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今年が初年度となった「中近東・北アフリカのベストレストラン50」にドバイから最多の16軒がランクインしたことはすでに述べたが、唯一同一グループから2軒ランクインしたレストランがあることはご存じだろうか?インディアン・ファイン・ダイニングを標榜する4位「Trèsind Studio(トレシンド・ストゥディオ)」と18位「Trèsind(トレシンド)」だ。 グループ・ヘッドシェフはデリー出身35才のヒマンシュ・サイニさん。ニューデリーの「Indian Accent(インディアン・アクセント)」、ムンバイの「Masala Library(マサラ・ライブラリー)」などインドを代表する名店でキャリアを積んだ後、2015年ドバイへ渡る。その後の活躍はめざましく、2021年には世界Best Chef Top100で中近東最高位の75位に選ばれている。



アジアのトレンド、インディアン・ファイン・ダイニングの現在進行形
Trèsind/トレシンド

dubai_tresind02 今回訪れたのは18位「トレシンド」だ。アラビア海をおもわせるコバルトブルーで統一された店内はファイン・ダイニング・レストランにも関わらず意外なことに家族連れが目立つ。大家族で食事するインドの伝統を踏襲しているのか、どのテーブルも老若男女みな食事を楽しんでいるのが実に印象的だった。「トレシンド」とはフランス語でVeryを意味するTrèsとインドを表すIndをブレンドした造語。インドが誇る多彩な料理を最先端の調理技術を取り入れた壮大なフードエクスペリエンスの場とすることを目指し「トレシンド=Veryindian」と名付けたという。
dubai_tresind04(写真)「パニプリ」のアミューズブーシュ。
dubai_tresind05(写真)左:「ミッシ・ロティ」。右:「マッシュルームチャイ」。
dubai_tresind06(写真)「モダニスト・チャート・タルト」。

「トレシンド」の料理体験は全てがドラマチックだ。インドのスナック「パニプリ」を昇華させたアミューズブーシュからはじまり、ペルシャ起源の無発酵パン「ミッシ・ロティ」、一口サイズのタルトレット「モダニスト・チャート・タルト」は液体窒素を使って目の前でサーブして仕上げてくれた。一口サイズのキノコスープはトリュフミルクパウダーを使った「マッシュルームチャイ」。いずれもインド伝統のストリートフードに遊び心を加えて軽快かつエレガントに体験させてくれる。コリアンダー、カルダモン、クミン、シナモンなどさまざまなスパイスが複雑に絡み合い、その奥にほのかな辛みを感じる程度のマイルドな味付けだ。

dubai_tresind03(写真)NY発祥のトレンドカクテル「ペニシリン」。

「トレシンド」ではドリンクディレクターのシェリーン・ジョンさんによるカクテルとのペアリングも試してみたい。ジョニー・ウォーカー・ブラックラベル、ラフロイグ、ジンジャーシロップのカクテルをさらにスモークして仕上げた「ペニシリン」やラベンダーをシロック=ウォッカに漬け込みパッションフルーツジュースを加えた「ラベンダーサワー」などいずれも香り高く、未体験の味に出会えるカクテルが揃っている。

dubai_tresind07(写真)左「ローズマリー・ラム」。右「エビとソフトシェルクラブ」。

タンドリーが2種類、子羊をパセリやニンニクを刻んだチミチューリ・チャツネでマリネした「ローズマリー・ラム」は深緑色のコリアンダーソースで食べると実にさっぱりとした後味。「エビとソフトシェルクラブ」はこれもインドのストリートフード、アムリトサリのスタイルを踏襲した、甘くてほんのり辛いスパイシー・ヨーグルトソースだ。

dubai_tresind08(写真)「エビカレー」。

文字通りのメイン料理となるのはここからでカレーが次々に登場した。エビカレー、子羊のココナッツミルク・シチュー、鶏肉のチェッティナード、すでにこの時点で大満足なのだが最後にヒマンシュさん作ってくれたキール=ライスプディングのカレーが圧巻だった。

dubai_tresind09(写真)「キール=ライスプディングのカレー」は、ヒマンシュさん自らが20以上ものスパイスを目の前で加えていく。

自ら押して来たワゴンの上にはインドをかたどったカッティングボードが敷かれ、その上には生姜、ターメリック、ココナッツ、ごま、ヨーグルト、ギーなどなど小皿に入った様々な食材が20以上も並んでいる。これらは全てインドを代表する食材で、その生産地を地図上で表現している。ヒマンシュさんはこれらを全て混ぜ合わせ、多様な料理文化が混成するインド大陸そのものの料理を作ってくれた。多種多様な芳香と複雑な味わい、さまざまなスパイスやハーブを感じる「トレシンド」そのもののシグネチャーディッシュだった。
dubai_tresind10(写真)綿あめをツリーに飾り付けたアイコニックな一品や液体窒素を使ったアイスクリームなど、締めのデザートまで目を楽しませた。

