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北はアルプス山脈、東と西、南は海に囲まれ、多様な気候を持つイタリア。食文化の豊かさは言うまでもなく、象徴的な食材のひとつと言えるのがチーズだ。その数、実に500種類以上。牛や羊、山羊、水牛などさまざまな乳が使われ、熟成度合いや硬さ、製造方法も幅広く、各地域で特色のあるチーズが伝統的に生み出されている。

特徴も料理での使い方もさまざま。多彩で豊かなイタリアチーズを知る

formaggi_ph02(写真)左:「リストランテ濱﨑」オーナーシェフの濱﨑龍一さん。右:会場となった服部栄養専門学校のキッチンスタジオ。

そのままテーブルチーズとして楽しむのはもちろん、料理にも欠かせない存在のイタリアチーズ。料理のデモンストレーションを通じてその魅力に迫る、イタリア大使館貿易促進部主催のイタリアチーズ料理講習会が、去る6月13日、服部栄養専門学校にて開催された。講師に迎えられたのは、東京・渋谷区神宮前に店を構える「リストランテ濱﨑」オーナーシェフの濱﨑龍一さん。素材を生かし、ほかにはないオリジナリティを盛り込んだ洗練されたイタリア料理が高い支持を集め、現在は日本イタリア料理協会副会長も務めている。

まずは、イタリア大使館貿易促進部部長のエリカ・ディジョヴァンカルロさんの挨拶から。「バラエティに富んだイタリアチーズの文化は、私たちイタリア人にとって誇りです」と話したディジョヴァンカルロさん。チーズのみならずイタリアの食品はさまざまな国の料理とのマッチングやペアリングが可能で、「イタリアチーズそのものの質の高さもさることながら、濱﨑シェフの優れた腕によって日本の料理とのマッチングにも活かせるイタリアチーズの調理法を、ぜひ皆様にご紹介したいと思います」と語った。
formaggi_ph01(写真)イタリア大使館貿易促進部部長のエリカ・ディジョヴァンカルロさん。




濱﨑龍一さんのチーズレシピ3品のデモンストレーション

「プロヴォローネのインパナータ~ナスと青トマトと共に~」
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そして実演がスタート。1品目は、「プロヴォローネのインパナータ~ナスと青トマトと共に~」だ。プロヴォローネはモッツァレラと同じパスタフィラータ製法のチーズで、弾力があり、焼くととろけてのびる風味の良いチーズ。今回はそれに衣をつけてインパナータにし、焼いたナスと青トマトのエスプーマ(泡状のムース)、トマトを添える。口に運べば、カリッとした衣の中からトロッ、モチッとしたプロヴォローネが溢れだし、青みがかかったオリーブオイルと青トマト、バジルの香り、柔らかなナスと好相性。「プロヴォローネは硬めで水分が出にくく、インパナータにしてもきれいに形が残るのがいいと思います」と濱﨑さんは言う。

「ペコリーノ・トスカーノDOPとトウモロコシのトルテッリ」
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2品目は「ペコリーノ・トスカーノDOPとトウモロコシのトルテッリ」。使用するのは、羊乳を使ったセミハードチーズのペコリーノ・トスカーノDOP スタジオナートと、生クリームをたっぷり使用したフレッシュチーズのマスカルポーネだ。トルテッリは、イタリア北部でつくられる詰め物をしたパスタだが、今回は自家製のパスタ生地に、生トウモロコシと上記2種のチーズを使ったクリーミーなリピエノ(詰め物)をたっぷりと。「ペコリーノ・トスカーノDOPに塩気があるので、塩は加えなくても大丈夫です。今回はトウモロコシと合わせましたが、ソラマメとも相性がいいですね」と、濱﨑さん。つるりとしなめらかなパスタ生地からクリーミーなリピエノがあふれ出し、トウモロコシの甘みとチーズのコクが口いっぱいに。セージとオリーブオイルがさわやかな香りを添える。

「チーズのリゾット サフランとハチミツ、ヘーゼルナッツの香り」
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3品目は、「チーズのリゾット サフランとハチミツ、ヘーゼルナッツの香り」。使用するのは、ウォッシュタイプのタレッジョ DOP、世界三大ブルーチーズのひとつとされるゴルゴンゾーラ DOP ドルチェ、ジャリジャリした食感としっかりとした旨みが特徴のパルミジャーノ・レッジャーノDOPだ。定番のミラノ風リゾットだが、今回はサフランを加えてリゾットを炊き上げるのではなく、上からサフランのソースをかけるスタイルで紹介された。チーズのコクと力強い旨みいっぱいのリゾットに、ブイヨンやハチミツと合わせたサフランのソースが香りよく、散りばめられたヘーゼルナッツの食感がアクセント。パセリオイルの鮮やかな緑色も美しい。

「イタリアチーズをぜひ、気軽に料理に取り入れてもらいたいですね。使い方は、日頃親しんでいるチーズとあまり変わらない感覚でよいと思います。塩の代わりに野菜にちょっとチーズをかけたり、塗ったりして焼くのもおすすめです」と、濱﨑さん。イタリア大使館貿易促進部によるイタリア産チーズジャパンプロモーションの特設サイトでは、いろいろなイタリアチーズレシピが紹介されている。今回の料理講習会で紹介された濱﨑さんのレシピ3品も近日公開予定だ。いつもの食卓の料理がイタリアチーズによってワンランクアップし、その美味しさ、楽しみがぐっと広がりそうだ。

■イタリア産チーズ特設サイト『おいしくたのしいイタリアチーズ』
https://www.ice-tokyo.or.jp/italia-cheese

Text Rieko Seto、Photo by Masakatsu Ikeda

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瀬戸理恵子 フードエディター・ライター

1971年東京都生まれ。銀行勤務を経て2000年にパリへ製菓留学し、エコール・リッツ・エスコフィエ、ル・コルドン・ブルー パリで菓子ディプロムを取得。ピエール・エルメ氏のもと研修を重ねる。2001年帰国し、月刊誌「料理王国」、「料理通信」の編集部を経て、2009年独立。お菓子を中心にフリーランスのフードエディター・ライターとして活動中。監修・共著に「東京手みやげ 逸品お菓子」(河出書房新社)など。このほか、「『オーボンヴュータン』河田勝彦の郷土菓子」(誠文堂新光社)『アテスウェイ 川村英樹の菓子』など、パティシエの書籍製作も手がける。
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