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アブルッツォの海岸沿いでは、しばしばトラボッコ(Trabocco)といわれる小屋が海の上に並んでいる光景に出会う。これはアドリア海沿いの漁師たちが引き網漁をするために建てられた伝統的な漁師小屋で、この辺りはトラボッキ海岸(costa dei trabocchi)とも呼ばれている。木材を組んで作られたその独特な佇まいは、夕暮れ時ともなるとさらに美しく、ロマンティックなアブルッツォの海の名物風景となる。

漁師小屋レストラン Trabocco(トラボッコ)
海の恵みとアブルッツォワインを味わう。


トラボッコを改修した海上レストラン「プンタ・カヴァッルッチョ(Punta Cavalluccio)」では、毎朝目の前の海に網をかけて獲った新鮮な魚介を調理して提供してくれる。見渡す限り海が広がるサイトスペシフィックなロケーションでいただける食事は、まさにこの地域ならではの海の恵みにあふれたごちそうだ。aburuzzo02_1揚げたての魚介のフリットにはじまり、巻貝のトマト煮込み、ヒシコイワシやムール貝などの料理とともにいただくワインは、土着品種のペコリーノやトレッビアーノの白ワインや、淡いチェリー色のチェラスオーロ・ダブルッツォ(アブルッツォのモンテプルチアーノ100%で造られるロゼワイン)。ほどよいミネラル感とバランスのよい酸味がシーフードに心地よくマッチ。アブルッツォワインは、自然派のビオワインが多いのも特徴で、獲れたての地元産食材とのペアリングは、その美味しさをより一層引き立てる。アブルッツォを訪れたらぜひ、トラボッコを改修したこの漁師レストランを訪れてみて欲しい。ここにしかない場所、この土地ならではの郷土料理とワインの至福を堪能したい。

restaurant information


プンタ・カヴァッルッチョ(Trabocco Punta Cavalluccio)
Contrada Piane Favaro, 267, 66020 Rocca San Giovanni CH, Italy
Tel:+39 338 598 0985

驚きと発見に満ちたアブルッツォのワイナリーを巡る

アブルッツォ州には250を超えるワイン生産者がいる。今回は実際に6つのワイナリーを訪れた。それぞれのワイナリーの特色、そして生産者の情熱を知れば、あなたのお気に入りを見つける手がかりになるはず。また各ワイナリーのveritaおすすめの一本もぜひチェックを。

aburuzzo_winary01,Jasci&Marchesani,Vasto,ヤッシ・エ・マルケザーニ
aburuzzo_winary01_ph01先祖から引き継がれる自然派ワイン造りの哲学

アブルッツォ州の南、キエーティ県ヴァストにあるこのワイナリーは、1978年にイタリア企業の中で最初の正式なビオワイン認証を取得。アブルッツォのビオワインの先駆的な存在だ。早くも1960年頃から有機ワイン造りをしてきたというオーナーのニコラ・ヤッシ夫妻。二人の実家はどちらもワイナリーで「ヤッシ・エ・マルケザーニ」の名は父方母方の姓をとったものだそう。「人に迷惑をかけない(生き方も生み出すワインも)」をモットーに、自然と対話し、共存する姿勢を愛する先祖の哲学を引き継ぎ、家族経営による有機栽培のワイン造りに情熱を注いでいる。

丁寧なワイン造りをするために、ブドウ園の面積は目の行き届く大きさに適した40ヘクタールほど。生産量は少なくなるが、その分品質の高いブドウを生産できるコルドーネ・スペロナート仕立てを採用。またケミカル物質が紛れやすい鶏の堆肥は使わないなどのこだわりも。

aburuzzo2_ph01ワイナリー運営においても自然派哲学は活かされている。セラーは自家発電の太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーで稼働し、パッケージ、ボトルラベルもリサイクル資材を使うなど、エコやサステイナビリティへの高い意識が徹底されている。ワインは、海から3キロの環境で標高は低く、温暖な気候なため、果実味豊かで丸い酸、沿岸部ならではの塩味を感じるボリュームのある味わいに仕上がる。美しいブドウ畑とフレンドリーな笑顔が素敵な夫妻が育む、自然派美学に満ちたワイナリーだ。

aburuzzo2_ph02RECOMMEND WINE:
『CERASUOLO CLASSICO DOC/チェラスオーロ・クラッシコ DOC』
明るく輝きのあるソフトなチェリー色。苺のようなベリーの果実味とフルーティーなアロマが続き、丸味のある酸と海風を思わせる塩味が心地よく引き締めるバランスの良いロゼワイン。少し冷やしめの温度で、ハーブを効かせた魚介のスープやウサギ肉の煮込みなどと合わせるのがおすすめ。

INFO:
Jasci&Marchesani
Via Colli Albani, 3/c - 66054 Vasto,Italy
Tel:+39 0873-364315
info@jasciemarchesani.it




aburuzzo_winary02,マラミエーロ,ペスカーラ
伝統的な完全農法×現代テクノロジー
アブルッツォワインに革新をもたらす
大規模ワイナリー


aburuzzo2_ph03 ペスカーラ近郊に拠点を置く「カンティーナ・マッラミエロ」は、4つの畑で合計約100ヘクタールに及ぶブドウ畑を所有する大規模ワイナリーだ。ワイナリーから望めるアペニン山脈最高峰のグランサッソ(写真上)は、山の稜線が横たわる女性の姿に見えることから地元の人々から「眠れる美女」と呼ばれているのだそう。もう片側にはマイエッラがそびえており、この2大山塊に挟まれた丘陵地帯にブドウ畑はある。土壌は凝灰岩や粘土質が主なミネラル豊富な土地だ。

aburuzzo2_ph04大量生産を実現しながらも、毎年安定した品質のワインを生み出して、国内外で高い評価を得ている「カンティーナ・マッラミエロ」。現代的なテクノロジーを駆使して、市場の幅広いニーズに対応しながら、さらなるアブルッツォワインの量と質を向上させようというオーナーのエンリコ・マッラミエロ氏の想いが、そのワイン造りに反映されている。

