hiramatsukyoto_main2
ひらまつが手がける宿とあれば、食の面にもおのずと期待が高まる。そもそも、ひらまつがホテル事業をスタートさせたのは、食事やお酒を楽しんだあと、そのままステイできる場所を作りたかったのがきっかけだったという。実際、ひらまつに宿泊する人の多くは、食を目的にこの宿を選んでいるはずだ。

メインダイニングは、京都の滋味に富んだ極上のイタリアン。sen
館内にレストランは2つ。イタリア料理「リストランテ ラ・ルーチェ」と、日本料理を供する「割烹 いずみ」だ。いずれも宿泊者以外も利用できる(ディナーのみ)。イタリア料理の「リストランテ ラ・ルーチェ」は2階まで吹き抜けになっており、梁は建物が建てられた当時のものだ。開放感あるこちらのレストランでは、ひらまつ各店で研鑽を積んだ料理長・筒井崇海氏による、クリエイティビティあふれる料理が堪能できる。
hiramatsukyoto2_01 京都の歴史に裏付けされた文化が息づくレストランである特徴をいかし、「オーセンティックでありながら、『和』を感じていただける料理を提供したいと考えました」と筒井氏。しょっぱなから、八寸風に盛り付けられた、アンティパストに度肝を抜かれた。(写真トップ「八寸 アンティパストミスト(前菜盛り合わせ)」※取材時とは内容が異なるイメージ画像)見た目は懐石の八寸そのものだが、調理法は真っ当なイタリアンだ。
aafa59145b68f17f 訪れた日のメニューでは、京丹波しめじを使ったマリネや、芝漬けがアクセントにきいたバーニャカウダソース、ごぼうと長いものお新香をはさんだ鱧の備長炭焼きなど、初めて出会う料理が宝石のように散りばめられていた。客席でスープを入れて仕上げる「上賀茂ナスと明石蛸のスパゲッティ アラビアータ」(写真上右)の繊細さにも唸らされた。西京味噌に漬けてから焼き上げたマナガツオ(写真上左)は生麩と一緒に供され、「近江牛モモ肉の炭火焼き 黒コショウの効いたマスカルポーネ」(写真上下)には柚子胡椒を使用。風味豊かな伏見のとうがらしも添えられていた。フレンチの経験も持つ、筒井氏ならではの料理の数々だ。

美味が散りばめられた朝食の悦び。sen

hiramatsukyoto2_06朝食も創造性にあふれていた。トスカーナ地方の家庭料理・パッパ アル ポモドーロ(のトマトとパンのおかゆ)に冷製パスタとコース仕立て。さらにリゾットもつく。随所に使われている、石割農園の野菜も甘い。朝から白ワインが欲しくなり、困ってしまう。京都美山のミルクを使ったヨーグルトやパンは自家製だ。言うまでもなく、美味。お腹ははちきれそうになっても、食べるのが止められない。まさしく至福の朝食ともいうべき、ひらまつの美食の粋を集めたモーニングだ。

(写真左)「ラ・ルーチェ」朝食時のイメージ。

今回は利用するチャンスがなかったが、懐石料理の「割烹 いずみ」は全12席。欅の一枚板仕上げたカウンターが印象的だ。しつらえも、客室同様、木、土、紙といった無垢の素材が仕立てられている。カウンター席とテーブル席があり、どちらの席からも松林の坪庭を愛でながら、京都の料亭で研鑽を積んだ料理長・小泉壮登氏による京都の四季を映し出したかのようなひと皿ひと皿を五感で味わうことができるという。
hiramatsukyoto2_08
(写真)「割烹 いずみ」の朝食。

ここにしかない京の風情を愉しむ。sen

hiramatsukyoto2_09ディナーのあとは、町家以上に古い歴史を持つという土蔵を利用した、前述の「くら」へと移動したい。蔵が作られた当時の扉や丁番など金物の造作、瓦も使われており文明開化の機運に沸いた往時と、現在、そして近未来までもが混在する「非日常」感あふれる不思議な時間が流れるこの場所は、お酒を嗜まなくてもぜひ足を運ぶことをお勧めする(コーヒーのオーダーもできるのでご安心を!)。蔵の中に、清朝時代の家具と、コーア・クリントの家具が共存している場所など、世界にもそうないのではないだろうか。入口に並ぶ、京都に関する書籍を紐解くのも一興だ。

京都だからといって、観光地に足を運ぶ必要はない。ここでは、ホテルを一歩も出なくても、存分に京都らしさを堪能できる。こんな京都旅もいいかもしれない。次に行った時には和食もぜひ食べてみたい、でも別の季節のイタリアンも気になると、食べることばかり考えながら趣あるそのホテルをあとにした。自分の食いしん坊ぶりに、半ば呆れながら。仕方ない、それだけ旅に彩を与えるというには惜しいほどに美味しかったのだから。

なお、「THE HIRAMATSU 京都」は、10月に発表された「ミシュランガイド京都・大阪+岡山 2021」では、「4レッドパビリオン(4つ星+)」の評価を得ている。

text by Aya Hasegawa
information


京都_外観_038THE HIRAMATSU 京都
https://www.shangri-la.com/jp/tokyo/shangrila/

所在地:京都市中京区室町通三条上る 役行者町361
Tel:075-211-1751
室数:全29室
チェックイン:15:00~24:00、チェックアウト:11:00

<HIRAMATSU HOTELS 関連記事>
OKINAWA nippon| 東海岸の魅力を発見する美食旅 ひらまつホテルズ&リゾーツ 宜野座
HAKONE nippon|美食逗留 ひらまつが極めたホテル 第三章 神奈川・箱根 仙石原
ATAMI nippon|美食逗留 ひらまつが極めたホテル 第二章 静岡・熱海
ISE nippon|美食逗留 ひらまつが極めたホテル| 第一章 伊勢 賢島