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2022年6月8日、キエーティ県ヴァストのダヴァロス宮にて、アブルッツォワイン協会主催のもと世界各国からジャーナリストやメディア関係者が招待され、グランド・テイスティングイベントが開かれた。州内のワイナリーから出品されたワインが335品ずらりと並んだ。

aburuzzo3_ph12州の全土でワインが生産されているアブルッツォだが、生産量の最も多いモンテプルチアーノの中でも、キエーティ県マイエッラ山地近くのモンテプルチアーノは力強く、ターヴォ川が流れる風光明媚なロレート・アプルチアーノ村のモンテプルチアーノは繊細で優美など、量産型からクオリティワインへのシフトとともにアブルッツォ州内でも地域ごとのテロワールの違いが表れている。土着品種の多様さも注目で、生産量はわずかながらも白ワインのペコリーノやロゼのチェラスオーロをはじめ、この地ならではのテロワールを豊かに表現するワインが続々と誕生している。また大自然をバックグラウンドに自然派ビオワインが多彩に開花している様は、これからのアブルッツォワインの新しい方向性を感じさせるなど、アブルッツォワインの多様性を知る良い機会となった。



驚きと発見に満ちたアブルッツォのワイナリーを巡る Vol.2

アブルッツォの6つのワイナリーの訪問レポート。veritaおすすめのワインもぜひチェックを。自由な発想で楽しめるアブルッツォワインの魅力を感じてみて。

aburuzzo_winary04aburuzzo3_ph01 アンフォラで自然発酵させた自然派ワイン

アブルッツォ州ペスカーラ県ロレート・アプルティーノ村の生産者「チャボリック」は、Vol.1でご紹介した「テヌータ・タラモンティ」から4キロも離れていないミリアニコにある老舗ワイナリー。ワイナリーにたどり着くまでに通る風情に溢れた美しい一本道が非常に印象的だ。

aburuzzo3_ph02その始まりは、ブルガリア出身の毛織物商人で1500年代にアドリア海を渡ってミリアニコの地に移住した一族が1853年にワイナリーを開業したことによる。現在は、先代の一人娘である若きオーナー キアラ・チャボリック氏(写真左)がワイナリーを統括している。学生時代に弁護士を目指していたという彼女が、一念発起してワイナリーを継いだことは、同ワイナリーのワインの美味しさを享受するすべての人にとって、幸運な出来事であったに違いない。

「チャボリック」で特徴的なのは、土着酵母を使いながら、セメント樽と並んでアンフォラと呼ばれる素焼きの陶器によって熟成させるワイン造りだ。キアラ氏にアンフォラを使用する理由を聞いてみると「アンフォラは、酸素の透過性が高く、ワインのポテンシャルを邪魔しない」と話す。アンフォラは、古代ギリシャ・ローマ時代からワインやオリーブ・オイルを運搬・保存するために用いられてきた陶器で、紀元前から使われている原始的なツールだ。ところが近年、アブルッツォのいくつかのワイナリーでは、このアンフォラを使ったワイン造りが新たなトレンドにもなっているという。

「チャボリック」のワインは、野性味があって個性豊か。ペコリーノは、セージやタイムなどの地中海ハーブの香り、豊富なミネラルと酸、そして柑橘系の果実が広がる。モンテプルチアーノは力強く、完熟した果実や黒コショウなどの香りでしっかりとしたタンニンと酸を感じさせる。いずれもはっきりとしたキャラクターを持った魅力のある仕上がりだ。

ワイナリーを訪れたこの日、キアラ氏は私たちにワイナリーのガーデンテラスでアブルッツォの郷土料理とワインを振舞ってくれた。山がちな地形が由来して羊飼い料理がアブルッツォの郷土料理の基本形だが、その筆頭にくるのが羊肉の串焼き「アロスティチーニ」だ。アブルッツォの各家庭には「アッロスティチーニ」専用の焼き台が常備されているというほどポピュラー。ダイス状にした羊肉をオリーブオイルと塩で味付けたシンプルな料理は、モンテプルチアーノの赤ワインと、言うまでもなく絶好の相性だ。
aburuzzo3_ph03(写真)左:アンフォラで熟成されているワイン。 右:モンテプルチアーノやトレッビアーノなどアブルッツォを代表する赤白ワイン。

aburuzzo2_ph02RECOMMEND WINE:
『2017 Montepulciano d’Abruzzo “Fosso Cancelli”/モンテプルチアーノ・ダブルッツォ フォッソ カンチェッリ』
羊肉の串焼き「アロスティチーニ」にぴったりの赤ワイン。濃い紫がかったルビー色と、完熟した果実や黒コショウ、ビターチョコレート、リコリスの香りでしっかりとしたタンニンと酸が力強く感じられる。「アロスティチーニ」のほかにも、コショウやオレンジの皮で味つけられたスパイシーなサラミ、ヴェントリチーナなどにも合う一本。

