのみ。早速エレベーターに乗り込み8階へと向かう。すると階下の喧騒とは全く異なるラグジュアリーな空間が広がっていた。ウェイティングバーやカフェとして使えるラウンジを通り抜け、ダイニングフロアへ足を踏み入れるとそこには素晴らしい大パノラマの絶景だ。正面は広大な明治神宮の杜、右手には東京都庁はじめ西新宿の高層ビル群が見える。まるでNYのセントラルパークを見下ろしているかのよう、これだけ贅沢な借景を楽しめるレストランはなかなかない。

窓際のテーブルに案内されると、食前酒にロゼ・スプマンテ「フェラーリ・ペルレ・ロゼ2014 Ferrari Pelrè Rosè 2014」が登場した。これを注いでくれたのは本多康志ソムリエ。本多さんは以前銀座「資生堂ファロ」でソムリエを務めていた時にお会いしたが今回「資生堂パーラー ザ・ハラジュク」オープンに伴い店長となった。イタリア・ワイン界では最も権威が高いJETカップ優勝歴もあり、ロゼ・スプマンテのボトルには「本多康志セレクト」の文字も見える。

日本的感性に触れる食材で彩られたプリフィックスコースを
イタリア・ワインとともに楽しむ


FOOD_restaurant_shiseidopara2006_4FOOD_restaurant_shiseidopara2006_5(写真上)(写真)「ホワイトアスパラガス フランドル風」ホワイトアスパラガスと玉子という永世定番の組み合わせ。バターとレモンの酸味が食欲をそそる。(写真左)ランチコース「楠」から前菜の「旬のサラダ 彩美」多くの季節野菜をオリーブを使ったソースでまとめてある。(写真右)「バジル香る仔牛肉のカツレツ フレッシュトマトソース」いわゆるミラノ風カツレツとは違い、バジルを混ぜた細かいパン粉で揚げてあり、仔牛肉にもバジルがたっぷり。トマトやルーコラなどもたっぷり。ランチコースは2800円(平日のみ)、3800円、6000円、ディナーコースは6000円、8000円、12000円の3種類づつ。

「資生堂パーラーの伝統を受け継ぎ、料理はあくまでも洋食のスタイル。伝統のコンソメスープやカレーライスもメニューにオンリストしています。料理に加えて美しい景色とイタリア・ワインも堪能していただきたい」と本多さん。この日試したのは前菜、メイン、デザートからなるコース「楠」3800円だ。前菜は「ホワイトアスパラガス フランドル風」、柔らかく火を入れたホワイトアスパラガスには相性の良い定番の組み合わせであるボイルドエッグのコンカッッセに、レモンとバターで作るフランドル風ソース。この軽やかな野菜の前菜には北イタリア、トレンティーノ・アルト・アディジェ州の「シュッテルスタイン ピノ・ビアンコ2018 Schutterstein Pino Bianco 2018」清涼感ある清潔な白ワインが、杜を見下ろしながらのランチタイムにはぴったりだ。

FOOD_restaurant_shiseidopara2006_6メインの魚料理は「キンメダイのポワレ ウイキョウのソース」蒸し煮にして火を入れたキンメダイに南仏を思わせる強い香りのウイキョウのソース。一方つけわせのヤングコーンとマコモダケは歯ごたえを残してあり、キンメダイとのコントラストを楽しむ。ワインはトスカーナ地方のボルゲリから「グラッタマッコ ヴェルメンティーノ 2017 GrattamaccoVermentino 2017」海辺に近い南トスカーナのヴェルメンティーノは非常にドライで切れ味鋭く、魚料理の余韻を最後まで楽しませてくれた。コースを締めくくるデザートはワゴンからのチョイスなので、数種類試してみるのもいいかもしれない。よく晴れた日の午餐には、これほど素晴らしいロケーションもないだろう。

いま眼下に見下ろしている明治神宮は、実は今年創建100周年にあたる。明治天皇が1912年、昭憲皇太后が1914年に相次いで崩御されたのち、1920年に完成。70万平米の広大な鎮守の杜は、日本全国から献木された10万本の樹木によって作られている。創建以来祈りの杜であることは、広く知られている通りで初詣や結婚式、七五三などの儀礼には今も多くの人々が詰めかけ、家内安全、厄祓祈願を祈る。それはまさにこの時期にこそふさわしい。「資生堂パーラー ザ・ハラジュク」にて素晴らしい料理と美しい眺めを堪能した後は、明治神宮をしばし散策、安寧への感謝の祈りを捧げるというのも、合わせてお薦めしたい。

Photo&Text Masakatsu Ikeda

restaurant information


FOOD_restaurant_shiseidopara2006_info資生堂パーラー ザ・ハラジュク

住所:東京都渋谷区神宮前 1-14-30 ウィズ原宿 8F
Tel:03-3475-1021
営業時間::ダイニング ランチ 11:30~15:30(L.O.14:00)、ディナー 18:00~22:00(L.O.20:30) ラウンジ 11:30~22:00(L.O.21:00)
定休日:月曜日 (祝日は営業)、年末年始
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池田匡克 ジャーナリスト、イタリア料理愛好家

1967年東京生まれ。1998年よりイタリア、フィレンツェ在住。イタリア国立ジャーナリスト協会会員。イタリア料理文化に造詣が深く、イタリア語を駆使してシェフ・インタビュー、料理撮影、執筆活動を行う。著書に『伝説のイタリアン、ガルガのクチーナ・エスプレッサ』『シチリア美食の王国へ』『イタリアの老舗料理店』『世界一のレストラン オステリア・フランチェスカーナ』など多数。2014年イタリアで行われた国際料理コンテスト「ジロトンノ」「クスクス・フェスタ」などに唯一の日本人審査員として参加。2017年イタリア料理文化の普及に貢献したジャーナリストに贈られる「レポーター・デル・グスト」受賞。WebマガジンSAPORITA主宰。
イタリアを味わうWebマガジン「サポリタ」
http://saporitaweb.com//
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