エンリコ氏は、手間を省いて生産効率を上げつつも、ワインの品質を損なわないさまざまなシステムを導入していると説明してくれた。密閉したタンクの中でもピジャージュ(櫂入れ)と同じ効果を得られる画期的なステンレスタンクの採用や、ドローンを飛ばして畑の状態を視覚的に管理するシステムなど。また、水はワイン造りにおいて非常に大切なエレメントであるといい、ワイナリーでは最新の浄化システムを導入し、排水の再利用も行われているのだそう。

現代テクノロジーを導入する目的は、あくまで伝統的なワイン造りの"完全農法(Agricoltura Integrata)"を守るためであり、ワイン造りにおいて自然環境に配慮することはごく当たり前の感覚であると、エンリコ氏は話す。畑に対しても化学肥料や除草剤を使用しないなどエコでサステイナブルなワイン造りを掲げている。

aburuzzo2_ph06栽培するブドウは、伝統的な土着品種のモンテプルチアーノ、トレッビアーノ、ペコリーノ、パッセリーナのほか、ピノ・ネロ、ピノ・ノワール、シャルドといった国際品種も揃えており、シャルドネを使ったシャンパーニュ方式によるスパークリングワインも国外に輸出されている。またアブルッツォ州内でも3つのワイナリーしか栽培していない珍しい品種マヨリカ(黒ブドウ)を栽培するなど、次世代へ向けた実験的なワイン造りにも積極的だ。

aburuzzo2_ph05RECOMMEND WINE:
『Marramiero Brut Spumante/マラミエーロ ブリュット スプマンテ』
同ワイナリーでは、1ヘクタールだけピノ・ネロを栽培し良質なスプマンテ造りを行っている。年産量にして8000本と非常に少量生産だが、国内のスプマンテ専門ガイド誌「Bere spumante」2011-2014年版にて4年連続最高評価を獲得。淡い琥珀色、粒のキメ細かな泡。青リンゴや白い小花やミネラルを感じるアロマ。余韻も程よく長く爽やかな果実のニュアンスは、シャンパン好きにも好まれる味わいに仕上がっている。

INFO:
Cantina Marramiero
Via Colli Albani, 3/c - 66054 Vasto,Italy
Tel:+39 085 8505766
info@marramiero.wine



aburuzzo_winary03 aburuzzo2_ph06ロレート・アプルティーノの繊細で優美なワイン造り

アドリア海から約30キロ、標高250〜300メートルに位置する「テヌータ・タラモンティ」は、土地特有のテロワールを活かした良質なブドウ栽培がワイン造りの基本であると考え、ブドウの栽培地に風光明媚な土地として知られるペスカーラ県のロレート・アプルティーノ村を選んだ。

グランサッソとアドリア海に囲まれた丘陵地にあるこの美しい村は、近くにターヴォ川が流れ、その影響を受けたミクロクリマに富んだ土壌に恵まれている。ブドウ栽培だけでなくオリーブオイルの産地としても知られ、ヨーロッパで最初のオリーブオイルのDOP(原産地呼称保護地域)に指定された。またここでしか生産されていないという白インゲン豆の珍しい品種は、スローフードの保護対象食品にも指定されているなど豆類の栽培も盛んだ。同ワイナリーでは、60ヘクタールの畑のうち、15ヘクタールでオリーブや白インゲン豆、レンズ豆も栽培している。

aburuzzo2_ph07ワイナリーの創業者でオーナーのロドリゴ・レドモンド氏と醸造家のパウロ・ベナッシ氏は、「まずは何はともあれ、畑をご覧ください」と私たちをブドウ畑に誘った。畑では土の中のセンサーによって水遣りのタイミングをはかったり、害虫対策に除草剤を使わず、女性フェロモンを活用してオスとメスの交配を防ぎ、自然環境を汚染することなく間接的に害虫を駆除するなど、テクノロジーと自然の調和を考えたエコでサステイナブルな栽培方法が取られている。

モンテプルチアーノをはじめ、トレッビアーノ、ペコリーノなどアブルッツォの代表的な土着品種の栽培に加えて、少量のメルローの栽培も行い、小規模できめ細やかな栽培と醸造方法で、ワインの品質を高める実験的な取り組みを進めている。繊細さと複雑さの調和がとれた優美なワインが魅力的だ。

aburuzzo2_ph08RECOMMEND WINE:
『Montepulciano d’Abruzzo Riserva “Tre Saggi”/モンテプルチアーノ・ダブルッツォ リザーブ "トレ・サッジ"』
濃いルビー色のワインに、熟した黒色系果実、クローブ、タバコなどの複雑なニュアンス。タンニンと酸とのバランスがよく、余韻まで長く楽しめる赤ワイン。ワイナリーからのおすすめのペアリングは、生ハムやサラミにカラスミといった香りやスパイスの強い料理との組み合わせ。


INFO:
Tenuta Talamonti
C. da Palazzo 65014,Loreto Aprutino (PE) , Italy
Tel:+39 0858-289-039
info@tenutatalamonti.it


協力:アブルッツォワイン協会