INFO:
Cantina Ciavolich
Contrada Salmacina, 11, 65014 Loreto Aprutino PE, Italy
Tel:+39 085 8289002




aburuzzo_winary05 ファランギーナ種のアブルッツォワインを発信した最初のワイナリー
兄妹の家族経営でクオリティワインを目指す

aburuzzo3_ph08 キエーティ県トリーノ・ディ・サングロにある家族経営の生産者「カンティーネ・ムッチ」。現在のオーナーは、5代目のアウレリア・ムッチ氏(写真上)で、彼女の兄ヴァレンティーノ氏が醸造責任者を務めている。海抜150〜200メートルの石灰質土壌でブドウ畑は、小規模ながら20ヘクタールにのぼる。

アブルッツォでは珍しく、ファランギーナやサンジョヴェーゼ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー等のブドウ品種を栽培しており、最先端の技術やアメリカンオークを使って先進的なワイン造りを行っている。中でもファランギーナ種は、ローマ時代にすでに栽培されていたとされ、世界で最も古いブドウの木と言われる品種。そのルーツはローマだと言われているが、アブルッツォでは同ワイナリーが醸造して瓶詰めした初めての生産者だ。強いアロマを放ち、トレッビアーノなど他の品種とのブレンドにも向いているとアウレリア氏は話す。
aburuzzo3_ph05(写真)左から:ピスタチオ、醤油ソース、はちみつ、タマネギ、レモンなどで味付けされた二種類の牛タルタル。中央:甘みのあるミニトマトのソースにリコッタチーズを詰めたラビオリ。右:イタリア中部の伝統料理、豚ヒレのポルケッタ。

この日、アウレリア氏は地元のレストランシェフによる料理とワインのペアリングを提供してくれた。料理のアクセントとして多用されていたのは地元産の唐辛子。アブルッツォは唐辛子の産地でもあり、この地方の郷土料理に欠かせない。もちろんアブルッツォワインと唐辛子の組み合わせもぴったりだ。同ワイナリーのワインは日本にも輸入されているのでぜひ、日常の食卓でもその美味しさを味わってみて欲しい。

aburuzzo2_ph02RECOMMEND WINE:
『SANTO SRWFEANO DOC/サント・ステファノ DOC』
アメリカンオーク樽で熟成されたワインで、若さが感じられるが、輝きのあるルビー色。桑の実や果実のスパイス、コショウ、チョコレートやリコリスの香りを醸し出していて、酸もしっかりある。ラヴィオリやグリルチキンなどと好相性。

INFO:
Cantine Mucci
C.da Vallone di Nanni, 65 Torino di Sangro (CH) Abruzzo – Italy
Tel:+39 0873 913366
E-mail:info@cantinemucci.com



aburuzzo_winary06 歴史ある古代ワインをリバイバル
伝統的手法を今も絶やさないワイナリー

aburuzzo3_ph10 沿岸都市ペスカーラから約40キロの内陸、アブルッツォの中心部に位置するカスティリオーネ・ア・カザウリアの生産者「テヌータ・セコロ・ノーノ」。モローネ山の麓にあり、絶えずブドウ畑に風が吹く。標高は350メートルほどだが、盆地になっているので暖かく、ブドウがよく熟して果実味豊かなワインが生まれる。

