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2020年3月、全国にレストランを展開する「ひらまつ」が、京都の中心部、烏丸御池駅から徒歩3分の好立地に、「THE HIRAMATSU 京都(ザ・ヒラマツ キョウト)」をオープンした。2016年以降、複数のホテル事業を手がけている「ひらまつ」だが、都市型ホテルは、この「THE HIRAMATSU 京都」が初となる。




数寄屋づくりの名工が手掛けた町家風情に凛とする。sen

京都_走り庭_0151899(明治32)年上棟の京町家のディティールはそのままに、最新の建築技術と京都の伝統的な手技で新たな息を吹き込み、大幅リニューアル。全29室のスモールラグジュアリーホテルに設えた。総合監修を行ったのは、数寄屋づくりの名工・中村外二(そとじ)工務店。ホテルのコンセプトは、「京都をしつらえる」。京都の歴史に敬意を表し、可能な限り、町家や蔵の趣を残すことにこだわった。建物正面の「表屋」部分は、解体せず補強・復元の上保存している。新築した部分にも、天井の梁や柱、瓦などオリジナルの部材を再度組み合わせたという。

外観は呉服屋時代に使われていた糸屋格子を再利用。知らなければ、ここがホテルだとはわからないだろう。レセプションは、かつては商いのスペースだった「表屋」と呼ばれる場所に設けた。土間を彷彿とさせる三和土(たたき)風の床にも旅情をかきたてられる。「表屋」の奥には、町家建築の特徴である「走り庭」(写真右)と呼ばれるエリアがあり、ラウンジ、レストランへとつながっている。「走り庭」とは、もともと玄関と裏庭をつなぐ通り道のようなもの。炊事場としても使われていたそうだ。その「走り庭」突き当りには、2つの土蔵をつなぎ合わせて作った、寛ぎのスペース「くら」がある(これについては後述する)。

チェックイン時に振舞われるウェルカムドリンクとお茶菓子をいただきながら、ワクワク感はさらに高まっていく。わらび餅ひとつとっても、さすがの美味しさだ。すでに訪れていた知人から見どころが多いホテルだとは耳にしていたが、そのこだわりぶりは予想を超えていた。とてもすべては紹介しきれないので、特に印象的だった部分をピックアップしていきたい。
hiramatsukyoto1_02(写真)ザ・ひらまつスイート客室。

29室の客室は、もっとも小さな部屋でも54㎡以上。すべてツインベット(ダブルに変更も可能)で、ジェットバス付きだ。また、これはホテル全体どこの入口でもそうなのだが、各客室もドアを開いても敢えて室内全体が見渡せない構造となっている。歩を進め、角を曲がることで、全貌が少しずつ見えてくる仕掛けなのだ。胸を高鳴らせながら進んでいくと、「和モダン」というシンプルな言葉で片づけるには躊躇するような、凛とした落ち着きを放つ空間が広がっていた。心地よい緊張感が漂っていて、非日常を感じさせるが、同時に寛ぐこともできる。平たくいえば、日本屈指の観光地である京都にいながら“おこもり”を決めたくなる、そんな居室だ。旅館の「広縁」のようなスペースもある。 hiramatsukyoto1_03(写真)デラックスツインの浴室

「THE HIRAMATSU 京都」は、公共スペースも、客室も印象的な意匠の宝庫だ。客室を見渡すと、格子や和紙の壁紙、清朝時代のアンティーク家具やデンマークデザインの巨匠、コーア・クリントの椅子など、主役級のしつらえがそこかしこに配されているのがわかる。“経年美化”を見越した、鉛の壁も表情豊かだ。弁柄色のアンティークが鉛の壁によく映える。さまざまなデザインの椅子が複数置かれているのも印象的だった。ソファはあえて置いていないという。とりあえずすべての椅子に腰をかけてみることにしよう。また、一部の客室には、日本を代表する陶芸家、辻村史朗氏の私邸の庭をイメージした箱庭と、それに面したデスクがある。箱庭は時間ごとに表情を異にする。また部屋に籠る理由が増えてしまった。
hiramatsukyoto1_04(写真)ラウンジ入口にある辻村史郎氏作品。

「菓匠 御倉屋」のお茶うけにも、はんなりとした心遣いを感じる。緑茶をベースにしたという、オリジナルのバスアメニティーも心地よい。タオルもバスロープもスリッパもふかふかだ。冷蔵庫内の飲みものの料金はすべて宿泊費に含まれる。ひらまつではお馴染みのアランミリアのジュースや、京都の地ビールが入っていて、にんまりしてしまう。
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»「120年余の歴史を持つ町家を再構築。ひらまつ初の都市型ホテルに逗留する THE HIRAMATSU 京都 後編」に続く。

text by Aya Hasegawa
information


京都_外観_038THE HIRAMATSU 京都
https://www.shangri-la.com/jp/tokyo/shangrila/

所在地:京都市中京区室町通三条上る 役行者町361
Tel:075-211-1751
室数:全29室
チェックイン:15:00~24:00、チェックアウト:11:00

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