Gucci.menu03
以前から噂になっていた「グッチ オステリア」 が昨年秋ようやく東京・銀座のフラッグシップショップ「グッチ並木」の最上階にグランドオープンした。正式名称は「Gucci Osteria da Massimo Bottura Tokyo(グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ)」これはイタリアを代表する3つ星レストラン「Osteria Francescana(オステリア・フランチェスカーナ)」のシェフ、マッシモ・ボットゥーラがグッチとのコラボで世界展開するコンテンポラリーなイタリアンレストランで、フィレンツェ、ロサンゼルス・ビバリーヒルズに次ぐ世界3店目となる。 フィレンツェ、ビバリーヒルズは共にすでにミシュラン1つ星を得ており、同店のシェフであるカリメ・ロペスはイタリアの年間最優秀女性シェフに選ばれるなどイタリア本国の「グッチ オステリア」はまさに絶好調。銀座店OPENの噂は1年以上前からイタリアのメディアでは報じられていたのだが、コロナの影響もあって遅れていた「グッチ オステリア」がついに東京にも誕生したのだ。



都心に出現したイタリアンの最前線で、グッチ×マッシモ・ボットゥーラの美学を味わう。

gucci_pシェフに就任したのはイタリア・カンパニア州出身のアントニオ・イアコヴィエッロ。デンマークの「ノーマ」でキャリアを積みフィレンツェのグッチ オステリアや「オステリア フランチェスカーナ」を経たのち銀座店のシェフに抜擢された。
今回は「グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ」のエクスクルーシブな個室空間「Room of Mirrors」での料理体験。このプライベートダイニングはイタリアから直送したアンティークのダイニングテーブルやウォールミラーやグッチ デコール コレクションのウォールペーパーで装飾された居心地のよいエクスクルーシブな空間になっている。
シェフのアントニオが組み立てくれたテイスティング・メニューは「ヴィエニ・イン・イタリア・コン・メ(Come to Italy with me)」プラスアルファの特別コース。「ヴィエニ・イン・イタリア・コン・メ」とはボットゥーラのレシピ集のタイトルと同名であり、これは料理を通じてイタリア各地を旅する=フードエクスペリエンスの提案、という彼の料理コンセプトが色濃く反映されている。 gucci_int
イタリアと日本を掛け合わせた、センシュアルで独創的なコンテンポラリーイタリアン。
Gucci.menu01jpg 最初の前菜は滑らかなイカに牛乳のソースとミントオイル、わさびの冷たいジェラートという爽やかな料理(写真左・通常のコース外のメニュー photo by Masakatsu Ikeda)。続く「パンナコッタ 柚子のジュレと白エビ添え」(写真右)は柚子で香り付けした甘エビのタルタルに甘エビの卵のトッピング、生クリームを使ったパンナコッタ・ソース、バジル・オイル。そして甘エビの下には南イタリアでよく食べる堅焼きの硬質小麦のパン、フリセッラが隠されており、クリスピーな食感がアクセント。
Gucci.menu04 緑色のリゾットは「プロントルイーザ・・・ビッザへのオマージュ」これはカルナローリ米と枝豆を使ったリゾットで、枝豆のソース、ミント、燻製オイルの組み合わせ。豆の甘みとソースのほのかな酸味、それにオイルの薫香がいいマッチング。実はこの料理は、ボットゥーラの母ルイーザが子供の頃作ってくれた郷土料理「リーズィ・エ・ビーズィ」に由来する。
guccciosteria_pasta1 一皿目のパスタは築地のカルボナーラ(写真上・通常のコース外のメニュー photo by Masakatsu Ikeda)。アントニオは世界の魚市場の中心である築地に、このパスタへの思いを込めた。カルボナーラとは本来卵黄とチーズで作るクリーミーなソースであえたパスタ料理だが、これはウニを使った魚介バージョン。幅広パスタのリングイネに佃煮を思わせるアサリ、ウニの甘みと旨味、ウニとアサリ、自家製のパウダーの軽い薫香、そして白胡椒が全体を引き締めている。
Gucci.menu02jpgパスタがもう一皿「ラーメンになりたいパルミジャーナ」。これは自らラーメンを食べ歩いて研究したという自作パスタ、揚げたナス、トマトとナスのクリーム、乾燥させたナスを発酵させて作ったブロードとともにいただく。パルミジャーナとはナスとチーズ、トマトを重ね焼きした南イタリアの郷土料理で、そこに日本の食文化を融合させ、スープ・パスタ=パスタ・イン・ブロードの要素を取り入れたもの。ナスのブロードが実に軽快でパスタにもよくあう、アントニオの代表料理のひとつ。
Gucci.menu05
肉料理は和牛を片面だけを焼き上げたコトレッタで「和牛 ミラノ風」。北イタリアでは仔牛のカツレツを象の耳=オレッキエ・ディ・エレフェンテと呼ぶこともあるが、これはイタリアと日本のコラボ・コトレッタ。衣にはグリッシーニを使ってよりクリスピー感を強調、西洋わさびや自家製ケチャップ、パセリによるソース、ジャガイモの付け合わせ。
guccciosteria_specialite そしてまたしてもコース外なのだが、これを食べずには終われないという詰め物パスタ「トルテリーニ パルミジャーノ・レッジャーノ クリーム」(写真上 photo by Masakatsu Ikeda)。「オステリア・フランチェスカーナ」の定番であり「グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ」でもオンメニュー。これは一口サイズの手打ち詰め物パスタの美味しさもさることながらソースが一度食べたら忘れられない後引く味。パルミジャーノのコクに鶏のブロードで旨味をプラス。肉料理の後でも食べたくなる。