地元に伝わる古代ブドウ品種の再興。それがこのワイナリーを特色づけている。同ワイナリーのセールス・ディレクターを務めるステファノ・ズケーナ氏は「この地にしかない品種であるモスカテッロを復興することを決めた時、その苗木を探し出して、地元キエーティ大学の協力を得てクローンを生み出すことに成功しました」と話す。この地域では、かつてサクラメンテ修道院の修道士たちによってワイン造りが行われており、ローマ法王にモスカテッロ種によるワインを献上していた歴史がある。モスカテッロ種のデザートワインは、トロピカルでフルーティな香りと豊かな酸味があり、イタリアの最優秀賞デザートワインにもなるなど今なお高い評価を得ている。またデザートワイン用のパッシートだけでなく、ドライタイプも造られていて、こちらもイタリアの最優秀ワイントップ10のうちの一つに選ばれている。
aburuzzo3_ph11(写真)セールス・ディレクターのステファノ・ズケーナ氏。右:ワイナリーのエントランス。

修道院に伝わる伝統的な収穫方法も独特だ。ブドウ棚の中から最良のブドウを見極め、房の茎の部分にハサミで切り込みを入れて熟成を促し、数日後に手摘みで収穫するという手間と時間のかかるやり方が、今も行われているのだそう。また豊かな自然と常に吹く風によってブドウが健康に育ち、農薬や化学的な肥料を必要としない上に、ワインの生産過程において動物性由来成分を使用していないため、認証を取得してはいないもののヴィーガンワインといえるナチュラルさを持ったワインが生まれている。

aburuzzo2_ph02RECOMMEND WINE:
『Fioravante Montepulciano d'Abruzzo DOC 2017/フィオラヴァンテ モンテプルチアーノ・ダブルッツォ DOC』
畑の中でも最も良いブドウを選び、小さな箱に手作業で収穫し、綿密な醸造を行うことで、ブドウの果実の完全性を保ってより独特な味わいが醸し出されているという赤ワイン。力強く、豊かで、エレガント、バリックでの長期滞在によって特徴はより顕著に仕上がっている。輝きのある深みのあるガーネット、ジャムやスパイスのアロマ、バルサミコのニュアンスを表現。柔らかく、ビロードのような余韻も印象的でイタリアワインの印象を覆してくれる一本。ジビエ、熟成チーズとの相性が抜群。

INFO:
Tenuta Secolo IX
C. da Palazzo 65014,Loreto Aprutino (PE) , Italy
Tel:39 085 799 81 93
E-mail:info@tenutasecoloix.it





vinoda_prof WINE BAR 
VINODA 西麻布 ワインバーヴィノダ
アブルッツォワインを飲むならここ!

六本木駅から西麻布へ向かう通り沿いのビルの地下に、2021年秋にオープンした隠れ家的ワインバー「VINODA(ヴィノダ)」。麻布十番「ケ・パッキア」のソムリエだった小田誠さんが独立して開いた一軒だ。もともと料理人としてキャリアをスタートし、その後、「ヴィーノヒラタ」でソムリエの資格を取得。豊富な知識からセレクトされたワインとそれに合う小皿料理のペアリングの妙は、夜な夜な西麻布界隈に繰り出すワイン愛好家にも高評価で、特にイタリアワイン好きたちが足しげく通うワインバーだ。

店内は、カウンターとテーブルの13席。ワインバーと言えど、料理メニューを見てみると「ブッラータチーズとフレッシュトマト」「パルマ産生ハム(24か月)と季節のフルーツ」などの前菜にはじまり、「煮豚」や「トリッパと牛腸の煮込み」など、小田さんならではの美味しい小皿料理が並んでいて、つい次々とオーダーしたくなる。言わずもがな、それに合わせてワインの杯も重ねてしまうのだが、1杯1杯みどころのあるワインたちは、ワイン愛好家をも魅了するものばかりだ。
vinoda_01(写真左から)「仔羊の煮込み」、「ブッラータチーズとフレッシュトマト」、「マスカルポーネ味噌」。

食事前の待ち合わせの一杯、食事の後の一杯、または食事をするために訪れるなどなど、いつも居心地の良い「VINODA」の利用シーンは幅広い。今回特集でお届けしているアブルッツォワインについても造詣が深く、お店を訪れたなら、ぜひアブルッツォにちなんだ料理やワインのセレクトをリクエストしてみてはいかが。

vinoda_02»VINODA ヴィノダ
住所:東京都港区西麻布1-2-14 デュオ・スカーラ西麻布タワーウエスト B102
Tel:03-5936-1439
営業時間:月〜土ア18:00〜翌2:00
定休日:日曜日、祝日の月曜日


協力:アブルッツォワイン協会