best502021
2021年の「アジアのベストレストラン50」が発表され、フーディーズの間で盛り上がっている。去る2020年は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、初めてとなる日本におけるアワードセレモニーの開催が叶わなかった。 2021年も残念ながらアワードセレモニーは開催できなかったが、受賞したレストランを讃える発表会が、ザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜で開催されたのだ。

ベストレストラン50のオフィシャルアンバサダー山田早輝子氏、日本評議委員長の中村孝則氏、ランクインした料理人たち、メディアや関係者たちが会場に集まった。オンライン発表は昨年に引き続いて同じながらも、今年は1位から50位だけではなく、初めて51位から100位も発表されるなど、コロナ禍ながらも見所を創出していたといえよう。

51位から100位にランクインした日本のレストランは次の通り。

51位:すぎた(東京)
53位:Quintessence(東京)
54位:Il Ristorante Luca Fantin(東京)
57位:鮨 さいとう(東京)
64位:Villa Aida(和歌山)
71位:天寿し 京町店(北九州)
83位:été(東京)
85位:Sugalabo(東京)
91位:Cenci(京都)

自家栽培にこだわった「Villa Aida(ヴィラ・アイーダ)」の小林寛司氏、住所・電話番号が非公開で完全紹介制フレンチレストラン「été(エテ)」の庄司夏子氏、古民家のモダンイタリアンを生み出す「Cenci(チェンチ)」の坂本健氏が壇上に登場し、多大な拍手で讃えられた。

この後に続く50位の発表からは緊張感が増す。初回となる2013年の「アジアのベストレストラン50」で「Narisawa(ナリサワ)」が1位を獲得してから、日本のレストランはトップに選出されていない。日本のレストランが頂上への返り咲きを狙っているのだ。

今年は驚くべき結果となった。昨年1位で盤石かと思われていたシンガポールの「Odette(オデット)」が2位となり、香港の「The Chairman(チェアマン)」が初めてとなる1位に輝いたからだ。会場では、2位以下までが既に発表されていたので、ほとんどの参加者は頂点に輝くレストランを予想できていたかも知れない。しかし、改めて発表されたとなると、あっという感嘆の声が会場内に響き渡ったのだ。

1位を獲得して勢いにのる香港は、50位中に11店がランクインして地域別で最多となった。しかし、日本も負けていない。次に列挙する通り、地域別で2番目に多い9店がランクインしたのだ。ちなみに地域別3位は6店のタイ、4位は5店の台湾、5位は4店の韓国である。

3位:(東京)
7位:Florilège(東京)
8位:La Cime(大阪)
9位:Narisawa(東京)
12位:茶禅華(東京)
19位:L’Effervescence(東京)
27位:Ode(東京)
30位:La Maison de la Nature Goh(福岡)
35位:龍吟(東京)

「傳」は4年連続で日本最高位となって大きく讃えられ、「L’Effervescence(レフェルヴェソンス)」は昨年の48位から19位にジャンプアップして最も順位を上げた「the Beronia Highest Climber Award」を受賞した。

日本評議委員長の中村氏は「コロナ禍で開催できただけでも、非常に素晴らしいことだ。順位は関係なく、ランクインしたレストランはどれも最高」と評する。日本最高位となった「傳」の長谷川在佑氏は「落ち着いたら、食べに来ていただけたら嬉しい。食べて元気をもらえたといわれるのが一番の励みになるので、是非とも応援している飲食店に訪れていただきたい」と力を込める。

7位「Florilège(フロリレージュ)」の川手寛康氏は台湾に出店した「logy(ロジー)」が24位と初ランクインした。こういったことも受けて「例年とは審査基準も異なったので気になったが、ランクインできてよかった。引き続き励んでいきたい」と謙虚にいう。

それぞれの料理人たちが見せる順位発表後の姿も個性的で興味深い。「La Maison de la Nature Goh(ラ メゾン ドゥ ラ ナチュール ゴウ)」の福山剛氏は体全体で喜びを表現し、「Ode(オード)」の生井祐介氏は深く頭を下げ、「La Cime(ラシーム)」の高田裕介氏は握手して回った。昨年のミシュランで三ッ星の快挙を成し遂げ注目が集まる「L’Effervescence」の生江史伸氏は、「前回は順位が落ちたので、次は頑張らないとと肝に銘じた。コロナ禍の中で大変であったが、とても温かい賞をいただけた。これからも頑張っていきたい」と真摯に述べた。

派手なアワードセレモニーを行うことはできなかった。しかし、どうにかしてコロナ禍の中でゲストを喜ばせ、ガストロノミーを盛り上げていこうとする、痛烈な想いがひしひしと伝わってきたことは確かだ。日本を活気づけるためにも食は観光的、文化的にも重要な資源であり、これからも素晴らしいレストランと料理人を応援していきたい。

Text&photo by Toryu

profile


東龍

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ブッフェ、フレンチ、鉄板焼、ホテルグルメ、スイーツをこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。料理コンクール審査員、講演、プロデュースも多数。
2017年8月「一般社団法人 日本ブッフェ協会」設立、代表理事就任。

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