アントニオは常々ボットゥーラから「料理は常にクローズではなく、オープンな思考で考えろ」とアドバイスされているという。伝統的イタリア料理という既成概念にとらわれず、日本の食材や技術、文化まで取り入れてオリジナリティあふれる新しい料理を作り出しつつも、根底にあるイタリア料理の哲学はぶれていない。なによりもファッショナブルな空間に囲まれての料理体験はテンション上がること確実。記念日などとっておきのシーンに活躍することは間違いない。また、季節のいい時期にはおなじ4階にあるルーフトップテラスでプロシュートやサラミ類とワインを楽しむイタリア式食前酒「アペリティーヴォ」が体験できる。夕暮れ時、銀座の空気を感じつつテラス席で過ごすひとときも「グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ」ならではの魅力のひとつだ。

※メニューは、取材時のものとなり、内容は季節によって異なる。

Photo by Hiroki Kobayashi/Gabriele Stabile
Photo&Text Masakatsu Ikeda

restaurant information


Gucci.info Gucci Osteria da Massimo Bottura Tokyo(グッチ オステリア ダ マッシモ ボットゥーラ トウキョウ)

住所:東京都中央区銀座6-6-12
Tel:03-6264-6606
ランチ11:30〜14:30(日〜15:30)、ディナー18:00〜23:00 日夜休
アペリティーヴォ(月〜土)16:00〜18:00 テラス席のみ、雨天・冬季クローズ
バー(月〜土)18:00〜23:00 テラス席のみ、雨天・冬季クローズ


profile


271193336_218304717066079_9175347463668159402_n
池田匡克 ジャーナリスト、イタリア料理愛好家

1967年東京生まれ。1998年よりイタリア、フィレンツェ在住。イタリア国立ジャーナリスト協会会員。イタリア料理文化に造詣が深く、イタリア語を駆使してシェフ・インタビュー、料理撮影、執筆活動を行う。著書に『伝説のイタリアン、ガルガのクチーナ・エスプレッサ』『シチリア美食の王国へ』『イタリアの老舗料理店』『世界一のレストラン オステリア・フランチェスカーナ』など多数。2014年イタリアで行われた国際料理コンテスト「ジロトンノ」「クスクス・フェスタ」などに唯一の日本人審査員として参加。2017年イタリア料理文化の普及に貢献したジャーナリストに贈られる「レポーター・デル・グスト」受賞。WebマガジンSAPORITA主宰。
イタリアを味わうWebマガジン「サポリタ」
http://saporitaweb.com//
<関連記事>
国境という概念にとらわれない自由な世界観 南青山「NARISAWA」 by 池田匡克
「アルマーニ / リストランテ」カルミネ・シェフが年間最優秀シェフに選ばれる by 池田匡克
ヴィンテージに囲まれた暖かい空間で味わう京イタリアン 京都「cenci」 by 池田匡克
1日1組限定、エクスクルーシブなディナー体験を 恵比寿「Saucer」 by 池田匡克
スパイスを通じて悠久のインドを識る 銀座「SPCE LAB TOKYO」 by 池田匡克
選りすぐりの日本食材が織りなす極上のイタリアンを 西麻布「ISSEI YUASA」 by 池田匡克
日本料理の美味しさと楽しさを世界に伝えるパイオニア 神宮前「傳」 by 池田匡克
フィレンツェ生まれのラグジュアリー紅茶「La Via del Te」が誘う心豊かなイタリアンティータイム by 池田匡克
フランチャコルタと楽しむイノベーティブなガストロノミー・ヴィーガン 銀座「ファロ」 by 池田匡克
変化するファッションブランドとファインダイニングの関係 銀座「アルマーニ/リストランテ東京」by 池田匡克
国境も、既成概念をも超えるー 新次元のフードエクスペリエンス 渋谷「The SG Club」
世界中のカクテルラバーが扉をたたく看板のないバー 新宿「ベンフィディック」
限りなき望郷の思いに満ちた、イタリア伝統料理を巡る旅へ 四ツ谷「オステリア・デッロ・スクード」
【スペシャルインタビュー】アジア最高位のイタリア人シェフ、ルカ・ファンティン
世界最高の料理人マッシモ・ボットゥーラ、初のドキュメント 『世界一のレストラン オステリア・フランチェスカーナ』