「わたしが来た頃、まだドバイにはミシュランもありませんでしたし、インディアン・ファイン・ダイニングのレストランもなかった。どうせならまだ誰もやっていない新しいことにチャレンジしたかったのです。」とヒマンシュさん。今年6月には初のドバイ・ミシュランが発表になることがアナウンスされたばかりだ。地理的にもインドに近いドバイでは多くのインド系住民も暮らし、ミックスカルチャーを形成している。インドの多様な歴史と文化を、料理を通じて再構築し、現代的にして世界へと発信する。モダン・インド料理の発信者として、今後もヒマンシュさんの活動にはさらに注目が集まることは間違いない。

Photo&Text Masakatsu Ikeda

restaurant information


dubai_tresind01 Trèsind(トレシンド)

住所: Level 2, voco hotel, Plot 49 Sheikh Zayed Rd - Trade Centre - Trade Centre District,Dubai
Tel:+971-56420-9754
営業時間:12:00 〜23:30


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NEW!
AIN DUBAI
エイン・ドバイ
世界一の観覧車がドバイに。2021年10月開業

人工島ブルーウォーターズアイランドに2021年10月に誕生した「エイン・ドバイ」は、高さ210mを誇る世界で最も高い観覧車だ。人気のジュメイラ・ビーチフロントに鎮座し、ここからはドバイの街並みを360度望めるだけでなく、ドバイの街の至る所からもこの観覧車が目に入るほど存在感。ちなみに1周するのに約40分かかり、2周してディナーを楽しめるコースもある。チケットは130UAEディルハム(約3900円)から。ドバイのビーチはリゾートにうってつけの穏やかな環境だが、夜になると煌めく観覧車が、ここがエンターテイメント大国ドバイであることを思い出させてくれる。

「エイン・ドバイ」公式Webサイト




ALSERKAL AVENUE
アルサーカル・アベニュー
クリエイティビティなインスピレーションがいっぱい、ドバイのアートハブ

dubai_column_02_2約40の倉庫が、ギャラリー、ダンススタジオ、個性的なカフェなどに姿を変えて文化を育む、アートの拠点となっている「アルサーカル・アベニュー」。2008年に独立したギャラリーとしてささやかに始ったら、話題はあっという間に広まり、他のギャラリーがこの地区に移ってきた。現代ギャラリーや創造性あふれるコミュニティスペースを訪れてドバイのアートを体感してみては。

「アルサーカル・アベニュー」公式Webサイト




MIRZAM CHOCOLATE FACTORY
ミルザム・チョコレート・ファクトリー
アーティスティックなチョコレート作りが人気の秘密

dubai_column_02_23アルサーカル・アベニューに店舗を構えるチョコレート店「ミルザム・チョコレート・ファクトリー」では、 ビーントゥバーでチョコレートを作っており、 カカオ豆の焙煎からチョコレートの包装までの工程を見学することができる。洗練されたパッケージと味わいの美味しさでドバイの人気のお土産のひとつ。季節やイベントに合わせた限定商品も販売している。

「ミルザム・チョコレート・ファクトリー」公式Webサイト

協力:ドバイ経済観光庁

profile


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池田匡克 ジャーナリスト、イタリア料理愛好家

1967年東京生まれ。1998年よりイタリア、フィレンツェ在住。イタリア国立ジャーナリスト協会会員。イタリア料理文化に造詣が深く、イタリア語を駆使してシェフ・インタビュー、料理撮影、執筆活動を行う。著書に『伝説のイタリアン、ガルガのクチーナ・エスプレッサ』『シチリア美食の王国へ』『イタリアの老舗料理店』『世界一のレストラン オステリア・フランチェスカーナ』など多数。2014年イタリアで行われた国際料理コンテスト「ジロトンノ」「クスクス・フェスタ」などに唯一の日本人審査員として参加。2017年イタリア料理文化の普及に貢献したジャーナリストに贈られる「レポーター・デル・グスト」受賞。WebマガジンSAPORITA主宰。
イタリアを味わうWebマガジン「サポリタ」
http://saporitaweb.com//

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