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多種多様な個性を持ったホテルが乱立する京都でも、このホテルほど珍しくて、唯一無二のバックグラウンドを持つ一軒も他にない。京都屈指の観光スポット清水エリアに敷地面積約7120㎡の広さを有するザ・ホテル青龍 京都清水(The Hotel Seiryu Kyoto Kiyomizu)は、2020年3月22日に開業した。 清水寺が徒歩圏内にあって、目の前には法観寺・八坂の塔。なだらかな東山の傾斜地に立ち、風情溢れる市街地とそれを取り囲む山並みを見渡せる絶景のロケーション。この場所は、元京都市立清水小学校跡地だ。同ホテルは、歴史ある小学校校舎を保存・活用して開業した、いわゆるヘリテージ(遺産)ホテルなのだ。



記憶の奥のノスタルジーを呼び醒ます風景
窓枠から差し込む光、回廊をめぐる風、陳列されたアート作品―
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226717732_4343440695677232_5697929977442194675_n小学校校舎のホテル活用事例は京都でも初だという。エントランスをくぐると目の前に芝生が広がる。清水寺へ向かう清水坂は土産店が所狭しと軒を連ねる場所柄なだけに、まるで視界が開けたように現れた芝生がより一層眩しく感じられた。右手に進むと正面に階段があり、かつて校舎として使われていた趣のあるホテル棟が出迎えてくれた。真新しいはずだが、どこかレトロで郷愁を誘われるフォトジェニックな空気感に一瞬で魅了されてしまう。

元管理作業員室だったというフロントでチェックインを済ませ、客室へ向かう途中の館内には、廊下の床、窓枠から差し込む光、外壁や柱の佇まい、階段の手すりに残された落書きの跡…、そこかしこに校舎の面影が残されていて、建物の保存と継承を試みた復元作業の丁寧な仕事をうかがえた。ホテルとして新たなデザインを組み込みつつ、昭和8年築の校舎の傷んだ部分は解体し、足りないところは作り直されたというが、すべてを壊して新しく作り変えるよりも原型を保存・復元する方がずっと手間と時間がかかる。明治に開校した下京第二十七番組小学校にルーツを持つ京都市立清水小学校の歴史は、今もなお地域の人々に愛され続けている。
kyoto_hotelseiryu_13客室棟への入り口付近には、小学校として使われていた当時の写真や地域にまつわる資料などを展示したアーカイブコーナーが設置されている。ホテルスタッフの説明を受けながら、かつて小学校だった頃のこの建物と子どもたちの日常生活を想像してみる。館内を歩くだけでも愉しめるホテルというのも珍しい。廊下や階段の踊り場などには、たくさんのアート作品が展示されており、そこには題名や作家名などは敢えて掲示されていない。思い思いに作品を眺めながら廊下を歩き回ると、自分の中にもある学生時代の懐かしい記憶が目の前の風景と重なり合ってくるようだ。

教室を改装したクラシカルな趣の客室と、増築されたモダンな客室。sen
kyoto_hotelseiryu_16 kyoto_hotelseiryu_15客室は全48室。平均50㎡のゆったりとした広さ。客室には2通りあって、既存校舎の構造を残した客室と新しく増築した客室で、それぞれに異なる雰囲気で誂えられている。校舎の面影を残した客室といっても、快適な滞在型ホテルとして申し分のない設備が揃っている。ただよく眺めると、大きくとられた窓や梁の雰囲気、風の通り具合など、学び舎だったことを想起させる部分が確かにある。部屋には改装の記録としてビフォーアフターの写真がまとめられた本が置いてあって、それを手に取って眺めていると、いよいよ感慨深い思いがしてくる。
kyoto_hotelseiryu_14一方、新たに増築されたスイートの客室は、大きくとられた窓から八坂の塔を望めるようになっていて、テラスが併設されている客室もある。一室一室で異なった角度から京都の風情を満喫できるようにさまざまな趣向が凝らされている。ファミリーでの滞在、カップルでの滞在などシチュエーションによって毎回、宿泊する部屋を変えてみるのも楽しそうだ。

ゲストラウンジ、プライベートバス…館内での愉しみは多彩。sen
screenshot.123(写真)ゲストラウンジ。全面に配された窓の外には、法観寺の五重塔が見えて、ラウンジで寛ぎながらも京都らしい風情を感じるフォトジェニックな時間を過ごせる。

館内施設において特筆すべきはゲストラウンジの快適さだ。朝に夕に刻々と変化する眺望を楽しめるゲストラウンジは、滞在期間中の利用は無料。スナックやスイーツを楽しめるデイタイム(7:30~15:00)、オードブルなど軽食が用意されるカクテルタイム(15:00~22:00)があり、ドリンク(カクテルタイムはアルコール含む)とともにのんびりと寛げるスペースになっている。お抹茶を自分で点てたり、コーヒーを自分で淹れることができるなど、思い思いの時間を過ごせるようにと、きめ細やかなサービスが用意されている。スパークリングワインを傾けながら読書にふけるだけでも、心地よく寛げるいい時間になる。

kyoto_hotelseiryu1_2完全予約制のプライベートバスがまたいい。「清水」「山鳩」「桜」をテーマにした3つの個室があり、こじんまりとしているがテーマごとにデザインが異なっており、いずれも洗練されたスタイリッシュなムード。かつて講堂として使われていた3メートル以上ある天井高を活かしたウェルネス空間で、誰にも気兼ねすることなく心身を解放したい。利用時間は、7:00~22:00。1室 6,000(90分)、1室4名まで利用可能。


図書館の中にいるかのようなレトロさ漂う粋なレストランで朝食を。sen
kyoto_hotelseiryu_12 kyoto_hotelseiryu_11朝食は、ホテル内レストラン「restaurant library the hotel seiryu」で。先ほどのプライベートバスに隣接し、ここも元校舎の講堂であったために天井の高い開放的な空間。テーブルを囲む棚には1,100冊を超える書籍が並んでいてなかなか圧巻だ。アート関連本や京都の歴史、日本の文化歴史、美術にまつわる書籍などが陳列されている。一冊一冊物色して、もし気に入った本があれば部屋に持っていくこともできる。本に囲まれたライブラリーで朝の光に包まれていただく朝食もまた格別だった。メニューはアメリカン・ブレックファストをはじめ、お膳仕立ての和朝食、目新しくはメインディッシュの一つである柴漬けのリゾットなどユニークなものもあったりしていて楽しい。ゲストラウンジ同様にサービススタッフの心のこもったサービスも心地よく、時間をかけてゆっくりと贅沢な朝食のひとときを楽しんだ。

»KYOTO nippon| 古都に溶け込むように佇むヘリテージホテルの魅力 ザ・ホテル青龍 京都清水 後編」に続く。

information


外観1ザ・ホテル青龍 京都清水(The Hotel Seiryu Kyoto Kiyomizu)

所在地:京都府京都市東山区清水二丁目204-2
Tel:075-532-1111
室数:全48室
チェックイン:15:00、チェックアウト:12:00

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